TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送!

2021年4月4日(日)放送
ジュディ・オングさん(part 2)
台湾生まれ。3歳の時に父親の仕事の関係で来日し、9歳で劇団ひまわりに入団。

1979年に「魅せられて」が大ヒットとなり、一躍脚光を浴びます。その後も歌手、女優、木版画として活躍しています。

出水:ジュディ・オングさんは実は木版画家としてもご活躍なんですよね。日展に14回も入選して、2005年には特選を受賞。国内外で個展も開催してらっしゃいます。

JK:作品集をいただいて……素晴らしいですね! 水彩画みたいな感じもして。

実は私も台北に行って、ギャラリーで展覧会見たんです。

ジュディ:えっ! そうなんですか?!

JK:そうなんです。本物を見てびっくりした。本当にすごいんだわあって。木版画ってことは木を彫るじゃない? 手もよくもまあ!

ジュディ:見かけは柔らかそうに見えますけど、触ると……むかし握手したとき「だめだよ、こんな手をしてたら! ボーイフレンドに手を握られたらどうするの!」って言われましたよ! でも、どうしても刀を持っていますし、筆を洗いますから。毎日洗わないとガビガビになっちゃう。

それから紙。紙っていうのは一番油分を取るんです。

JK:たしか棟方志功さんのお弟子さんと……

ジュディ:井上勝江さんという棟方志功先生の最後のお弟子さんの版画展を見に行って、白黒の版画だから民芸調かな?と思ったら、超モダンで! こんな大きなお花の絵でした。すごいパワフルで、白黒なんだけど色を感じたの。なんで?!と思って、やりたい、と思ったの。

JK:そこが始まりだったんですね。

ジュディ:でも井上先生には「ジュディ・オングさん? 無理よ」って言われました。だって歌は歌ってるわ、芝居はしてるわ……

JK:憧れだけ、上辺だけって思われちゃったのね。それは悔しい!

ジュディ:それで家に帰って、お兄さんがステレオマニアなんでスピーカーを作ったので木片があったんです。それをもらって、椿の絵を描いて彫って。バレンなんてないし、買いに行く時間もないからスリッパで刷って、それを板と一緒に持って行ったんです! そしたら井上先生の後ろに彫刻の長沼先生がいらして、「勝江ちゃん、この子続くよ」っておっしゃってくださって。「見てごらんあの彫り方、ガンコだよ」って。

JK:へぇ~! 一発で! 悔しさが勝ったわね!

出水:しかもスリッパでやっている姿を想像すると。

JK:いいアイデアよ! 手を入れてしゅっとできるジュディ・スリッパ! 美術館で売ったりして(笑)

ジュディ・オング、初めての版画はスリッパで?!の画像はこちら >>

出水:ボランティア活動についてもお伺いしたいんですが、ワールドビジョン親善大使や、日本介助犬協会サポート大使、ポリオ根絶大使を務めていらっしゃいます。こういった活動はどのように出会ったんですか?

ジュディ:ワールドビジョンは私が病気をして、卵巣やクモ膜下の手術をして半年間入院したことがあるんです。それで半年間経て元気になって戻ってきたとき、「役に立ちたい」と思ったんです。その1歩がワールドビジョンの親善大使。月4500円の寄付で、子供たちが学校に行ったりごはんをたべたり医療を受けたり、お金があまったら小さな井戸とか集会場とか学校とかを作って地域開発をするというプログラムなんです。

その子たちから手紙が来ますよ。1人はもう大学生になりました!

JK:その子たちが大きくなったらどうなるんでしょうね?

ジュディ:楽しみですね! やっぱり本人たちは、自分の住んでるところがよくなるように活動したい、って。

JK:育ての親ですね! こういう絵を送ってあげたり?

ジュディ:小さいのは送ってあげてます。写真やはがき以上のものは送れないので。こういう場所があって、私が描いたのよ、とかいろいろ手紙をすると、返ってきます。モンゴルからも来るし、カンボジアからも来るし、タンザニアからも。

そういうことを言葉の中から教わって。楽しいですよ。

JK:世界とつながってる感じでいいですね。

ジュディ:私が一番大切に思っていることは、この子たちは日本のスポンサーに助けてもらった。もしその国に日本人が行って道で倒れてたら、絶対助けてくれると思うんです。それが「どこかでつながっている」ということ。だって地球はひとつだから!

出水:介助犬協会のサポート大使は?

