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7月16日(木)の「ACTION」パーソナリティは羽田圭介さん! この日のオープニングトークでは、羽田さんが芥川賞受賞してから変わったことについて話をしました。

羽田:昨日、芥川賞と直木賞の受賞作が発表されました。

芥川賞を受賞したのは2作品で、高山羽根子さんの「首里の馬」と遠野遥さんの「破局」です。遠野さんは現在28歳。平成生まれで芥川賞を受賞したのは今回が初だそうです。直木賞は馳星周さんの「少年と犬」で、馳さんは7回目のノミネートで念願の受賞。これは「念願」って書いていいんですか? 作者がすごく望んでいたってこっちが勝手に書いていいんですか? これに関しては謝罪します(笑)作家は賞のために書いていないので、勝手にこういうことを言ってはいけませんね。賞を獲っていないけど、素晴らしい作家さんや作品はたくさんありますよ。

幸坂:羽田さんは賞にこだわりはあまりないですか?

羽田:そうですね。ただ、僕、ちょうど5年前の今日、7月16日に芥川賞を受賞したんですよ。

幸坂:5年前の今日なんですね!

▼ 当時の様子(羽田圭介さんTwitterより)

「僕は嘘つきになりました」羽田圭介がメディアに出始めて変わっ...の画像はこちら >>

羽田:そうそう、2015年7月16日。あっという間ですね(笑)昨日のことのように思い出しますよ。たしか4回目のノミネートで受賞だったと思います。初めて候補になったときは22~3歳でしたね。
出版社が河出書房で、あの武田砂鉄さんと一緒に。受賞発表は2008年の7月だったかな?河出書房の隣のビルの地下にいて、「賞を逃しました」との連絡が来て。そこに砂鉄さんもいらして。僕の作品を推してくれていた石原慎太郎さんがその場にはいなくて、書面だけだったんですよ。だから、「その場に石原さんがいらしていたら、もうちょっと善戦していたかもですね!」とノリで言ったら砂鉄さんが「いや、もしもとか、ないんで」と言われて(笑)

幸坂:アハハハハッ!言いそう~!

羽田:いや、たしかにそうなんだけど!別に石原さんがいたとしても落ちたと思うんですけど。いや、それにしてもですよ!あの”時事殺し”(笑)

幸坂:アハハハハッ!”時事殺し”呼ばわり(笑)

羽田:それは印象に残ってますね。それで芥川賞の候補に残ったときって頼まれることがあって。それは、記者会見を帝国ホテルなり東京会館なりで午後8時から行うから、そこに1時間以内で来られる場所で待機していてほしいと言われるんです。地方の人は別ですが。できたら銀座近辺にいてくれと。で、僕は1回目は出版社近くで”時事殺し”と会って(笑)2回目は出版社の方々とわざわざ結果を待つためだけにどこかにいるってちょっと申し訳ないじゃないですか。お時間を取らせるから。

「僕、一人で自宅で待ってますよ」と言って。それで落ちて。

で、3回目が新潮社の会議室で数人で待つ感じで。この前電話出演してくださった加藤千恵さんと編集者何名かで待っていました。それで落ちました。で、5年前の4回目の候補のときですね。そのときは流石に自意識もなくなってて。ストイックぶって一人で待つということもせず、でも別に一人で待とうが編集者と待とうがどちらでもよくて。そこでよく『たまむすび』にも出られている先輩作家の長嶋有さんが「メタル限定カラオケをやろう」と言ってくださって。それを「羽田君の芥川賞前の待ち会でやろうよ」と言ってくださって。それで当日は銀座のカラオケを予約したんです。で、選考会が午後5時からスタートなんですよ。

で、大体午後6時半までには結果が携帯に来るんですよ。それで僕は作家と編集者数人でメタル限定カラオケをやってたんですよ。僕はデーモン小暮閣下のメイクをして。

幸坂:メイクまでしていたんですね。

▼当時のデーモン小暮閣下メイク(加藤千恵さんTwitterより)

「僕は嘘つきになりました」羽田圭介がメディアに出始めて変わったこと

羽田:でもだんだん、特に女性なんかはメタルの曲なんか知らないというのもあって、僕と長嶋さん以外がソワソワし始めたんです。で、「ちょっと疲れたな~」と思ったタイミングで電話が来て、「日本文学振興会の〇〇という者ですが、この度は第153回芥川賞の~~」というなんかすごく申し訳なさそうな声で初老の男性が喋ってるんですよ。「あ!落選の連絡だから申し訳なさそうに喋っているんだろうな」と思ったら、「受賞となりました」と。「そっちかよ!」と思いましたが、そこからメイクを落として帝国ホテルへ行きました。その2週間後に『アウト×デラックス』とか出演して、そこからいろんなメディアに呼んでもらえるようになったんです。で、メディア出始めの自分って、いろんなことを正直に話していたんです。たとえばギャラの話とか(笑)

