TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!

2020年12月6日(日)放送

又吉直樹さん(part 2)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。1999年にNSC東京校の5期生として入学し、2003年夏まで「線香花火」というコンビで活動。

その後同期で仲の良かった綾部祐二に強引に誘われる形でピースを結成します。2015年、自身が書いた小説『火花』で新人小説家の登竜門である芥川賞を受賞。お笑い芸人での受賞者としては史上初の快挙を成し遂げました。
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出水:又吉さんはご兄弟は何人いらっしゃるんですか?

又吉:姉が2人いて、三人きょうだいですね。

JK:女系ですね。でもサッカーやってたなんて!

又吉:野球をやりたかったんですけど、グローブとかバットとか道具が高かったり、ユニフォームも大変だったり・・・親が日曜日、試合のために車を出したりしないといけないというので、ちょっと難しいかなというので3年生のときからサッカーを習い始めました。サッカーなら他人のボールでもできたりするから、あんまりお金がかからない(笑)

出水:でも高校時代には強豪・北陽高校で活躍されてましたよね!

JK:もしサッカー選手になれてたら、どうなってたんでしょ??(^^)

又吉:いやぁ~、サッカー選手はまたスペシャルな人たちばっかりなんで、現実的ではないと思うんですけど、高校までは必死に練習してました。

JK:すっごい過酷でしょ! うさぎ跳び何回!とか。

出水:そういう次元じゃないと思います(^^;)

又吉:ギリうさぎ跳びはやってないですかね(笑)小学校のときちょっとやったことがあるかもですが・・・でも僕が行ってた北陽高校は、練習が厳しいので有名でした。

出水:サッカー1色だった生活から、お笑い芸人というのはいつごろから頭の中にあったんですか?

又吉:小学生のときにTVの吉本新喜劇とかで寛平師匠を見て、「いつか芸人になりたい」と思ったのが最初だと思うんです。なんとなく「サッカー選手になりたい!」って思ったことはなくて。僕、宿題とか提出するのが苦手だったり、プリントが机の奥の方でくしゃっとなってどこにいったかわからんっていう、わりとそういうタイプなんです。

好きなことは集中できるんですけど、苦手なことは全然だめ。

JK:でも本は読めるんでしょ?

又吉:本は好きなんでずーっと読めるんですけど、授業中も、教科書とか資料集をずっと読んじゃうタイプ。大人になったときにフツーに働いたりできるのかな?と思った時に、TVを見たら大人の芸人がみんな変なことを言って、みんな遊んでるように見えて・・・これやったらやりたいな~と思ったのが最初ですね。

JK:遊びながらしっかり稼いでる、と(笑)でも、大阪だからそういう環境に自然に入っていったんですよね。だいたい、漫才って標準語って感じがしないんだけど。

又吉:もともと「漫才」って言葉が吉本興業で生まれた言葉なんですよね。

JK:あらっ、じゃあ吉本の歴史ですね! そんな古くないってことね?

又吉:もともと「万歳(まんざい)」と言って、楽器を叩きながら音楽とお話をする、みたいなのはあったんです。でも「漫才」という字をあてて、マイクの前でしゃべるっていうのは多分、吉本が発祥ですね。

お笑い芸人&作家:又吉直樹、養成所時代は別名「眼力くん」?!

お笑い芸人&作家:又吉直樹、養成所時代は別名「眼力くん」?!

JK:ご自分の人生で、「マサカ!」と思い出すようなことはありますか?

又吉:僕18まで大阪で、高校を卒業して、東京の吉本の養成所に入ったんです。大阪の吉本はしっかり漫才をやりたい、みたいな感じ。東京の吉本は変わった人たちが集まる、って言われてて。そういう個性的な人が集まる環境に行ったら、僕は埋もれてしまいそうやな、と不安をもって入学式に行ったんですけど、そしたらOBやスタッフさんが、3~400人いる中から僕を指さして、「殺し屋みたいなヤツがおる!」って(笑)その時は坊主やったんですけど、「あいつの目、めっちゃ怖い」って。

JK:えっ! 坊主?!

又吉:坊主で、眼孔がずっと開いてたんですよ。アフロヘアとか金髪とかいる中で、坊主のサッカー少年が、あいつなんや、ってみんなに言われて・・・その時はマサカでしたね! 先輩からも「眼力くん」って名前つけられて。それが恥ずかしくて、人をにらんでいるようにならないよう、できるだけ柔らかくしようと思って、だんだん顔も変わってきたと思うんですけど。

出水:お仕事がない日はどのようにプライベートをしているんですか?

又吉:本を読んだり、音楽聞いたり、散歩したり、っていう・・・でも書き物をやってるんで、仕事が全くないっていう状況は、自分で作らないと作れない。

JK:でもいまコロナになって、書き物は家でできるわけですから、かえって良かったですね。

又吉:そうですね、他の人は仕事がしたくてもできないとか、人と集まらないとできない仕事もあるなかで、書く仕事があるというのは恵まれてると思います。

JK:1人でないとできないし。この間、いろいろ仕事できたんじゃないですか? もうひとつ小説を書いたとか??

