TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!(4月10日(日)放送分)
マリアセレンさん(Part2)
東京都出身のオペラ歌手。2005年にサントリーホールのブルーホールでデビュー。
出水:マリアセレンさんは2018年にモンド・パラレッロ歌劇団を立ち上げていますが、「モンド・パラレッロ」というのはどういう意味があるんですか?
マリア:イタリア語で「モンド」が「世界」、「パラレッロ」が「パラレル」で「パラレルワールド」っていう意味なんです。男と女、善と悪、過去と未来。この時空間を行ったり来たりする、という意味でつけました。
JK:まあ、ご自分のことよね! いいじゃないですか。対極っていうのは大切だから。団長ですよね?
マリア:団長です(^^) スタッフ全員いれると40人ぐらい。これを作った時、私の声を活かせるオペラがなかったんですね。既存のものにはない。じゃあどうしようかってなった時に、新しく作ろう!と。結局オペラを新しく作るとなったら、劇団作らないと無理だよね、って話になって。
JK:基本的にオペラって過去の作品がたくさんあるんだけど、それをいろんな演出で世界でやってるわけですよね。
マリア:日本の伝統芸能に能というものがあって、うちの劇団に入ったら団員は全員、絶対能をやらなきゃいけないんです。最初に世阿弥が書いた「風姿花伝」を読むんですけど、世阿弥が作った考え方にはオペラにマッチングしているものがたくさんあって。
JK:そう! お能って680年の歴史の中に今も生きてるわけ。その中に歌舞伎があり、何やらありで、どんどん影響していってる。マリアセレンさんも能面みたいな顔してますもんね!
出水:そ、それは褒めてますよね?!
マリア:(笑)能楽堂コラボといって「能とオペラの融合」という新しい様式がコロナ禍にできたんですけど、その時メイクをしたら、薄めのメイクをしたんですけど、鏡に映る姿がまんま能面だったんですよ!
JK:私も能とモードの共演で、本物の能楽堂でファッションショウをやったの。その時にも裏で、お能のすり足のやりかたをモデルたちに教えてくれたのよね。
マリア:あれもすごかったですよね! 私は喜多流の先生に教えていただいてるんですけども、先生と一緒にやられていたのは観世流の皆様で、私が教えていいのかな??って(^^;)
JK:えっ、ああそう? 歩き方違うの?
マリア:歩き方は基本的に同じだと思うんですけど、ところどころ違うところがあって。喜多流は武家好みなので、扇を刀として扱うことを基本にしているんです。そういうのをいろいろ加味すると、私が教えていいのかな、大丈夫かなぁ・・・と思いながら(^^;)そしたら観世流の方から声をかけていただいて、「つかぬことをお伺いしますが、能をやられてるんでしょうか?」って。「喜多流の先生についてお稽古しています」って言ったら、「ああ、だから違うと思ったんですよ!」って(笑)
JK:モデルたちも足袋ですり足なんて初めてでしょ。いつもだったらハイヒールだとかブーツだから。「あなたたち今日はモデルとしてきたんじゃないわよ!」ってね。
マリア:実は簡単なように見えて、すり足が一番大変で、一番時間をかけて練習するんです! でも参加させていただいて楽しかったです。能楽堂をこんなことにしちゃうんだ!って。よく観世堂の方々も承諾したなあって。
JK:能の人たちは「能楽堂でこんなことしていいの?!」って感じで、ファッション系の人たちは能楽堂に行くのが初めてで。まったく異質で、でも両方が喜んだっていう。おかしなことをやってるのよね(笑) 未来を見たわ。今まで新しいこといろいろやってきたけど、その挑戦のひとつだったわけね。
出水:モンド・パラレッロ歌劇団では先日入団オーディションがあったそうですね。どんなオーディションだったんですか?
マリア:声楽俳優とふつうの演劇俳優の2つを募集してるんですね。今回は演劇の研修員が1人と、メゾソプラノの研修員が1人入団しました。オーディションは演技してもらって、歌を歌ってもらう感じなんですけど、「ここがダメだからダメ」ってことはしないで、「この人は何ができるだろう」「何をすれば輝いてもらえるだろう」というところを見るオーディションをしています。
JK:演目はすでに決まってて、それにハマる人? それともこれから作るの?
マリア:ふつうのオペラだと、決まっている作品に対してオーディションじゃないですか。うちは原作者もまだ生きてるので、その人に合ったキャラクターを後から追加できるんですよ。おそらく来年の6月ぐらいになると思うんですけど、花魁をテーマにしたオペラを作ってるところです。ストーリーはもうできてて、今第1幕は音楽もできて、これから曲を作ってイタリア語に直して・・・という作業をやっています。
出水:もちろんマリアセレンさんが主演ですよね。
JK:大きな花魁だわ~!
マリア:花魁になるのか、花魁に相対する侍になるか、それとも両方やっちゃうのか(笑)いろいろ試行錯誤しているところです。『悲しみのシレーナ』というオリジナルのオペラでは、人魚の役と船乗りの役を両方やったんですけど・・・花魁のほうは人手が足りなさ過ぎて、いま絶賛オーディションで募集しています!
JK:私NYのブロードウェイで宮本亜門さんの衣装を全部やったんだけど、江戸から明治に変わる時、眼の前で着物から洋服に一瞬で変えたっていうのをやったの! パクーッ!って。
マリア:マジックのようですね! そういうことできたらいいですね~。
JK:普通じゃないことをするのがいいわよ! オペラって歌もたくさんあるけど、見栄えもするし。スポンサーは?
マリア:スポンサーはいないんですけど、劇団として株主がいらっしゃるので、投資していただいたお金を使わせていただいております。日本でできた新しいオペラ様式を、世界に持っていきたいというのが夢です。
JK:楽しみですね! それでね、毎日マサカだと思うんだけど、これは!っていうのは何?
マリア:一番のマサカは何かって言われたら、ジュンコ先生がいたっていう・・・今でこそ身近に感じさせていただいてますけど、何も知らなかったらコシノ・ジュンコが目の前に座ってて、「ちょっと歌ってみて」って。
出水:9月にはマリアセレンさんの「2年遅れのデビュー5周年記念コンサート」もありますが、何か企画していらっしゃるんですか?
マリア:2年遅れだから、ようするに7周年なんですけど(^^;)ずーっとコロナで5周年ができないままで。サプライズ・エンターテインメントショウにしたいと思います! やっぱり世界が目標なので、今学んでいる能をもっと体に落とし込んで、能の動きをしながら歌う。融合ではなく「イノベーション」=新結合にしたい。もっと精度を高めて世界への挑戦にしていきたいと思います!