先週、政府が能登半島地震の支援パッケージを発表しました。その中に、SNS上で拡散する偽情報や誤情報を減らして、情報の信頼性を確保できるための技術開発を支援する、とありました。

Xの表示数を稼ぐためにデマが増えたのではないか。

災害時の偽情報や誤情報、いわゆるデマというのは、昔からありますが、今回の能登の地震では、デマが今までよりも増えたといいます。その背景について、防災心理学がご専門の兵庫県立大学・教授、木村玲欧さんに伺いました。

兵庫県立大学 木村玲欧教授

「最近のSNS・交流サイトの発達によって、そういったデマを被災地外の人もたくさん拡散できるようになってしまった。で、昨年2023年に、X・旧ツイッターの仕様が変更になりました。何かと言いますと、たくさん表示されれば表示されるほど、この表示回数によって、実は収益、いわゆる利益を得ることができると。

ですから、なるべくたくさんの人のXの画面に、たくさん表示できるように、正しかろうと間違っていようと、どんどんと情報を作って流して、どんどんと表示させれば、どんどんと自分が儲かる、そういう意味では、表示数を稼ぐためにデマというものが、たくさん出てきたのではないか。Xの仕様変更で、結局そのデマを巡る状況というのは以前よりも悪くなっている、デマが多くなってきてる、そんな風にも考えています。」

「崩れた家の下敷きなって動けない」「家族が下敷き、助けて」という救助の要請が、具体的な住所と一緒に多数投稿されました。本物の投稿もありましたが、多くは本物を真似した
偽情報。つまり、誰かの投稿をコピペしたり、生成AIの技術で作成した偽物。

Xの仕様が変わったことで、利益を得るための表示回数を稼ぐために、このような偽の情報が多く投稿されたのではないか、ということなのです。

政府の協力はもちろん悪いことではないが・・・。

木村先生によれば、今まで政府としてはデマに関しては野放しで、例えば、Xなどの会社に削除を要請するといったファクトチェック、正しいかどうかを確認する機関は、NPOなどの一般の人々に任せられているのが、日本の現状だそうで、それならば、政府の動きはかなりの朗報、大きな一歩かと思ったのですが、現場からは嬉しい面もあるのですが、という意外な反応がありました。ファクトチェックメディア・リトマス編集長の大谷友也さんのお話です。

ファクトチェックメディア「リトマス」編集長 大谷友也さん

「人間でも、この人は他のツイート(投稿)のコピペばっかりしてるなっていうのは分かるんで、機械使って大規模にやれば、自動判定とかで、この人はコピペばっかりしてる人です、気を付けましょう、みたいな、例えば表示が出るとか。完ぺきではないですけれども、ある程度対策は出来ると思いますね。

技術的な対策っていうのは出来るんじゃないかなと思いますけれども、まあ政府が直接やるっていうのはちょっと危ない面もあるんで、うん、なんか政府がこれは偽情報だ、拡散するなって決めたらもう、完全に言論の統制になっちゃうんで、直接ではなくて、その民間の動きを支援していくっていうか、注視していくっていう、それくらいしか出来てないですけれども、うーん、逆に、能登の地震で、誤情報が有害だ、政府がもっと動かなければならない、みたいな感じに振られないでくれるといいな、と思ってますけども。

どっちの方がいいか、ちょっと結論は簡単には出ないですけどもね。

ある程度、政府が協力してくれよ、と思う面もありますし、政府にそういうこと決められると、ちょっと怖い感じだなっていうのもありますし、複雑ですね。」

政府がどこまで関わって、どう支援するか・・・。

技術の開発によって、自動判別でデマを見つけることができれば、災害時の救助活動を妨げることは避けられるので、支援は悪いことではないのですが・・・と、すごく複雑そうでした。

実際、Xで助けを求める投稿した人の話が新聞に載っているから、本物の投稿もあるのも事実。最悪なのは、デマが多いことで、本物の投稿がニセモノと広められてしまったら・・・。ファクトチェック団体といえども、こういったことを判別するのは、簡単ではないとおっしゃっていました。

情報やコンテンツの発信者情報を電子的に付ける、証明書のようなものもあり、今回政府は、それを活用しようということですが、大谷さんは、ソーシャルメディアというのは、もともと、ごく個人的な、自分だけが知っている情報を発信するためのもの。

そういう発信者の証明書のようなものが、そぐうのか?ということも疑問に感じていました。

大事なのは、拡散する前に一度立ち止まること

では、今のところ、私たちがデマを広げないために出来ることはどんなことなのか。木村先生と大谷さん、お二人に伺いました。

兵庫県立大学 木村玲欧教授

「災害が起こるとデマは必ず発生する、くらいの気持ちでですね、災害の時に出てくる情報については、しっかりとチェックする。家族が下敷きになっています、こんなような情報を私たち得たら、心揺さぶられるわけですね。ところがこのデマの情報というのは、そういったこの人々の心を揺さぶって拡散させる、そこに実は悪意を持ったデマのつけ入る隙もあったりします。

オレオレ詐欺とか還付金詐欺、こういった情報にも惑わされないのと同じような形でですね、発信元のよく分からない情報は流さない、こういった判断も必要になってくるかと思います。」

「リトマス」編集長 大谷友也さん

「そういうめちゃくちゃな状況が、ネット上にあるっていうのを、ちょっと信じ切れてない人も多いんじゃないかなと思っていて、まさかそんな災害時に、そこまでひどいウソをつく人がいるわけないだろって、どっかで思っちゃうかもしれないんですけども、残念ながらいるんですよ、インターネットってそういうものなんだよって、冷めた見方をしていかなきゃいけないかな、っていう気がしますね。」

その投稿者が、普段どんな投稿をしてるか、どこに住んでいるか、といった前後の投稿を確認する。また元々は誰の投稿なのか辿る。つまり、ちょっと立ち止まって考えることが大事。

そのためにも、ウソをつく人もいる、と頭に入れておいて欲しい、ということでした。

自分のところだけに来た情報ではない、多くの人が見ている情報だと覚えておく。自分が拡散しなければいけない情報か考えるのが大事、と、お二人とも言っていたのが、印象的でした。