TBSラジオ『パンサー向井の#ふらっと』毎週月曜日~木曜日 朝8時30分から放送中!

2022年12月21日放送後記

ふらっと こども電話相談室

TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のお兄さん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。

今回の相談は・・・

Q. どうして人は出かけるときにおしゃれをしたり、お化粧したりするんでしょうか? ぼくはかっこいい服を着て出かけるけど、そこには知らない人しかいないし、もう一度会うこともない人ばかりです。その知らない人のためにおしゃれをしても意味がないと思うけど、ぼくはやっぱりかっこいい服を着て出かけたいと思います。なぜですか?(東京都 りょうまくん 12歳 小学6年生)

(回答した先生)金井真紀さん/文筆家、イラストレーター

向井お兄さん りょうまくん自身はおしゃれしたりかっこいい服を着るのは好きなんだよね。でも、なんで自分はおしゃれをするのかなって思うときあるんだ。

― はい。

向井お兄さん たしかに言われてみたらそうだよねえ。

金井先生 りょうまくん、こんにちは。質問してもらったのに、まずこちらから質問返しをしたいんですけれども(笑)、おしゃれするときはどこにお出かけすることが多いんですか?

― スーパーとかお買い物に行くときです。

金井先生 お買い物にもおしゃれして行くんですね。かっこいいですね。そういうときりょうまくんは、例えばどういう服を着ますか?

― ジーパンとかです。あと重ね着の服とか。

金井先生 自分でお洋服を選ぶようになったのはいつぐらいからですか?

― 小学校に入ってからです。

金井先生 すごい、1年生のときから。着る服も買う服も自分で選ぶという感じですか?

― はい。

金井先生 ほお~、それは相当おしゃれですね。

向井お兄さん センスがあるんですよね。だからこそ、なんで自分はこんなにおしゃれをするんだろうっていうことも疑問に思うわけですもんね。

金井先生 それは「お母さんはなんででおしゃれするの?」とか「大人はなんでおしゃれするの?」じゃなくて、自分はなんでおしゃれをするんだろうっていう疑問ですよね?

― はい。

金井先生 その疑問が深いですよね。そこをみんな素通りすると思うんですよ。大人になっていくときに「なんで自分はおしゃれをするんだろう?」なんて思わないですよね。

向井お兄さん 考えようとしたこともなかったです(笑)。

金井先生 だからまずこの質問にびっくりしまして、すごい視点だなと思って、りょうまくんはそこに気がつく方なんだなと思いました。

― はい。

金井先生 それで、なんでおしゃれをするか。私が思うには、おしゃれをして人から「今日の服、いいね」とか「似合ってるね、かっこいいね」って言われることももちろん嬉しいんですけども、本当の本当に嬉しいことは、自分が自分を好きな感じというか、「今日の自分、ちょっといいね」って思えることがいちばん大事なんじゃないかなと思うんですよね。

― ああー。

金井先生 となると、出かけた先で会った人が知り合いじゃないとかもう二度と会わないとかは、自分の好きな「いいね」に比べたら実はあんまり大事じゃないのかなと思ったんですけど、どう思いますか?

― あー、そうです。

向井お兄さん なんかわかる気がする?

― はい。

向井お兄さん そうだよね。もちろん誰かにほめられるのって嬉しいですけど、知らない人や初めて会った人たちがほめてくることはなかなかないですもんね。それでもおしゃれな服を着て行くのは、やっぱり自分が嬉しいからとか、自分がそれを着るとテンションが上がるとか、そういうことが重要。

金井先生 そして、おしゃれな服に限らず、結構ヨレヨレのTシャツを着ていてもそういう自分が好きなときってありますよね。わかります、りょうまくん?

― ああ~、はい。

金井先生 お母さんに「ちょっとそれはだいぶボロボロだからもう捨てたほうがいいんじゃないの」って言われてる、でもこれを着ている自分が好きだとか、なんかリラックスできるとか。

そうなると、おしゃれがすごくよくておしゃれじゃない人がだめとも言えなくて、自分が好きな自分でいる人がいちばん強いかなと思ったりするんですけど。

― ほ~。

向井お兄さん そうですよね。いつの間にか自分の価値基準を人に委ねちゃう瞬間ってありますもんね。人によく見られるかなと思うからこれをやってみるとか。でもりょうまくんみたいに「自分が好きだからやる」「自分が好きだから着る」というほうがなんか素敵で、自分の幸せっていう感じがしますよね。

金井先生 私もそうなりたいと思いました。

向井お兄さん 大人になるとどうしても「人にどう見られるか」というほうが強くなっちゃうから、今のりょうまくんのまっすぐなのが羨ましいし、キラキラ聞こえますよね。

金井先生 この質問が浮かんだところも素晴らしいし、その背景の話を聞いてますますいいなと思いました。

(回答者プロフィール)金井真紀(かない・まき)さん。文筆家でイラストも手がけています。「おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行」(岩波書店)、「聞き書き 世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし」(カンゼン)、「日本に住んでる世界の人」(大和書房)、「パリのすてきなおじさん」(柏書房)、「マル農のひと」(左右社)など、面白そうな人を訪ねて書いた本がたくさんあります。

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