3月も下旬になり、まもなく入社式を迎える季節ですが、来年卒業する学生たちの就活も本格化しています。そんな今の就活のキーワードに、「親に確認する」と書いて「オヤカク」という言葉があります。

企業が学生に内定を出す際、内定辞退を防ぐため、親に確認や同意をとる動きのことです。

マイナビの調査によると、内定者の保護者の46%あまりが、実際に企業から「オヤカク」を受けたと答えています。ただ、中には、親に内定承諾書を書かせるなど行き過ぎたケースもあり、政府が「ハラスメントに繋がる」と注意喚起する事態にもなっています。

就活の相談相手は誰?

就活は本人のもの、とはいえ、親も無関係ではいられない時代。では実際に、若者たちは親との距離感をどう感じているのでしょうか。街でお話を聞きました。

●相談、でもやっぱり先輩とか友達とか。家族の時代と多分就活も違いすぎてわかんないかなみたいな。

●自分が接客が向いているっていう話を親がしてくれていて、自分もそうだなと思ってたんですけど親が選んでくれた所を自分が受けたという感じになりますね。

●バイト先の人とか同じ就職仲間みたいな感じで、いろいろ話は聞いてました。家族にはあまり話さなかったっすね、あんまり深く突っ込まれるのが嫌だったんで。

●何個か内定もらってどうしようって迷ってたときに、あなたの性格的にはこっちだよっていうふうに道を教えてくれたので、それは両親がきっかけです。社会人経験がないので、社会に出てていろいろ知ってる親に聞いた方が一番いいかなと思ったのと、私自身を私以上によく知ってるのが親だなと思ったのでそれで聞きました。

●私の親の人生は親の人生だし私は私の人生だからそこはもう親の意見を聞かずに自分のやりたいことをやるかなと思いますね。 

親に背中を押してもらって決めた人もいれば、「時代が違うから相談しない」「自分で決める」という声もあり、関わり方は家庭ごとに幅がありました。ただ、「親に反対されて内定を辞退されるのが怖い」と、親の存在を意識する企業も増えています。学生は「自分で決める」と言っている反面、企業側とすれ違いが起きています。

「親が反対」は本当?

この企業と学生の「ズレ」について、企業の採用活動支援などを手掛ける株式会社Strobolights 羽田啓一郎さんに聞きました。

株式会社Strobolights 羽田啓一郎さん

「親が辞めろって言ったから辞める」っていう学生ってほとんどいないんですよ。僕が自分で100人ぐらい調査したら0%でした。辞退をするときに、やっぱり学生からすると怖いんですよね、「怒られるんじゃないか」って。そのときに、「親を理由に辞退する子」っていうのは結構いる。本当は親が理由じゃないんですけど、親って言っとけば企業も何も言えないんじゃないかっていう考えがあって。だから企業さんに聞くと「親が反対したから」って結構聞くんですけど。悲しいすれ違いですよね。まず大前提、入社するしないの意思決定は学生側だっていうことは持っておいた方がいいと思います。

ただ、決める上での視点だったり、情報を学生が持ち合わせてないっていうケースもこれは多いんですね。「我が社は大丈夫ですよ、安心してお任せくださいね」っていう情報提供すること自体は別にいいと思うんです。

「親の反対」というのは、波風立てずに内定を断るための、学生の「口実」が多いそうです。ただ、学生にとって親が重要な相談相手であることは間違いありません。というのも、最近の就活はスケジュールが短く、学生はあっという間に決断を迫られて不安になりやすいそうです。また、社会経験のない学生は、「家賃補助」や「引っ越し代」といった、生活に直結する大切な情報を見落としがちです。こうした点は親のほうが現実感を持ってチェックできるので、親の助言がプラスに働く場面もあります。

親に見せる採用の現場

実際に、こうした親の存在を大切にし、2023年にいち早く家族に向けた取り組みを始めた企業があります。IT企業の株式会社アシスト 広報の曽根原 志真さんに聞きました。

「愉快のWA!アシストご家族総会」という名前で開催しました。株主総会ならぬ「ご家族総会」という名前にしてまして。親御様の同意を得るとか確約をもらうっていうことが目的になってしまうと、就活生ご本人がやっぱり入社後に「ちょっと違ったな」とか、楽しく働けなくなってしまう可能性があるなと思ったので。

そうではなくて、応援してもらうっていうことを目的にした方が、長い目で見て学生にとっても会社にとってもいいんじゃないかなっていうふうに考えました。親御さんは「土日の休暇とか取りやすいですか」とか、「これから一人暮らしになるんだけどどういうエリアに住んでますか」とか、「テレワークの頻度」とか、そういうところをご心配される質問が多かったですね。

「ご家族総会」という名前は、企業にとって、社員のご家族は単なる関係者ではなく、「会社を一緒に支えてくれるパートナー」だという思いから名付けられました。

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当日は、会社説明やオフィス見学、懇親会などが行われました。また、参加する家族の旅費や宿泊費の一部を補助しており、遠方からきたご家族が、翌日住むエリアを一緒に見て回る機会も出来たそう。

就活トレンド「オヤカク」 親の同意より安心材料

実は、内定者だけでなく、「入社5年目までの若手社員の親御さん」も招待されました。若手社員が仕事の壁にぶつかった時に、親が会社の雰囲気を知っていれば、家庭でも声をかけやすくなります。親子の距離が近い今だからこそ、「親こそが一番の良き相談相手になる」そんな狙いもあったといいます。

就活トレンド「オヤカク」 親の同意より安心材料

ちなみにこのイベントは、現在は別の家族向け企画のため一時お休み中でしたが、大好評だったため近々の再開を計画しているそうです。親も会社も味方につけることが、これからの企業の在り方かもしれません。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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