TBSラジオ「ACTION」月~金曜日の15時30分から生放送。水曜パーソナリティはCreepy NutsのDJ松永さん。
8月14日(水)のゲストはナレーター・窪田等さん。『情熱大陸』でもおなじみの窪田さんにナレーターの極意を松永さんが学びます。
松永:ナレーションを録音するとき、特集される方の事前情報を入れていかないそうですが、その理由は?
窪田:僕は事前に情報を入れないで、現場に行って台本を頂いてチェックして。前もって練習はしないです。そのときに原稿に関して気付くことがあるんです。それは原稿を初めて見るからなんです。「ここは主語が入った方が良いんじゃない?」とか、「これだと言い方が変わっちゃってるよ」とか。テレビって視聴者の方は1回しか見ないじゃないですか?でも制作サイドは何回も見てるから、分かんなくなっちゃうんですよね。
松永:視聴者と制作のズレが出て来ちゃうんですね。
窪田:だから僕はあくまで視聴者目線に立って、「これは分かりづらいな」ということは言うようにしてますね。
松永:なるほど、じゃあ原稿を変えることは結構あるんですね。
窪田:原稿はこれだけ仕事やって来て、直さなかったことはないですね。
松永:そうなんだ!
窪田:番組のナレーションは本当に細かいところもね。「ここは削って良いんじゃないか?」とか。
松永:ナレーション録りは結構時間が掛かるものですか?
窪田:番組によって違いますね。バラエティ番組は部分録りで、テスト本番という形で一発で録っていくので早く終わるんですが、情熱大陸はドキュメンタリーなので、1回頭から最後まで見させてもらうんですよ。全部見て、どんなこと言ってるのか把握したら、例えば笑い声が聞こえたら「その声活かしたいね」とか考えたりして。だから結構時間は掛かりますよね。
松永:もはやディレクターみたいな仕事をされてる感じもしますね。

窪田:この番組が良いのは、スタッフ皆で作ってる感じがあって。「ナレーションはこっちの方が良いかな」というと、音効さんという音楽を入れる方が「じゃあ音楽はここにずらそうか」と。そうするとまた違う感じになるんですよ。
松永:その場で全体のバランスを考えて、皆で作られるんですね。
窪田:はい、楽しいですよ。
松永:情熱大陸のナレーションはどれぐらい時間が掛かるんですか?
窪田:30分の番組なので、大体1時間半から2時間ぐらいですね。
松永:結構掛かるんですね。
窪田:いや、昔はもっと掛かってたんです。最後の締めの言葉を考えるのに1時間掛かっちゃうとかね。で、最近その最長記録を作っちゃったんですよ。9時間掛かっちゃいました(笑)
松永:えぇ~!!

窪田:台本がちょっと違うんじゃないかとなって。それの直しが時間掛かっちゃうんですよね。前は8時間という記録があったんですが、破っちゃいましたね(笑)普段はそんなことないですよ。
松永:例えば言葉を削って良かったと思った経験はありますか?
窪田:これも情熱大陸なんですが、女神だけを描く石井さんという画家の方がいらして、非常に茶目っ気のある方だったのですが、家で1人で影絵で遊んでたんですね。そこにたまたまディレクターがいたんですね。そのときの文章が「石井は影絵で遊んでいた」だったんです。
松永:うわぁ、むちゃくちゃ良い…!

窪田:ですよね。「石井は影絵で遊んでいた」よりも、「影絵で遊んでいた」よりも、「遊んでいた」という。こういう風に、映像を活かすために言葉を削っていったんです。
松永:見る人の想像力で補完するんですね。でも、今の時代とは逆行しているかもですね。バラエティ番組は笑いどころを分からせるためにテロップが大文字で出ちゃうから。受け取る側の発想力が乏しくなってきてますよね。音楽の歌詞も、比喩表現とかダブルミーニングがどんどん減っていってるんです。
窪田:視聴者の方にどう考えてもらえるか。今、なかなか考えることがないじゃないですか。「はい、ここで笑ってね」と全部与えてるから。「◯◯はそのときをこう語った」とポンと言っちゃうと流れちゃうから何も思わないですよね。
松永:情報を与えるだけだと、それを咀嚼する時間がないから「番組を見た」という体験しかないけど、ちょっと含みを持たせると自分の脳みそで考えるから、残り方が違いますよね。
この他、窪田さんの凄まじいナレーション技術も伺いました。
◆8月14日放送分より 番組名:「ACTION」
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