俳優の風間杜夫が4月に77歳の喜寿を迎えた。22歳で演劇の世界に足を踏み入れ、映画「蒲田行進曲」(深作欣二監督)で脚光を浴び、ドラマ「スチュワーデス物語」の教官役で一世を風靡(ふうび)。

12日からは白石加代子(84)との合計161歳コンビで朗読劇「古事記」(東京・シアター1010)に出演する。恩師の劇作家・つかこうへいさん(2010年死去、享年62)とのエピソードなど55年の役者人生を振り返った。(有野 博幸)

 根っからの前向きな性格だ。風間に健康法を尋ねると「ストレスをためないこと。たばこ、お酒はやめません。趣味はマージャン。ウォーキングは暑い日はやらない。鴻上尚史くんに禁煙を勧められたけど、『ここでやめるほど、俺は意志が弱くないんだ』と言ったら、あきれてましたよ」と笑った。

 幼少期に子役を経験しているが、役者として本格始動したのは22歳の時。「劇団の養成所で知り合った大竹まこときたろう斉木しげると劇団を結成しました」。現在もマージャン仲間として親交が続いている大竹が先日、前立腺がんを公表した際には「無理をせず、頑張れよ」と激励のメッセージを送ったという。

 演劇を夢見た青年時代、蜷川幸雄さん(16年死去、享年80)、唐十郎さん(24年死去、享年84)、蟹江敬三さん(14年死去、享年69)、石橋蓮司(85)に憧れた。

「唐さんの紅テントにはしびれましたね。蜷川さんが演出して蟹江さん、石橋さんが出演する現代人劇場は新宿にあったアートシアターという映画館で舞台をやってましてね。並んでチケットを取りました」

 20代前半は「好きな芝居をして、ご飯を食べられたらいいな」とアルバイトをしながら演劇に熱中した。ターニングポイントは、つかこうへいさんとの出会いだ。「つかさんが『蒲田行進曲』で直木賞を取った頃。稽古は厳しかったですね。激しく叱咤(しった)されました。つかさんに押し上げてもらって、今があると思っています」と恩師に感謝している。

 つかさんの演出は独特だった。「あの人は天才なので、口でしゃべりながら芝居を作っていくんです。その時にセリフのトーン、音まで決まっている。演出込みなんです。

台本はないから、書かれた文字を自分の解釈で演じることは許されない。自分でノートにメモしながら、稽古場で繰り返して耳で覚えていく。鍛えられました」。今でもセリフを覚える際は、自分で台本を読み上げた音声を録音して、耳で覚えているという。

 つかさんの戯曲を映画化した「蒲田行進曲」は日本アカデミー賞の最優秀作品賞をはじめ、映画賞を総なめにして日本映画史に残る金字塔になった。スター俳優の「銀ちゃん」こと倉岡銀四郎を演じ、「あの映画で人生が変わりました。僕らの一回り下の世代の映画人やテレビマンが見てくれたみたいで『あの映画を見て、この仕事を頑張ってみようと思いました』と何度か言われました」

 「蒲田行進曲」で風間が演じた銀ちゃんの恋人・小夏役の松坂慶子(74)、大部屋俳優・ヤス役の平田満(72)とは、約35年の時を経て、18年のNHK大河ドラマ西郷どん」(鈴木亮平主演)で共演。「3人そろうのは蒲田以来でしたからね。感慨深かったですね。嬉しかったです」

 83年に放送開始したTBS系ドラマ「スチュワーデス物語」も大ヒットを記録した。堀ちえみ(59)が演じるスチュワーデス(客室乗務員)訓練生・松本千秋に「お前はドジで、のろまな亀だ」などと叱咤激励する村沢教官役を演じた。「『俺の胸に飛び込んで来い!』とか、照れくさいセリフもありましたが、思い切り楽しんでやろうと思って芝居をしていました。

たくさんの方に応援してもらって、30歳過ぎなのにアイドルになった気分を味わいました」

 「スチュワーデス物語」の放送期間中、つかさんに会う機会があった。「実は、つかさんの作品とはあまりにも作風が違うので、こっぴどく怒られるとおびえていたんです」。意外にも、つかさんは「風間、ぴったりだな。お前は今後もこの路線で行け」と絶賛してくれたという。「つかさんは泥臭いのが好きなんでしょうね。それで僕も楽しくなって、芝居に集中できました」

 出世作や代表作に恵まれ、俳優として飛躍した反面、葛藤を抱えた時期もあった。「やっぱり『蒲田行進曲』の頃は、どこに行っても『銀ちゃん』と言われる。だから、一つの作品が終わると無色透明になりたい。次の作品で、また新たな色をつける。そんな俳優になりたい。つかさんは『作品の中で人間の関係性が面白いんだ。主役も脇役もない』と言っていた。

僕も主役で目立ちたいという欲は全くないです」

 喜寿を迎えても心身共に健康で生涯現役が目標だ。森繁久彌さん(09年死去、享年96)が理想で「洒脱(しゃだつ)でね。枯れているようで枯れていない生臭いジジイ。あの境地には、なかなか行けないけど、憧れますね」。旺盛な向上心を原動力に、俳優として進化し続ける。

 〇…風間は12、13日に白石と朗読劇「古事記」の東京公演に出演する。スサノオのヤマタノオロチ退治など神話の物語。神々の物語でありながら、愛の物語でもある。白石とは「風間ちゃん」「加代ちゃん」と呼び合う仲で「朗読劇だけど、舞台上を動き回る。落語の経験も生かして、分かりやすく日本の歴史を伝えたい」と意気込んでいる。地方公演は25日に兵庫、10月3日に群馬、10月4日に栃木、10月12、14、16、18日に北海道で上演する。

 ◆風間 杜夫(かざま・もりお)本名・住田知仁。

1949年4月26日、東京都生まれ。77歳。早大在学中の71年に劇団「表現劇場」の創立に参加。主な作品は映画「蒲田行進曲」(82年)、「異人たちとの夏」(88年)、ドラマ「スチュワーデス物語」など。21年に舞台「セールスマンの死」「女の一生」「白昼夢」で菊田一夫演劇賞の大賞を受賞。落語の出ばやしは「蒲田行進曲」。血液型O。

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