TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送。
2020年11月29日(日)放送
又吉直樹さん(part 1)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。
出水:今日はAGF本社の会議室をお借りして収録しております!
JK:なんか様子が違うわね。ラジオじゃなくて会議してるみたい!
出水:なぜかと言いますと、お二人は先ほどまで関西テレビ『ほっとするわ』の番組収録をしていたんですよね。
JK:これでお会いするのは2回目なんですよね。前回は2019年に大阪のCool Japan Parkでね。あそこで私ずいぶん前にショウやったんですよ。その時にマダム・タッソーみたいな又吉さんの蝋人形が立ってるのを見て、面白いなーと思って!
又吉:そうですね。ロビーに僕の仕事部屋みたいなものを作ってくださって、ほぼ僕と同じ等身大の蝋人形があるんですよね。僕自身もわりと蝋人形っぽいですけど(笑)
JK:本当にこんな仕事部屋なんですか? 本棚があって。
又吉:そうですね、机だけがあって、あとは本棚。集中しやすいですね。今はもう小説だけで5000冊ぐらい・・・単行本は作家でまとめてて、文庫本は作家別にしたり出版別にしたり。
JK:えー! 引っ越すとなると大変ね。引っ越せないわね。読むの早いわけですね?
又吉:多分早い方だと思うんですけど、引っ越しのときに同じ本が何冊も見つかったり(笑)見つからないから買ってしまう、とか。
JK:じゃあしょっちゅう本屋さんに行ってるのね。本屋さんに行くとどんどんあれもこれもって思ってもみないもの買っちゃうじゃない?
又吉:あれが楽しいですよね。目的のものを買いに行くんですけど、全然関係ない後ろの棚のものが目に入って買ったりとか。
出水:本屋さんではどの程度読んだりしますか? それともカバーを見て買う?
又吉:いまはカバーを見て興味があったらできるだけ買うようにしてるんですけど、中学生のころはあまりお金がなかったので・・・絶対ダメなんですけど、立ち読みで全部読んだこととかあります(^^;)
JK:私もね、小学校の時隣が本屋さんだったの。忘れもしない、斉藤書店。帰りにそこでいつも立ち読みしてて、しまいには怒られたの! いつも同じ位置にいたから。
又吉:僕も1日には全部読めなくて、中学生の時は夜書店まで走って、帰って、また次の日に続きを読んで、って1週間ぐらいで読み終わる。大人になって、本が自由に変えるようになったのがうれしいことですね。若いころはお金がなかったんで、できるだけ安く本を買いたくて、古本屋さんを回って買う。上下巻の本があったとしたら、ある店では300円、ある店では100円だけど下巻しかない。そういうときは100円で下巻だけ買っておいて、上巻を安く見つけて買う。
JK:見つかったときはうれしいですね。太宰治の『人間失格』を100回ぐらい読んだって聞いたわ。本当に100回も?! 覚えられるわね。
又吉:いやでも本当、年が明けたら最初に読んでた時期があるんです。太宰の『人間失格』は、自分が言葉にできなかったけど知ってる感覚だなという感じがした。『人間失格』を読むと、自分が影響を受けたいろんなものがゼロの目盛りに行く感じがして・・・水に近いと言うか。
JK:へ~面白い表現ね!
又吉:他の人からしたら、『人間失格』って変わっているというか衝撃的な内容だったり。
JK:自分が大人になっていくと読み方とか感覚も違いますよね。映画でも20歳のときと30歳で見たのと40歳になったのでは全然違いますよ。心境が違うから、経験をしてだんだんわかってくる。だから1回きりって良くないかも。自分が成長するんですものね。
又吉:自分が気づかなかったことに気付く、っていうのはありますよね。だから再読するっていうのは面白いと思います。
JK:芥川賞を受賞した『火花』はご本人そのものじゃないですか。自分の心境と周りのこと・・・本当のことですか?
又吉:本当ではないんですけど、自分が感じてた空気感だったりとか、こういう人がいたなとかこういう感じ方をしたなというのは書き込んでます。僕たちと同世代のお笑い芸人が読むと、わりと懐かしさを感じると言うか。でも、上の世代の人も「懐かしかった」みたいなことは言っていただきました。
JK:みんな初歩のころは同じような経験をしてるからじゃないですか? 苦労とか同じような経験してますよね。
又吉:たとえば僕が自伝を書くとこれとは全く違う物語になると思うんですけど、ある種自分が見てきたものではあると思います。
JK:でもあれも一種の自伝じゃない? 小説といえば小説だけど、読んでるほうは本当かなと思っちゃう。
又吉:書いた直後は全部自分の話として読まれることに若干抵抗があったんですけど、でも時間がたつと、それでいいんじゃないかなって思えてきましたね。
出水:お笑い芸人又吉さんについて伺っていこうと思うんですが、ピース時代はコントの台本も又吉さんが書いていたそうですね。どうやって作り上げていたんですか?
