20代でNo.1ホストになった美島さんは、毎月数千万円、ときには億を稼ぐときもあった。まさに我が世の春を謳歌していた。
だが、細木さんとの出会いによって、運命の歯車が狂い始める。(短期集中連載 全3回の2回目)
細木数子さんの“指名”を先輩に奪われて…
愛本店でNo.1ホストになり、「日本一稼ぐホスト」になった美島さん。そんな彼のもとに現れたのが、細木数子さんだ。
現在Netflixで配信中の『地獄に堕ちるわよ』でも描かれているとおり、当時の細木さんはホストクラブに度々通っていた。そして、美島さんはその指名ホストの一人だったのだ。
細木さんレベルの著名人ともなれば、当然接客も一筋縄ではいかない。しかし、美島さんはすぐに細木さんに気に入られ、何度か指名をもらえるようになっていった。
「細木先生は礼儀やマナーには厳しかったんですが、とにかく綺麗に遊ばれはる方で。一晩で100万円ぐらい使ってくれることも珍しくなかったですし、チップで数十万円をポーンと出していただいたことも何度もありました」
店のNo.1ホストとして君臨し、細木さんからも指名をもらう。
まさに「すべてが上手くいっていた」美島さん。だが、ある晩に、そのすべてが崩れ去ることになった。
「先輩ホストに、細木先生の指名を獲られたんですわ」
ホストクラブの締め日とは、その月の売上が計上される最後の営業日のこと。お金を使ってくれる“太客”の多くはこの締め日に来店し、人によっては数百万単位のお金を落としていく。
その月は締め日の時点でも、いつも通り美島さんがNo.1を独走していた。そして、会計を締める24時の時点でも、美島さんは1位だった。
「よし、今月も1位や!」
だが、24時を数分後過ぎた時間に細木さんが来店。800万円の会計を、美島さんの先輩ホストに落としていった。
これによって先輩ホストの売上が美島さんを抜き、その月のNo.1となった。
美島さんは先輩ホストに細木さんの指名を奪われ、No.1の座も奪われたのだ。
だがそれ以上に、美島さんは締め日を過ぎたあとの会計を計上した店の判断に納得がいかなかった。
「指名替えされるのは、僕の実力不足なのでなんとも思ってないんです。でも、さすがに時間を過ぎた後の売上を含めるのは違うやろと。店側に何度も『さすがにそれはないでしょ』って言いました。でも、『光ちゃん、ごめん』って言われるばっかりで」
細木さんの指名を奪われたとはいえ、美島さんには他にも太客が大勢いた。ゆえに、細木さんの指名を失ったところで、トータルの売上にあまりダメージはなかった。
しかし、店側がルールを破り、店のNo.1の美島さんではなく細木さんの意向を優先したことには納得がいかなかった。
美島さんの怒りと失望はその日以降も消えず、勢いのままに愛本店を退店。年間数億の収入を手放し、無職となった。
4年で5億を使い果たす
無職になった美島さんだが、ホストで稼いだ金はたんまりと残っていた。その額、なんと5億円。サラリーマンの生涯年収が2~3億円と言われている日本なら、まさに“一生遊んで暮らせる金”だ。
だが、その5億円を美島さんはわずか4年で使い果たしたという。
とはいえ、残りが4000万円を切った辺りからは、美島さんも「そろそろ何かしないと」と考えてはいた。そんなときに、ホスト時代のお客さんから出資話を持ちかけられた。
「『光ちゃん、出資してよ。絶対に儲かるから』って言われて、『まあええか』ぐらいの気持ちで残りのお金を全部出したんです。そしたら、そいつが80億円規模の詐欺師やって、後日ワイドショーで逮捕されたことを知りまして」
ホストを辞めて4年。34歳にして、美島さんは無職で無一文となった。
空前のホストブームで“稼げない時代”に
「愛本店は自分から辞めてたんで、出戻りはめっちゃ悩みました。でも、なんとかして金は稼がなあかんので、プライドを全部捨てて一介のプレイヤーとして戻りました」
指名客もいないゼロからの再スタート。とはいえ、美島さんはかつてNo.1ホストまで上り詰めた実力の持ち主。「ある程度続ければ、すぐに売れるだろう」という目算はあった。
だが、4年ぶりにホストに復帰した美島さんを待ち受けていたのは、あまりにも残酷な現実だった。
「当時は空前のホストブームで、ホストがテレビにバンバン出てた時代やったんです。愛本店も城咲仁くんが大人気になって、みんな仁くんを指名してましたね」
カリスマホストとして数多くのテレビ番組に出演し、後にタレントに転身した城咲仁。美島さんが戻ってきたときは、まさに「城咲仁ブーム」の真っ只中で、そこに美島さんが付け入る隙はなかった。
だが、それ以上に美島さんを苦しめたのは、ホストブームによって起こった客層の変化だった。
「僕の全盛期のときは、お金持ちのマダムしか来なかったんです。でも、ホストブームで一気にホストクラブが大衆化して、一般のお客さんも来るようになりました。そうなると、それまで来てくれてたマダムたちはどんどんいなくなって、全然売上が立たんくなりましたね」
一度離れた客を呼び戻すのは簡単なことではない。金払いの良かったマダムが店から消え、残ったのは常識的な金額しか使わない一般客のみ。
「僕の全盛期のときでも、マダムを相手にして稼いでたホストクラブは愛本店ぐらいでした。なので、マダムが愛本店に来なくなった時点で、僕のホスト人生は完全に終わりました」
