そして四代目の冠城亘。法務省のキャリアで後ろ盾を使ってやりたい放題、自由に事件を解決する、まるで初期の右京さんタイプ。似たものコンビになるのでしょうか?非常に楽しみですね。そこで今回は、二人の化学反応が絶品な“魅力的なドラマの同性パートナー”を集めてみました。
無茶苦茶!でも有能な相棒に振り回される善意の人・・・?優秀だけど人付き合いはちょっと・・・というのは天才の典型的な形。そんな天才に付き合ってあげられるのはよほどの善人でなくては難しいのです。相棒で言うところの亀山薫タイプといえば、ドラマ『チーム・バチスタシリーズ』の田口公平医師と、厚生労働省の役人で「ロジカル(論理)・モンスター」と呼ばれる問題児、白鳥圭輔のコンビなどが記憶に新しいのではないでしょうか?
最初の映画化では、田口は女性に変更されていましたが、ドラマ版1・2とスペシャル版、続く映画版では、善良を絵に描いたような俳優、伊藤淳史さんが田口を、ミステリアスを絵に描いたような仲村トオルさんが白鳥を演じています。自分に自信がなく、病院内での評価も高いとは言えない田口医師ですが、まっすぐな性格で人を信じ、人の心を開かせるのが得意と、心療内科医としてはとても優秀です。
その女性版が、2001年放送の『カバチタレ!』。こちらは原作では両方男性。ドラマでは善人でだまされやすい田村希美を常盤貴子さん、バリバリキャリアウーマンの行政書士、栄田千春を深津絵里さんが演じられています。のんびりしていて人を信じる希美ですが、意外に芯はしっかり。バリバリ働いて仕事ができ、弁も立つ千春は逆に予測しないトラブルに弱くパニックになりがち。日頃はトロい希美が、いざという時は千春を支える姿に2人の強い友情を感じました。
最近ですと、2014年の『ST 赤と白の捜査ファイル』なども。
自由人を支える世話焼き女房タイプ?奔放で自由、考えようによってはちょっと自分勝手?そんな人を支える常識人とのコンビ。典型的なのが、1996年から2002年まで断続的にドラマ化され、2002年には映画化、2014年にはスペシャルドラマが放送された『ナースのお仕事』の「朝倉と先輩」ではないでしょうか? 松下由樹さん演じる尾崎先輩はしっかり者で頼りがいのあるナース。しっかりしているが故に苦労も多く、精神的に疲れてしまう時も多々あります。主に、疲れさせているのは観月ありささん演じる朝倉いずみなのですが、時に朝倉の能天気さに癒やされ、二人は「癒やし&お世話され」、お互いを支え合う名コンビとなっていきました。松下さんは、『振り返れば奴がいる』出演時は頼りない研修医でしたが、この作品からは「頼りがいのある先輩」役の代名詞になりました。マネージャー・乳母・教官・刑事など、厳しさの中に優しさもある姿が受け、2005年から4年間「理想の女上司」にもランクインされています。
1988年の『抱きしめたい!』は、二人揃ってイケイケと思われがちですが、実は浅野ゆう子さん演じる夏子は家庭的でしっかり者の主婦。対する浅野温子さん演じる麻子は自立したスタイリストでモテモテですが、実は夏子の旦那さんを好きという、ドロドロ設定のお話です。
軽いけど実は頼りになる男、クールで真面目な男、どっちが好き?クールだけど根は熱い、タカこと鷹山敏樹と、ちゃらんぽらんだけど意外と冷静で頼りになる、ユージこと大下勇次の型破りな活躍を描いた伝説の作品、『あぶない刑事』。どっちもスタイリッシュでカッコよかったです。あんな彼らに守られたい!あんな男になりたい!と男女ともに憧れました。お互いを信じあう二人の息のあったアクションも最高です。
1997年の『ビーチボーイズ』も、男同士の友情が素敵でした。楽天家でちゃらんぽらん、しかもヒモ(元スポーツ選手)なのに、意外としっかりもので物おじしない、反町隆史さん演じる桜井広海。そしてクールだけどちょっと融通の利かない真面目な元エリート、竹野内豊さん演じる鈴木海都。当然喧嘩ばかりですが、二人ともちょっとおせっかいで、その優しすぎる性格は共通。色々と事情を抱えた女性陣が、最初は反発しながらも二人の優しさに触れ心を開いていくのも頷けます。
「地味だけどリアルな刑事ドラマ」の金字塔『踊る大捜査線』の室井と青島も、立場は違えど心はバディなのではないでしょうか?キャリアにしては珍しく、東大卒ではない室井管理官は、所轄に勤務し市民第一の青島と交流していくうちに、警察内部の改革を推進するようになり、違う立場・違う視点で対立しながらも最終的には「市民の平和」という同じ信念に向かって戦っていく姿は多くの人の感動を呼びました。
全く違う世界の二人が出会ったら?そして『素顔のままで』。芦屋出身で職業は図書館司書、理解力のある医者の父親に大事に育てられた、安田成美さん演じる優美子と、親戚をたらいまわしにされて育ち、高校中退で暴走族にも入っていた中森明菜さん演じるカンナ。口は悪くても心優しいカンナに引きずられるように、内向的だった優美子も前向きになっていき、絵本作家として売れっ子に。最終回でのカンナの号泣は真に迫った名シーンです。優美子の父が、すぐにカンナを「良い友人」と評価したシーンも、父親として本質をとらえた確かな愛情を感じました。
映画『下妻物語』の桃子とイチゴもそうですが、どちらかがサバサバだと不思議な化学反応で、2人の絆はより深いつながりになります。イチゴもカンナもビジュアルこそはサバサバ系ですが、色恋に関しては乙女・・・なんていうギャップもかわいかったですね。
ここ最近は「相棒」の影響もあり、同性パートナーの警察系・探偵系ドラマ、いわゆる“バディ物”の全盛期といえます。親子バディの『ビター・ブラッド』、愛想のいいお巡りさんと寡黙で素っ気ないコンビ『S -最後の警官-』、ちょっと変わった便利屋がもっと変わった男を拾った『まほろ駅前番外地』、昭和の刑事と平成刑事のコンビ『THE LAST COP/ラストコップ』なども、男同士の同居生活や友情など、熱いものを感じさせてくれます。今年もまた熱いバディがどんどん生まれそうな予感。楽しみで仕方ありません。
今回選ばせていただいた、ドラマ史に残る同性パートナー10選1『相棒』(杉下右京、亀山薫)
2『チーム・バチスタシリーズ』(田口公平、白鳥圭輔)
3『カバチタレ!』(田村希美、栄田千春)
4『ST赤と白の捜査ファイル』(赤城左門、百合根友久)
5『ナースのお仕事』(朝倉いずみ、尾崎翔子)
6『抱きしめたい!』(池内麻子、早川夏子)
7『あぶない刑事』(鷹山敏樹、大下勇次)
8『ビーチボーイズ』(桜井広海、鈴木海都)
9『踊る大捜査線』(青島俊作、室井慎次)
10『素顔のままで』(香坂優美子、月島カンナ)
文/藤原ゆうこ