幸坂:赤裸々に(笑)

羽田:どうしたってそういう話は聞きたがるじゃないですか。だから聞かれたら正直に話していたんです。

あと「こういうことをしたってしょうがないですよね」みたいなズバっと斬るような話とか。「素人がテレビで喋っちゃいけないようなことを言ってるな」という感じでいろんな番組に呼んでもらえたんです。「本の話ができたらいいか」ぐらいな気持ちで。で、そのときはバラエティー番組に出てて、ほかの演者さんは笑っているのに、僕だけ全然笑っていないとかが多かったですね(笑)それが違和感で面白がってもらえて、ほかの番組に呼んでもらえたんです。でも、昨日も収録があったんですけど、誰かがなにか言ったらニコニコ笑ってるんです。

幸坂:あら、愛想笑いじゃないですか。

羽田:そう。この5年間で僕、結構変わってて、嘘をつくようになりました。ギャラの話もしないし(笑)人の話が面白くなくてもニコニコ笑ってごまかすようになったし。だから「丸くなった=嘘をつくようになった」という感じですね。

幸坂:本音を言わなくなったということですかね?

「僕は嘘つきになりました」羽田圭介がメディアに出始めて変わったこと

羽田:そう。ラジオも言わないほうがいいことは言わないですし。
メディアの出始めのころにニッポン放送の番組に出たんですけど、今隣にいる作家さんが当時その場にいたっていうことをついさっき聞きまして(笑)話を聞いたら、当時の僕は尖がっていたらしく。打合せでの話を全然聞いていないとか(笑)ラジオのギャラが安いとか、「そんな話は興味ないっす」とか、馬鹿正直で超尖ってましたね(笑)

幸坂:良かった、丸くなってくれて(笑)

羽田:果たして丸くなって良かったのかというのはありますけどね。人を傷付けることは減りつつも、面白味も減っているという。つまんない奴になっているかもしれないけど、傷付けもしない。

幸坂:羽田さんは昔はナイフだったんですね(笑)

羽田:だから素直な人ってメディアでは変わった人に見えるんですね。自分でやってて思いますけど、嘘をつけばつくほどテレビ上では普通の人になっていくんです。たとえば先輩作家の西加奈子さん宅で年に1回花見をやるんですけど、最近はそこに稲垣吾郎さんがよくいらっしゃるんです。稲垣さんってその場に溶け込んで普通の人になれるんです。もちろんオーラがあるときもありますよ。これってたまに「この人、稲垣さんだよな?」って思うときがあるぐらい、普通の人になれるんですよ。でもSMAPにいたときの稲垣さんってちょっと変わった人キャラだったじゃないですか。

幸坂:個性的なキャラクターでしたね。

羽田:だから普通の人が普通に素直に振る舞うとテレビ上では変わった人になるんですよ。5年前の僕も変わった人だったんですけど、嘘をつけばつくほど馴染んでいって、メディア上では普通の人になるんですよ。だから稲垣さんも普通な素直な人なんですよね。

羽田:たとえばテレビでコメンテーター的なことをする仕事なんかは、VTRが流されているときって出演者のマイクがオフになるんですよ。災害のニュースの話をするときに、出演者がオンエアでは絶対に言えないようなことをめちゃくちゃ喋ってるんですね。「こんなところに住んだら地盤沈下がダメだからさ。なんでこんなところに家買ったんだろうね」とか、言っちゃいけないことをめちゃくちゃ喋ってるんです。でもそんなことはマイクがオンになったら喋らないで、皆しれーっとした顔で嘘をついているんです。だから、偽りのことを言うってことじゃないけど、本音とは全然違うようなことを言っているので、それは結果的に嘘をついていることだと僕は思いますね。だから僕は嘘をつくことで無害な誰も傷付けない人になった。でもめちゃくちゃ嘘つきにもなりました。だからこの5年であんまり変わっていないと思っていましたが、すごい嘘つきになりました(笑)

◆7月16日放送分より 番組名:「ACTION」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200716153000

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