脳梗塞を発症、49歳でホスト引退
「横浜の店やってたときは、『これがラストチャンスや』っていう気持ちでした。営業中は死ぬほど酒飲んで、とにかくなんとかして店を盛り上げようと」
しかし、そんな生活は長く続かなかった。
「36歳で脳梗塞になりました。まあ、毎日あんだけ酒飲んで、タバコ吸ってたら当然の結果ですね」
美島さんはなんとか一命を取り留めたものの、発症前のような不摂生な生活は送れなくなった。さらに、横浜の夜にもどんどん時代の波は押し寄せ、店も客も若者中心に回っていくようになった。
「7年間必死に足掻いたんですが、『もう無理やな』って思って42歳で店を畳みました」
その後は再び愛本店に戻り、細々とホストを続けた。
そして一昨年。49歳にして、美島さんはついにホストを引退した。
20代前半で痛感した残酷なまでの資本主義。その資本主義を支配する金持ちは、20代後半で征服したと思っていた。
しかし、当時の金持ちは、今も資本主義社会で生き延びている。
「結局、僕は資本主義の構造に抗えなかったですね」
美島さんが敗北を認めた瞬間だった。
人生をかけて弁護士を目指す理由
「妻は僕に対して『働け』とも『稼げ』とも一回も言わない。かといって『私があなたを養ってあげてる』なんて上から目線なことも絶対に言わないんです」
そんな美島さんは現在、法律の勉強をして本気で弁護士を目指しているという。
「今年か来年にはロースクールを受験する予定です。願書も取り寄せてるんで」
突拍子もないように思われるが、実は美島さんは20代の頃から司法試験の勉強を細々と続けていて、これまでに何度も予備試験も受けていた。数年前には、一橋大学の大学院も受験していたという。
「僕の実家は、貧乏な借家住まいやったんです。法律上は地主と家借人は対等なはずやのに、毎月地主のおっさんが偉そうにウチに家賃取りに来て、親がペコペコ頭下げてお金払っている姿を見てたら、怒りと悔しさが込み上げてました。そのときから『金持ちと対等に渡り合える人間になりたい』っていう夢が、心の奥底にありましたね」
だが、美島さんはすでに52歳。普通なら受験を諦めてもおかしくはない年齢だ。
「なぜ、まだ夢を追い続けられるのか」
そう尋ねると、美島さんは少し考えた表情で、ゆっくりと口を開いた。
そして、またいつもの笑顔に戻って、こう続けた。
「自分の人生を『後悔してる』って言いたくないんですよ。だからこそ、あのときに選ばなかった勉強の道でも結果を出して、後悔を後悔じゃなくしたいんです」
言うまでもなく、司法試験は簡単ではない。あと何年勉強しても合格できないかもしれない。
しかし、美島さんは絶対に諦めないと決めている。
「若い頃、簡単にお金が手に入るホストという魔業に手を染めて、人生を踏み外しました。だからこそ残りの人生は、かつての僕のように夜の街の搾取構造に苦しんでいる若い子らを救える、本物の弁護士として生きていきたい。ほんで、親が生きてるうちに『光司はまっとうな人間になったよ』と安心させて、静かに人生を終えたい。これが僕の夢の最終章です」
それでも、敗北を認めたうえで前を向き、50歳を越えてもなお夢に挑もうとする姿には、成り上がりとは違う、人としての強さがある。
「なんや、揉め事かいな。よっしゃ、任せとき!」
歌舞伎町の雑居ビルに響き渡る美島さんの声を想像できるのは、筆者だけではないはずだ。
<取材・文・撮影/ワダハルキ>
―[美島光司]―
【ワダハルキ】
大阪のフリーライター・カメラマン。卓球好きが高じて大阪府立大学在学中に卓球メディア「Rallys」でライター活動をスタート。現在は卓球以外にも大学ミス・ミスターコンの取材を中心に、幅広い分野で執筆活動を行う。X:@takkyu6789、Instagram:@guid_dsij
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年10月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/61-wQA+eveL._SL500_.jpg)
![Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2024年 10月号[日本のBESTデザインホテル100]](https://m.media-amazon.com/images/I/31FtYkIUPEL._SL500_.jpg)
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年9月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51W6QgeZ2hL._SL500_.jpg)




![シービージャパン(CB JAPAN) ステンレスマグ [真空断熱 2層構造 460ml] + インナーカップ [食洗機対応 380ml] セット モカ ゴーマグカップセットM コンビニ コーヒーカップ CAFE GOMUG](https://m.media-amazon.com/images/I/31sVcj+-HCL._SL500_.jpg)



