TBSラジオ「ACTION」月~金曜日の15時30分から生放送。金曜パーソナリティは武田砂鉄さん。

11月15日(金)のゲストはブロードキャスターのピーター・バラカンさん。今日は武田砂鉄さんと音楽や音楽評論、ラジオについて語り合います。

武田:バラカンさんの様々なライフストーリーを探ってみると、60年代のイギリスにあった海賊ラジオというのはどんなものだったのかが興味がありまして。

バラカン:当時から日本は民放があったから海賊ラジオを作る必要がなかったんですよね。イギリスはBBCしかなかったので、堅苦しいラジオしかなかったんです。当時、BBCとミュージシャンの組合との規制があって、1日2時間ぐらいしかレコードをかけられなかったんです。それ以外は生演奏で音楽を紹介しなくてはいけない。それもBBCのお抱えのオーケストラで。だから若者にとってはなんも面白くないですよね。

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武田:それは音源が売れなくなるからですか?

バラカン:それよりもミュージシャンの仕事が奪われるからですね、レコードばかりかけちゃうと。その後ビートルズがデビューすると、自作自演型のミュージシャンがばっと増えます。すると彼らが番組にゲストで出演して生演奏するようになってやっと若者は納得するんですね。

それとは別に、やっぱり売れているレコードをもっと聞きたいので、そこから海賊ラジオが始まったんです。なんの規制もなく、まったくイギリスの法律が適応されないところで船を浮かべてね。

武田:海賊ラジオって本当に船に放送局を作って、その中から放送するっていう。

バラカン:当時は海岸から3海里だったかな?今はもうちょっと長くなってると思いますが。その国の法律がまったく関係ないので、好き勝手なことをやっていいんですよ。

武田:そこで24時間流しっぱなしにしていたのはすごい話だし、当時の若者からしたらこんなに嬉しい話はないですよね。

バラカン:天国でしたね。

武田:バラカンさんは70年代に日本に来られて、そのときの日本のラジオの環境や音楽の環境というのはイギリスと比べると、豊富だったのかそれとも物足りない感じでしたか?

バラカン:イギリスは70年代に入って民法ができたのですが、まだ局の数は少なかったです。で、日本も音楽が聞きたいと思ってFMラジオ聞いたら、FM東京とNHK-FMだけだったので少なかったですね。80年代後半に入ってやっと電波の規制緩和が始まりましたが、それまでは局を変えてもあんまり流れてる曲の変化がなかったですね。まぁ、今もかもですが(笑)

ピーター・バラカン×武田砂鉄、音楽ラジオ語り

武田:一番最初に影響受けたのはチャーリー・ギレットというDJだったと。その人は喋り口調が柔らかくて、それに影響を受けてバラカンさんも柔らかい口調になったという話がありますね。

バラカン:当時僕がまだDJになりたいと思っていなかった時代ですが、DJは早口でC調な感じの喋り方の人が多かったんですが、チャーリー・ギレットは普通に喋る人で。これは僕にとってはかなり衝撃的でした。「こういう形でラジオのDJの可能性はあるんだ。よし、僕もやってみようかな」と思ったんですね。

武田:DJっておしなべてヨーイドンで始めたら、すごいテンションで来るイメージありますよね。今もその傾向はあると思います。

バラカン:そうですね。特に60年代は強かったですが、イギリスはもうそれほどでもなくなったと思います。ターゲットの年齢層に分けてやっていますので。大人向けの電波ではもうちょっと落ち着いた感じになってますよ。

武田:今香港が大変なことになっていますが、そこでプロテストソングが流行っていると。そこにバラカンさんがコメントを書かれたりしていて。

自分もロックが好きなので、歴史を振り返る上ではプロテストソングは欠かせない存在ですよね。

バラカン:ロックの世界では主に60年代にプロテストソングは多かったと思います。もちろんボブ・ディランの話題で脚光を浴びた形になるんですが。でもフォークミュージックの世界ではもっと昔から、というよりフォークミュージックそのものがプロテストソングというか。庶民が権力者に対して不満を表現する媒体だったと言っていいと思うんですね。60年代にボブ・ディラン、あるいは彼の影響を受けてベトナム戦争に反対したり、公民権運動で人種差別に反対したり、そういった激動の時代だったわけですからね。でも70年代になるとそれがかなり少なくなります。今はもしかしたらヒップホップがその色が強いかもしれないですね。

ピーター・バラカン×武田砂鉄、音楽ラジオ語り

武田:それは日本でも、3.11や福島原発事故があったあとのミュージシャンの反応を見ていると、ヒップホップ界隈の人たちのほうが積極的に言葉にしようとされていた印象が強いですね。自分としては9.11のテロがあったあと、放送自粛で流せない歌があったり。「IMAGINE」ですらダメだとなったりして。そのあとにチャリティーコンサートで僕が大好きなニール・ヤングがわざわざその歌を歌うというのが、今思い出してもシビレますね。

バラカン:あの世代で昔の姿勢を崩していないのはニール・ヤングだけかもですね。

武田:未だに特定の企業に対して、そのままのタイトルで曲を作ったりね。1人、イカれたおっさんをやっててすごいですよね。

バラカン:あの人はカナダ国籍だそうですが、トランプに反対することを表明するために「アメリカ国籍を取る」と言ってるらしいですよ(笑)

音楽やラジオについてたくさんお話しいただきました。ありがとうございました!

◆11月15日放送分より 番組名:「ACTION」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191115153000

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