リクルートが、 首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している20歳~49歳の1万人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2022」を発表した。コロナ禍の影響がうかがい知れる結果となった。
【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2022 首都圏版」を発表/リクルート
住みたい街ランキング2022は、大宮(埼玉県)がTOP3に食い込む!
では、2022年の住みたい街(駅)ランキングの結果を紹介しよう。TOP3は、「横浜」が首位を堅持し、「吉祥寺」が3位から2位にランクアップ、「大宮」が3位に食い込み、「恵比寿」が2位から4位にダウンする結果となった。

住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)
※1、※2 本年度より「新宿」は新宿、西武新宿、新宿西口を、「船橋」は船橋と京成船橋を合算している
TOP20に注目して見てみると、恵比寿だけでなく、目黒、品川、中目黒、表参道といった都心部の人気の街が順位を下げている。これに対して、大宮(埼玉県)に始まり、浦和(埼玉県)、鎌倉(神奈川県)、船橋(千葉県)、流山おおたかの森(千葉県)が順位を上げた。都心の人気エリアが低迷し、郊外の街が上昇する構図となった。
なかでも、昨年のTOP20圏外から今回TOP20入りしたのが「船橋」「流山おおたかの森」「北千住」だ。
さらに、TOP50の中で大きくランクアップした街を見ると、有楽町(52位→34位)があるものの、神奈川県の藤沢(30位→25位)、埼玉県の川越(46位→30位)、千葉県の新浦安(46位→42位)、神奈川県の辻堂(50位→46位)と東京都以外の郊外の街のほうが目立つ。
これはコロナ禍の影響が出ていると考えられる。在宅時間が長くなり、利便性に優れた都心だけでなく、郊外の住環境などにも目が向けられた結果ではないだろうか。
ランキング上昇の陰に、街の活性化や新しい人の流れあり
いくつか注目したい街を挙げていこう。
まず、「横浜」は年代別(20代・30代・40代)でも、ライフステージ別(シングル男性・シングル女性・夫婦のみ・夫婦+子ども)でも1位になり、人気の高さを見せつけた。神奈川県民の圧倒的な支持に加え、東京都・千葉県・埼玉県・茨城県の住民からも一定の支持を集めているのが特徴だ。

ランキングTOP10の居住都道県別内訳(出典:リクルート)
次に3位に食い込んだ「大宮」を見ると、シングル女性の8位を除き、すべての年代、その他のライフステージ別でいずれも3位以内に入った。「住みたい理由」で急増したのは、「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」(10.9%→25.1%)だという。
いずれも共通しているのは、歴史のある街ではあるが、再開発が進んでおり、新しい店舗や文化娯楽施設などが増えるなどで街が活性化し、新しい人を呼び込んでいる点だ。
TOP20にランクアップした「船橋」も、駅周辺に大規模商業施設があるのだが、それに加えて、バスケ人気の高まりで「千葉ジェッツ」(船橋市をホームタウンとする、Bリーグのプロバスケットボールチーム)愛が、地元に愛着を深めたという見方もできる。活性化や新しい人の流れは、こうしたことでも生まれるものだ。
「流山」はなぜ大きくランクアップしたのか?
さて、「流山」である。なぜここまでランクアップしたのだろうか?
実は、流山市は子育て家族の流入に力を入れていることで知られている。「住みたい自治体」のランキングでも、流山市が55位から29位へと大きくランクアップした。その投票率が高かったのが、30代女性と共働き・片働きの子育て夫婦だというので、「子育てのしやすさ」が功を奏した結果だろう。
SUUMO編集長の池本洋一さんによると、子育てに関する自治体サービスなどが充実していることに加え、「流山おおたかの森駅」の駅前に多くの施設が集結していることで、駅周辺であらゆることが完結する時間効率性も、子育て夫婦に評価されているという。駅周辺には大規模な商業施設だけでなく、子育て施設や医療施設、運動場などがあり、子育てには嬉しい環境が整っている。
この結果、流山市は人口の増加率が全国1位となるほど、新しい住民を呼び込むことができているのだ。
個性のある街はやっぱり強かった
ランクアップした街を見て個人的に思ったのは、個性のある街はやっぱり強いということだ。
以前は「利便性」や「知名度」などの影響が大きく、都心部の中でも“おしゃれな”、“先進的な”イメージがある街がランキング上位を占めていたが、今回は子育てしやすい「住環境」や「自然豊か」などの影響が大きいランキングとなった。ランクアップした街で見ると、例えば「海に近い街」(鎌倉、藤沢、新浦安、辻堂)、古都の街並みが残るなど「文化的背景のある街」(鎌倉、川越)、「文教地域」で知られる浦和、夢の国にも近くて「新しい街」の新浦安など、もともと他の街よりも明確な個性のある街が、評価を高めたという印象を持った。
さて、筆者が好きな三谷幸喜さんの『鎌倉殿の13人』(NHK大河ドラマ)が始まった。関連番組を見て、鎌倉の街の成り立ちなどについて多くの知見を得ることができた。自身では武力を持たず、血筋で棟梁となった源頼朝は、街づくりで権威を示す必要があったというのだ。こうした情報を知ると、来年のランキングで鎌倉が急上昇するような気がしてくる。それはそれで楽しみだ。
●関連サイト
「SUUMO住みたい街ランキング2022 首都圏版」を発表/リクルート