eスポーツの名前を聞いたことはあるが、具体的な中身を知らない人は多いのではないだろうか。「eスポーツ=ただのゲーム大会」としか思っていないのであれば実際に試合を観て欲しい。
またデータの面からも、「eスポーツ」が盛り上がっていることがわかる。
「eスポーツ」最大タイトルと呼び名の高い「League of Legends」(5対5のオンライン進行戦略ゲーム)のデータを用いて紹介したい。
2018年11月3日に行われた、世界大会決勝ではユニークビューワー数9960万人、最大同時視聴者数4400万人を誇り、19言語、30以上のプラットフォーム、TV番組で中継された。優勝賞金は約7億2000万円であった。これに対して、アメリカ最大のスポーツイベント「スーパーボウル」におけるユニークビューワー数は約1億1000万人、個人スポーツの中でも賞金が高いと言われているテニスの「全米オープン」の優勝賞金は約4億円となっている。
世界に名を知られているこれらの大会と比較しても何ら遜色のない、この一大産業「eスポーツ」。今回の記事ではこの成長産業を日本国内の視点から紐解いていく。
参考:League of Legends公式HP 数字で振り返る2018年LoL eSports
そもそもeスポーツとは
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称である。広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使ったスポーツ競技と日本eスポーツ連合は定義している。
eスポーツはゲームタイトルによってルールが異なる。選手やファンもタイトルごとに存在するため、各タイトルごとにコミュニティが構成される。また、使用される端末についても、PC、家庭用ゲーム機、モバイルなど複数存在する。
参考:日本eスポーツ連合、eスポーツとは/デロイトトーマツ、eスポーツ興行の概観と参入時の論点
収益モデルとその特徴

eスポーツ産業の特徴として、パブリッシャーフィーがあげられる。パブリッシャーフィーとはゲームを運営するパブリッシャーからeスポーツ興行(大会)主催者に対して支払われる、自社のゲームを用いた大会を主催することに対する対価である。
パブリッシャー側は、自社のゲームを大会に用いてもらうことで、より認知度、ファンを増やすことがメリットとなる。
海外との比較


上記の2つの図を見てもらえば分かる通りに、日本のeスポーツは発展途上だ。市場規模を見ても、競技人口を見ても、海外に比べればほんの僅かしかない。
この大きな理由として日本人のゲームに対する価値観がeスポーツ先進国と異なることが考えられる。「スーパーマリオ」、「ファイナルファンタジーシリーズ」、「ドラゴンクエストシリーズ」、「モンスターハンター」などのRPGやアクション、シミュレーションといったジャンルのゲームが普及しており、eスポーツの「対戦型」のゲームジャンルとマッチしていない。また、eスポーツの大型タイトルはパソコンを用いたものが多く、家庭用ゲーム機やスマートフォンを使用したゲームが普及している日本では流行りにくい。特にスマートフォンゲームは、主にユーザーの課金で経営を回しており、eスポーツのゲーム性にマッチしているタイトルが少ないことも考えられる。
国内eスポーツ関連企業を紹介
eスポーツ関連の国内企業、ファンドの紹介をしていく。今回紹介するのはeスポーツ競技、それに関連するサービスを提供している企業、そしてそれらの企業に投資をしているファンドだ。これらの企業の他にもスポンサーとしてeスポーツに貢献している企業、チーム運営をしている企業などもある。
eスポーツに手を出している大手企業
カプコン

サイバーエージェント

cyberZではゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」を運営しており、2015年からeスポーツ大会「RAGE」を日本国内で運営している。
ミクシィ

eスポーツを事業にしているスタートアップ
meleap

グローバルへの挑戦を積極的にしており、すでにスペイン、マレーシア、韓国、インドネシア、中国、シンガポールなどにも展開。計23ヶ国で店舗事業を展開しており、海外の売り上げ比率が6割となっている。
2019年9月12日、日本eスポーツ連合に正会員として加盟したことを発表した。新しい形のeスポーツとして日本のeスポーツ産業の発展に寄与していく。
RATEL

eスポーツプレイヤー向けのマルチプラットフォーム「ePS(イーパス)」を開発中。eスポーツプレイヤーの戦歴の保証をはじめ、大会やイベントの検索から参加登録までが可能になる機能、eスポーツプレイヤーのチーム管理機能などを行えるようになる。
Crosshare

具体的なサービスとしては2019年4月23日にリリースをした、ゲーマーのマッチングプラットフォーム「e-mode」がある。ソーシャルメディアに散乱しているゲーム対戦相手の募集投稿を集積、整理することで、圧倒的な投稿量の中からユーザーごとにあったゲーマーを見つけることができる。また、代表の荒木稜介氏はeスポーツ業界関係者や、興味を抱いている若年層が参加するオンラインコミュニティ「Esportsの会」を2018年11月に設立。現在は5000人超のコミュニティとなっている。
2018年12月21日には、NOWとインキュベイトファンドから資金調達を実施した。
GamerCoach

同社は国内eスポーツの課題として、インターネットを用いた対人ゲームの上達の困難さとプロゲーマーのほとんどがゲームのみで生計を立てることができていないことの2つをあげており、これらの解決を目指している。
Doneru

2019年7月24日にオープンβ版をリリースした。
eスポーツに目を向けているファンド
GFR Fund Ⅱ(運営会社:グリー)

今までにGLG Gaming、FanAIなどに投資している。
Dreamers VC

iFreeActive(運営会社:大和証券投資信託委託)

国内eスポーツの未来
日本のeスポーツ産業には、まだまだたくさんのハードルが待っている。
その中で、2019年9月12日に日本eスポーツ連合から明るい発表があった。賞金の提供先をプロライセンス選手に限定した大会、そしてプロライセンス選手に限定しない大会の両方において、一定の基準を満たすことでいずれも法律に違反せずに大会が実施でき、賞金を授与できると判断された。
今後も目の前にあるハードルを1つずつ超えていくことができれば、日本のeスポーツ市場には成長の可能性がまだまだ残されている。