又吉:相方の特徴を活かしたものを意識して、相方がどう演じたら面白くなるかな、というのは大事にしてました。
JK:台本を書くというか、ネタというか、必ずオチがあるでしょ? 落語とは違うわよね?
又吉:落語ほど、きれいに気持ちよく落ちるものばかりではないかもしれないですね。まぁボケたり突っ込んだりしながら、笑ってもらうのが一番の目的ですね。僕はボケのほう。
JK:ボケのほうが楽じゃない?
出水:楽って・・・(^o^;)
又吉:そうなんですよ、ボケは最悪テキトーなことを言っても何とかなることがあるので(笑)たぶん、コシノさんももしお笑いコンビを組んだら、ボケをやりたくなるんじゃないかと思います。最初に何か考えたイメージを言うのがわりとボケなので。
JK:そうですか。
又吉:それどういうことや、って深く掘っていかれたり、訳わからんこというな、って言われたりするんですけど・・・わりと僕は、それが芸人としていいかどうかわからないですけど、笑わそうとさえ思ってないときもありました。自分が思ったことを言うっていう。それが若干普通の人の認識からずれていれば変なものになっていったりするんで、そういうやり方でやってたこともありました。
JK:言葉が行ったり来たりするだけじゃなくて、全身で表現するでしょ?
又吉:そうですね、どういう衣装を着るとか。それこそ毎週新しいネタをやらなきゃいけない時期もあったので、そのころは古着屋さんに衣装を買って、そこからイメージを膨らませる。ただ古着屋さんからすると、ちょっと暗めの若者がちょっと変わった服ばっかり買っていくので、笑われたりするんですよ(笑)バードウォッチングの帽子がフリーマーケットかなにかで売られてて、キャップの先端に鳥の顔が出て、サイドから羽根が出てるんです。
出水:ははははは!(爆)
JK:えっそんなのあったの?!
又吉:あったんですよ! バードウォッチングの人たちの帽子だと思うんですけど、お店の人たちも絶対売れないと思っておいてるんですよ。僕からしたら、すごいいいコント衣装があると思って、レジに持ってったりすると店員さんが噴き出したりして(笑)でも説明もできないんで・・・当時はそういう買い物をして、そこから作ったりということをしていましたね。
JK:その相方(綾部祐二)の話ですけど、NYに行かれましたよね? いまも活動できてるの? コロナで大変だと思って。
又吉:今はなかなか活動できてないでしょうね。大変でしょうね。
JK:私1年以上前にお会いしたときも、相方の方はNYで何してるのかなって思ってたんですよ。
又吉:コシノさんが僕の相方のことを考えてくれてるってありがたいですね(笑)一応僕も心配なんで、マネージャーを通して訊くと、体調に気を付けながら生活してるみたいです。
出水:又吉さんは日本以外に住んだりとか、長期滞在したいところとかあるんですか?
又吉:ロシアの・・・サンクトペテルブルク。あそこの町は好きでしたね! ロシアがパリとかに対抗して作った美術館がいっぱいあって、街並みもほぼ当時のまま何百年も残ってる。ドフトエフスキーがほとんどそこの街を舞台に小説を書いてて、僕も『罪と罰』が好きだったんですけど、小説で読んでるとすごい暗い街を想像してたんです。でも見ると景色がすごいきれいで、あの青年はこのきれいな街でああいう憂鬱を抱えてたんや、と思うと小説のイメージも変わって、面白くなった。
JK:私も初めてモスクワに行って、昔はアエロフロートでパリに行ってたから暗い暗いってイメージだったの。でも今回外に出たら、すっごいパリみたい。ロシアの人って笑わないじゃないですか。なんで笑わないんですかって訊いたら、「それは礼儀です」って言われた。「意味がないものに笑うわけないじゃないですか」って。日本人は意味がなくても笑うわよって(笑)
又吉:たしかに! 海外に行くと、笑わない人結構いますよね!
出水:お世辞で笑ったりしないってことでしょうね。感情が動いたときに笑うのが礼儀だ!ってことでしょうね。
=OA楽曲=
M1. Fast Car / Tracy Chapman
◆11月29日放送分より 番組名:「コシノジュンコ MASACA」
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