TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!

9月17日(日) 放送後記

1984年北海道小樽市生まれ。東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業した後、国内外で指揮者として活躍し、2021年新国立劇場オペラ研修所終了公演でのチマローザ「悩める劇場支配人」ではイギリス『オペラ』誌でオペラブッファ指揮者として高く評価されました。

医学部志望から、マサカの三浪で藝大入学~指揮者 辻博之の画像はこちら >>

出水:今日は小さいころのお話をお伺いしたいんですが・・・

辻:美少年!(^^)

JK:小さいころから小太り?

辻:小さいころはきゃしゃだったんですよ。ところが、母親が入院した時におじいちゃんおばあちゃんの家に預けられて。そうすると1回好きだっていったものが毎日出てくるんですよ。それで毎日天ぷらとかすき焼きとか・・・運動もしないし(^^)でも今ジム通ってます。

JK:まだ行った効果が出てないんじゃない?

辻:まだ1回ですから(笑) 久しぶりにクロスバイクに空気を入れましたよ! 昔好きだったんですよ、自転車で川崎まで行って・・・

JK:自転車がカワイソウ(^o^)

辻:でもそれで4キロ落ちましたね。でも次の日疲れちゃって熱が出て、上司に車で迎えに来てもらいました(^^;)

JK:ジムの中で自転車こげばいいじゃない? 目の前に譜面を置いてね。

辻:あれ仕事がはかどっていいですね!それ始めたんですよ。朝の事務仕事をジムでする「ジムonジム」(笑)

出水:辻さんが音楽を好きになったきっかけは?

辻:最初好きだったのは演歌だったんです。小学校5年生ぐらいかなぁ・・・小樽で美空ひばりさんばっかり聞いてたんです。歌謡曲っていうのかな。

JK:歌が上手いから、子どもだろうと大人だろうと影響されますよ。

辻:カラオケ大会にも出て歌ってました、「越後獅子の歌」とか。

テイラーになりたいと思った時期もあったんですが、お能をやりたいと思った時期もあったし、長唄の笛をやりたくなった時期もあったし。ある時学校の授業でスッペの「軽騎兵」っていう曲を聴いたんです。馬が走っているのを聞いて「楽しい!」と思って。街のレコード屋さんに行って、カセット買ってきて何度も聞いて。その中でオペラの曲に出会ったんですよ、「マドンナの宝石」っていう。

JK:それはいくつぐらい?

辻:小学校5~6年だったと思います。ちょっとデキが違いますよね(^^) そこからどんどん、今度はオペラのレーザーディスクを買って、最初に見たのが「トゥーランドット」」。メトロポリタン劇場のドミンゴさんのだったんですが、何だこの世界は!と思って。

JK:小学校でドミンゴさんに出会うなんて! 私はずいぶん遅いわ、1982年ごろかしら。

辻:そこからもうずっとオペラが好きで・・・高校ではジャズ研やったり吹奏楽を手伝ったりして。

JK:そこから藝大を目指して?

辻:その時は医学部を目指してたんです。これまたマサカなんですけど、僕が最初の年に受験に失敗して。

親戚で病院をやっている人がいたんですけれど、病院もなかなか大変だという話を聞いて。だったら手に職を持って楽しくやっていくほうがいいんじゃないか。何がやりたい、っていったらオペラ。そこから3年浪人してレッスンに通って、「藝大に入ったら続けていい」って言われて入ったんです。

JK:3年浪人って大変でしょ!

辻:楽しかったですよ~! 社会科の年号とか覚えなくていいんですもん。それに新しく始めたから、「音を聴いて楽譜を書くなんて楽しいことができるんだ!」って。今までは「歌ってないで勉強しなさい」って言われてたのが、「ずっと歌ってていいんだ!」って。

医学部志望から、マサカの三浪で藝大入学~指揮者 辻博之

出水:その後藝大に入って、在学中から指揮をしていたそうですね?

