今の時代60代と言えば、まだまだ現役、老後なんて20年先という感覚がある。そんな世代の63歳の若さで、先日、あるフランス人女性が亡くなった。夫と共に夜中の1時半に床に就いた彼女はその15分後に突然この世を去った。お別れの言葉を告げることもできず、本人にとっても家族にとっても、さぞ無念だったに違いない。いつものように愛する人に「おやすみ」と言って、翌朝当たり前のように目覚めるということがどんなに幸せだったか、この家族は身をもって知ったのである。
彼女は生前から、自分にもしもの時があった場合には埋葬ではなくて火葬にしてほしいと家族に話していた。家族はその彼女の望みどおり、受け入れる火葬場を探したのだが、そこで全く想像もしていなかったことが起きた。それは、ボルドー地方の全ての火葬場の火葬炉が、彼女の棺よりも小さかったのである。火葬炉の幅が80センチなのに対して、生前体重が140kgだった彼女の棺の幅は83cmだった。たかが3cm、されど3cm。残された家族のために何とかしようとしても、火葬場の管理者は物理的に不可能と判断した。大きいサイズの棺は問題なく購入できたのに、その棺が入らない火葬炉があることに納得のいかない家族達。