ジュディ:これも可愛いんですよ。橋本龍太郎さんが私のファンクラブの名誉会長をしてくださって、その夫人が介助犬協会の会長をしていて、「一緒にやらない?」と誘われて名古屋に見に行ったんです。介助犬を育ててるセンターがあるんですけど、体が不自由で立てない方が「テイク水」って言うと、わんこちゃんが冷蔵庫に行って水をとって、しかもドアを閉めて持ってくるの! すごいと思いません?!

JK:ものすごい教育されてる。

ジュディ:ご主人がひっくり返っちゃうこともあるんですよ。そうすると「テイク携帯」っていうと、携帯を持ってくる。それで隣の方に電話して、起こしてもらう。買い物にも行けるようになるのよ。「ライト」って言うと右に行って、「ダウン」っていうと下に降りて、「テイク」って言うとものを取る。

JK:もう相棒。ロボットなんて要らないわね。

ジュディ:それを見て涙がぽろぽろ出たのは、しっぽを振って喜んでやってくれるの! それで「わかりました、一生大使を続けます!」って言って、もう10数年になります。

ジュディ・オング、初めての版画はスリッパで?!

出水:なにかのインタビューで「毎日をお正月にする」とおっしゃっていましたが、これはどういう意味ですか?

JK:お正月って日本の? それとも台湾の?

ジュディ:気持ちのお正月(笑)台湾式も日本式もなんでもいいんです、ハッピーニューイヤーの気持ちで過ごす。いつもおめでたい! なぜかというと、「これはお正月に出しましょうね」って言って、漆器具を上の上のほうに入れてるわけですよ。こないだそれを下ろしたら、漆器類がおこってるわけですよ。お正月ってあと何回あるの? だったら毎日お正月にしましょう!って思って、毎日全部いいものを出して。もずくだってペチャンコなのに入れるんじゃなくて、高いワイングラスに入れると、大したものでもないのにすごいことになっちゃう(笑)

JK:本当、高級レストランになっちゃうわよね! ちょっとしたことでね。

ジュディ:そう、だから食卓は毎日お正月。

出水:なにか健康に気を付けていることはありますか?

ジュディ:まぁなるべくバランスよく食べるというのが中国薬膳の教えなんですけど、季節の変わり目には体の中のこもった毒を出すってね。

JK:台湾ってそういうのよく考えてますよね。お茶にしても。

ジュディ:お茶もよく飲みます。解毒してくれるしね。ちっちゃい湯呑にちっちゃい茶碗で、濃厚な味でいただきます。そういう風に楽しむということ。

JK:「食」っていう字も「人に良い」って書くものね。食べることは基本ですよね。

ジュディ:あら本当だ! 全然考えなかった。でも腹八分目ね。中国に劉海泡というの有名な文人がいて、彼が「餐餐七分目にして飽きる」と書いているんです。っていうのも私たち、「八分目だからやめましょう」っていう時はだいたい九分目食べてるんですよ(笑)だから七分目でブレーキ! そうすると八分目でストップ!

JK:八からいっちゃだめなのね(笑)でも、残したら悪いなと思って食べちゃうのよ。残したら悪いことしてるような気がして。

ジュディ:そういう時は「私は七分目まできたらブレーキをかけますんで、失礼します」っておっしゃればいいんですよ(笑)

出水:2018年にはジャズアルバムをリリースしていますね。

ジュディ:もう念願でした! 私ちっちゃい時からジャズで育ってるんですよ。父がラジオ局やってましたので、夜私たちが寝るころにレコードをいっぱい持ってきて、選曲してたんです。進駐軍にいましたから、昨日アメリカで発売されたレコードが、翌日もう父の手の中にあるんです。ドリス・デイとかシナトラとか、それを聞きながら寝たんです。

JK:へぇ~! 子守歌がジャズ! じゃあジャズに影響されて、ジャズをやろうってはならなかったんですか?

ジュディ:ジャズ歌手に? ならなかったの。なぜかアイドル路線になって。でもやりたいってことになって。これはシンガポールで作りました。すごい時代ですよ! シンガポールでアレンジをして、他は全部シンセサイザーで入れて。なんとブルガリア交響楽団がブルガリアでデジタルで音を飛ばして、シンガポールのスタジオと向こうのスタジオで同時に音を聞きながら。「そこはもうちょっと遅くしてください」「もうちょっとテンポ上げます」とか。

JK:ほー! 宇宙的ですね!

ジュディ:本当にこの時代、どういう風になってもできる。だから月でやろうと思えばできる! そういう時代ですよ。それでやっと夢が叶いました。

ジュディ・オング、初めての版画はスリッパで?!

=OA楽曲=
M1. ケセラセラ / ジュディ・オング

◆4月4日放送分より 番組名:「コシノジュンコ MASACA」
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