今日はお茶っ葉を入れる筒【茶筒】についてのお話。
今はお茶といえばペットボトルで、特にい人は、家で茶筒を使って茶葉を保存し、急須で入れてお茶を飲んでいる、という人は少ないと思いますが、実は今、茶筒の歴史に変化が起きています。

そこで・・・。

森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!1月28日(火)は、『絶滅寸前だった【茶筒】が海外で人気に。でも作れる職人がいない!』というテーマで近堂かおりが取材をしました。

茶筒を100年作る老舗が・・・

茶筒の歴史に変化??京都にある、明治8年創業の日本で一番古い手作りの茶筒専門店・開化堂の六代目、八木隆裕さんのお話。

◆八木隆裕さん
「海外に対して例えばコーヒーの缶を作ったり、パスタを入れるものを作っていたりしていまして、あとは茶筒そのものも人気があります。やっぱり最近はお茶を飲むことも増えてきていてアメリカ西海岸、ニューヨーク、あとはアジア、中国と台湾、あとはイギリスで茶用として使われたり、いろいろなことに使われています。」

開化堂では、職人さんがひとつひとつ手作りで茶筒を作っていますが、海外での日本茶人気もあって茶筒も人気になって売れているそうです。

開花堂の茶筒が海外に広まるきっかけを作ったのは、茶筒を日本茶以外にも転用したこと。コーヒー豆用、紅茶用、パスタ用などの筒を作って海外に卸していて、去年の末には新商品としてティーバッグを入れる【TeaBag缶】も発売しました。

機能性と美しさで世界を魅了!

でも、日本の茶筒のどこがそんなに人気なのか。再び八木さんのお話です。

◆八木隆裕さん
「機能性、香りが逃げないというのが大きい。お茶なのですごく香りを気にされる。

やっぱり香りがしっかり保存できるもの、おいしいお茶がちゃんと保存できるもの、そこが向こうでも評価されている。あと見た目のシンプルさ、美しさ。ぱっと見て良いねと、機能性もあって、良いものは使いたいねと使われていると思う。」

茶筒は【手作り缶】と【機械缶】の2つの作り方がありますが、その2つを今日は持ってきました。(これはまだ表面加工されていないシンプルなもの、この上に模様や和紙などを貼る)機械缶と呼ばれる茶筒は、フタと胴の繋ぎ目が盛り上がってしまいますが、手作り缶は職人さんの技が詰まっており、スっと閉まり、繋ぎ目が一直線でピタっとはまります。

▼機械缶と呼ばれる茶筒は、フタに折り返しがあるのが特徴。

絶滅寸前だった【茶筒】が海外で人気に。でも作れる職人がいない...の画像はこちら >>

▼手作り缶、と呼ばれる茶筒。
フタと本体のつなぎ目に凹凸がありません。(これは私物で、開化堂さんのものではありませんが・・・)
絶滅寸前だった【茶筒】が海外で人気に。でも作れる職人がいない!

ピタっとはまるその密封性の高さで、お茶の香りを逃がさない、という機能性はもちろん、そのデザインのシンプルさ美しさが人気の的になっています。

特に、開化堂の技術はその芸術性が評価されて、2014年から、イギリスの『ビクトリア&アルバート博物館』で、日本の最高級の茶筒が飾られているほど、世界に認められているのです。

職人の技が人気!嬉しいのですが・・・。

それからもうひとつ人気なのは、茶筒の丸缶に対して【角缶】。

職人さんが作ったものは一切溶接をせず、ブリキを裁断し折り曲げて作るのですが、こちらも海外で人気で、北欧では大事なものやプレゼントを入れる箱として流通しているそう。

▼裁断と折り曲げの技術だけで作られた、ShuRoの角缶。

絶滅寸前だった【茶筒】が海外で人気に。でも作れる職人がいない!

日本ではなかなか見なくなった、いわば”絶滅寸前”だった茶筒や角缶ですが、海外からの人気で需要が増え、作っている会社のみなさんは大喜びでは?と思ったのですが、実は別の問題が浮上しています。都内で茶筒の製造をしている、株式会社 加藤製作所の加藤利夫さんのお話です。

◆加藤利夫さん
「手作り缶の職人、本当に少ないです。今は職人は2人かな、80近い人です。難しいんですよ、手作り缶を作ること自体が。

だから後継者が育たなかった。今からやってもすぐできない。10年はかかりますからまともに作れるようになるまで。なんとかしないといけないんだけどどうにもならない、だから全部機械缶になっちゃうよ、そうなれば。」

職人不足!!加藤製作所にいる職人さんは現在80歳近いお2人だけ。昔は売り上げの9割が茶筒でしたが、ここ10年で茶筒は売り上げの1割ほどになっており、今は手作り缶と機械缶を半々にして、コーヒー缶や紅茶用の缶を多く作っています。一人前の手作り缶の職人になるためには、修行に10年もかかってしまうということで、茶筒が売れなくなってきている中で後継者を育てるのはなかなか厳しい。

実際、都内に20軒ほどあった茶筒専門の会社は、いまでは2軒だけになってしまったそうです。せっかく海外で需要があるのに、作れる職人さんがいないという事態なのです。

職人さんを探してきて技術を守る!

しかし、後継者のいない職人さんの技術を消してしまわないように、こんなことをしている企業がありました。自社でオリジナルの角缶を作り海外に販売している、株式会社SyuRo(シュロ)の宇南山 加子(うなやま・ますこ)さんのお話。

◆宇南山 加子さん

「海外28カ国に卸していて人気をいただいております。後継者がいないということで、最初は職人さんに作ってもらっていたんですが、具合が悪くなってしまって作ることができなくなってしまった。新たに職人さんを募集して全国から15人応募してくれた。そのうちのひとりを採用しました。その職人さんは時計の修理とかをしていた人。いちから修行してもらってそれでお願いをしました。」

宇南山さんの会社では、なんとか技術を残していくために後継者を探そうと、職人さんを新たに募集。求人を出して募りました。そして、面接の末、もともと時計の修理をしていた職人さんを雇い、修行してもらって専属の角缶の職人を生み出したのです。また、最初に出てきた【開化堂】でも、若い職人を社員として雇うことで、『有給休暇あり。ボーナスあり。昔とは違うよ。』という環境を作っているそう。職人不足を解消すべく、環境を整えて、少しずつ技術を継承させているんですね。

▼近堂かおりが「現場にアタック」で取材リポートしました。

絶滅寸前だった【茶筒】が海外で人気に。でも作れる職人がいない!

◆1月28日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」内「現場にアタック」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200128073500