辻:オペラの指揮がしたくて声楽科で入ったんですが、「指揮は早いうちから始めた方がいいよ」っていう先輩がいたので。そもそも僕は指揮科に入れなかった。指揮科に入るのはすっごいエリートで、全ての音が音楽に聞こえるような、絶対音感もあり、ピアノもピアニストより弾けて・・・多分耳の穴が8つぐらいあると思います、あの人たち! 耳かきが大変(^^)だって楽譜だって30段とか一気に読むんですもん。で、藝大の仲間同士でオーケストラを組んで、そのままお仕事いただいたりして、今も長く続いてるんですけど。

JK:独自のやり方ね。

辻:いっぱいマサカがあるんですけど、この番組に出られたことがマサカですよ! だって今までゲストで出られた指揮者の方って、西本智美さん、佐渡裕さん、大友良英さん・・・すごいですよね! 著名! 他にもアンミカさん、エグザイルさん、三國さん・・・この中に私なんてマサカですよ。

JK:大丈夫です、時がきました!

辻:僕、毎日がマサカなんです。指揮者で40代はひよっこと呼ばれているのでキャリアまだまだなんですけど、いろんなことやりたいし、いろんなことに興味があって。いまでも思い出すんです、高校の終わりに方向転換した時に「音楽をやりたいのか」って父に言われた時のこと。英才教育も受けてなかったし、藝大に入れればいいな、海外で歌えれば御の字ぐらいに思ってた。プロのオーケストラで振るのは難しい、でもみんなで楽しいことをやろう、ってやってたら、仕事が僕のiPhoneに来るんですよ。毎回マサカなんです。マサカがどんどん増えてきてうれしいなぁって。

JK:時が来たのよ! あと人間性もある。好かれるって安心なのよ。そういう安心感って信用ですよ。

辻:呼んでいただいたら、お客様も含めみんな和気あいあいとして帰っていただけるよう努力しようと、それだけを思って、マサカを当たり前だと思わないようにしています。

JK:断ることもある?

辻:今のところないです。どうしても日程が、というのはあるけど。本当に奇跡の積み重ねの毎日です。「ここ2日間だけ空いてます!」とか。歩いてると必ず知り合いに会うんですよ。昨日も「あの人にメール返さなきゃいけなかったんだよな~」と思ってたらエレベーターですれ違ったり。

JK:私もあります! 合理的なの(^^)

医学部志望から、マサカの三浪で藝大入学~指揮者 辻博之

出水:愛知県立芸術大学で教えていらっしゃったこともあれば、現在は千葉県文化創造財団で幼稚園の出張演奏もしているそうですね。

JK:幼稚園の子どもたち、分かる?

辻:千葉県さんから最初「タキシードを着てベートーベンやってくれ」って言われてたんですけど、僕が幼稚園生だったらそんなのやだ、と思って、カエルとウサギとトラとウシの着ぐるみをAmazonで買って財団に送ったんです。お姫様が盛りで迷って、動物たちが歌を歌って演奏して助けるという物語にして。ちば銀行さんが全額支援して共同主催しているんですけど、10年以上続きました。だから最初の子はそろそろ16歳。

JK:もう高校生! 忘れないね! 将来どうなるんだろうね? 藝大目指したりして。

辻:だったら嬉しいですね。僕カエルでピアノ弾いてるんで。でも結構泣かれるんですよ、「顔がでかすぎる!」って(笑)

JK:これからまだまだやりたいことたくさんあるんじゃない?

辻:やっと自分の演奏会のスタイルができてきて、お話をして、できるだけキャッチーな曲を紹介して、お客さんに参加してもらうのが自分には合ってるなと。九州交響楽団さんにご提案をいただいたマタニティコンサートでは、子どもが泣いても走り回ってもいい。椅子じゃないのでハイハイしてもいいんですよ。助産師さんもいて、バギーを置けるスペースや人肌のお湯もロビーにあって。これも続けていきたい。あとは僕の知らないジャンルもまだたくさんあって、ポップスや歌謡曲や和楽器の方とご一緒させていただり、日本舞踊とコラボさせていただいたり。この間はラッパーさんとお友達になったんですよ。調べたらラップとオーケストラのコラボもあるんですよ。自分の想像できない音楽が待ち受けてるので・・・だからやりたいことは、どんどん街に出て人と会うことです。

医学部志望から、マサカの三浪で藝大入学~指揮者 辻博之

OA楽曲
M1. 美しきパースの娘からセレナーデ(ビゼー) / ジュリアン・ベーア, リヨン国立歌劇場管弦楽団

編集部おすすめ