又吉:できてたら良かったんですけど(^^;)それぐらいのこと、なぜできなかったのかって思うんですけど・・・その期間はすごい部屋を片付けたり、本棚の本を並べ替えしたり。

JK:ハマッちゃいますよね、そういうの。普段できないことを今やらなきゃ!って、みんなまず片付けするわよね。

又吉:僕もそうでしたね。家は過ごしやすくなりました。

出水:いま締め切りは月にどのぐらいあるんですか?

又吉:小説の三作目を連載でやっていて、それはもう1年近くやったんですけど、毎日1200~1300文字書かなきゃいけない。月曜日から土曜日まで、日祝以外は新聞に載ってたのでその時は大変でしたね。ふつうはみんな最初から最後まで書き上げたものを小分けにしたり、1か月分ぐらい先行して書いてるんですけど、僕なんかは3日後の原稿がない!みたいな(笑)今日の夕方5時までに送ってくれないと空いちゃいます、っていうのを何回も(^^;)

JK:そこで切羽詰まってストーリーを急遽作るのって大変じゃないですか?!

又吉:楽しみながらできたんですけど、体力は結構大変でしたね。

出水:イザというとき集中するには、どこで書くんですか?

又吉:書斎があったり、家の中にどこでも仕事できるように作業スペースがあるんですが、小説の立ち上げとかいろいろ重なりすぎて、というときは自分でホテルを借りて自主的に缶詰状態にしてやってます。実は今日も昼までホテルに泊まってました。6日間ぐらい。

JK:えっ?! そうなんですか??

又吉:パソコンだけを持って、ホテルでずーっとやってました。

JK:ホテルって言ったって、机があればいいって感じでしょう? 自宅の方が楽じゃないですか?

又吉:自宅だと、また本を並べ替えてしまったり(笑)今日は燃えるゴミだ、とか。風呂掃除とか・・・やっちゃうんです。もうちょっと頑張れば今考えていることの先に行ける、っていうときに、体力が要ると、やれば確実にできるほうを選択してしまう。ホテルはお金を自分で払ってるんで、自分にいくらか投資したのに、ここで寝てたらもったいな過ぎる、ってなって頑張れる。

JK:なにかあったらルームサービスもできるし。

住まいから離れると切り替えられますよね。それに集中できる。

出水:ジュンコさんは筆が進まないときにどこかへ行ったりします??

JK:いやいや、私はあまり決めてない。どこだって平気。1人にならないとできない、ってことはないんです。なんだろ、岸和田の家が商店街のブティックでしょ? 人がいつでもいるんです。だから、子供のころから人がいてもなんともない。

又吉:いやあ、それはすごいですね!

JK:一番楽なのは、飛行機乗ったり新幹線乗って、1人ボッチになるとき。そういう時はわーっとイメージがわいて、あれしようこれしようって自分で計画立てるの。

又吉:すごいわかりますね~。新幹線や飛行機ははかどります! 僕も本当に追い込まれたときは、それこそどこでもできるんです。矛盾してるんですけど(^^;)結局本当に危なかったら、仕事終わってあと2時間で原稿送らなきゃならないときとか、原宿の遊歩道にパソコン広げて、フード被って書いたことあります。

それで送ってギリギリ間に合った。

出水:えっ、本当に?! 人間お尻に火が付くとなんでもできるんですね(^^)

お笑い芸人&作家:又吉直樹、養成所時代は別名「眼力くん」?!

出水:今年、又吉さんは40歳になりましたが、2020年はどんな1年でしたか?

又吉:2020年はやっぱり1人で過ごすことが多かった。映画を見たり本を読んだり音楽を聴いたり、そういう1人で過ごす時間が今までの人生で一番長かったですね。わりと若いころに戻ったような感覚もあって・・・たぶん僕が小説を書いたりコントのネタ書いたりするのも、いろんな人の作品に触れて、それが蓄積されて、自分で消化したものが養分になって出ていると思うので、今年見たものや聞いたものを1年後、2年後ぐらいに作品の栄養になってくれるんじゃないかな。準備の期間だったと思います。

JK:これからワーッとやってみたい!ってことはあります?

又吉:今はもう作品を作りたい気持ち。書きたいっていう気持ち。映像もやってみたいというのがあるんですけど、経験がないんで、今は脚本をいろいろ書かせてもらっています。物語自体は作るのが大好きなので、そこからいろいろ勉強していきたいなと思っています。ドラマは1本やらせてもらったんですけど、なんか脚本で自分が書いたやつを、監督さん、衣装さん、大道具さん、もちろん俳優さんがだいぶ補足してくれてるなと思って(笑)ここまでのイメージを自分は持ててたかな、と思いながら勉強させてもらいました。

JK:この演出家と組みたい、とかもあるじゃない? 自分で全部できないもの。映画って大変ですもんね。

ダイナミックなチームだし、お金もかかるし。でも『火花』を映画化するのはそんなにお金かからないイメージだけど? 電車乗ってその辺で、って気がする(笑)

又吉:唯一花火のシーンぐらいですよね(笑)

JK:どっかで花火が上がってるところで撮ったり(笑)

又吉:僕の物語は日常的なものが多いんで、その辺でぱぱっと撮れちゃいますね!

お笑い芸人&作家:又吉直樹、養成所時代は別名「眼力くん」?!

=OA楽曲=

M1. O-o-h Child / Nina Simone

◆12月6日放送分より 番組名:「コシノジュンコ MASACA」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20201206170000

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