ヴィーガン(完全菜食主義者)の数が年々増えているイギリスでは、公共の場でのヴィーガンに対する適切な対応を求めて様々なキャンペーンが行われている。しかし受け入れ態勢が整わないところも多く、ヴィーガンの人たちが不便を強いられてしまうことも少なくない。
このほどヴィーガンであるひとりの女性が、航空券予約サイトでヴィーガン用の機内食を往復リクエストしていたにもかかわらず、ヴィーガン・ミールが機内で提供されなかったとして「他のヴィーガン搭乗者が私のような苦痛を味わうことのないよう、今後はきちんと対応してほしい」と不満の声をあげた。『The Independent』『Manchester Evening News』などが伝えている。

トリルビー・ハリソンさん(54歳)は10月15日、ニューヨークにいる友人に会いに行くためマンチェスター空港発ジョン・F・ケネディ国際空港行きの英航空会社「トーマス・クック航空」に搭乗した。

ヴィーガン(完全菜食主義者)のハリソンさんは、ツアーオペレーター会社「Gotogate」に航空券代とは別に追加料金5ポンド(約720円)を支払い、事前にヴィーガン用の機内食を予約した。ところが「Gotogate」のオペレーターは予約確認時に「Special Meal(特別機内食)」と登録したにもかかわらず、この情報をトーマス・クック航空へ適切に流すことを怠ったことから、航空会社側はリクエストを受け取らなかった。そんなアクシデントが起こっていたことなど全く知らなかったハリソンさんは、予約しておいたヴィーガン食を機内で提供されず、どうなっているのかCA(客室乗務員)に尋ねたところ、ヴィーガン用機内食のリクエストは上がっていないという答えが返ってきてショックを受けた。


自らもヴィーガンという親切なCAのひとりが、「私が注文してあるヴィーガン用機内食を代わりに食べてください」とハリソンさんに申し出たが、結局CAのヴィーガン用機内食もリクエストされていなかった。7時間のフライトの間、ハリソンさんは機内食の代わりにと提供されたナッツやクリスプス(ポテトチップス)を口にしただけで、「苦痛と屈辱を与えられた」と不満を露わにしている。

「ピーナッツとクリスプスを提供してくれたCAの親切は有難いですが、塩分の高いものばかり口にしていたために、その後気分が悪くなり脱水症状を起こしてしまいました。しかも最悪なことに、行きだけでなく帰りのフライトもヴィーガン用機内食を提供してもらえなかったのです。カスタマーサービスに苦情を訴えたところ『航空会社にメールをして』と言われたのですが、返信が来るまで28日間ほどかかる場合もあるんですよ。この旅は私にとって終始、苦痛なものでしかありませんでした。
他の航空会社はこの件を考慮して、ヴィーガンの乗客が私のような苦痛を味わうことのないようにしっかりと対応してほしいと思います。」

なおトーマス・クック航空側は、「Gotogate」側に非があるとしてこのように述べている。

「弊社記録には、乗客がヴィーガン用機内食を必要とする旨の連絡は一切来ておりません。Gotogate側が、ミールリクエストの際に誤ったコードを送信したことによりリクエストが来なかったのです。リクエスト時にオペレーター側は『スペシャル・ミール』ではなく『ヴィーガン用機内食』と明確に記録すべきです。」

ヴィーガン協会(Vegan Society)の広告キャンペーン事務局員エレーナ・オーデさんは、「ヴィーガニズム(完全菜食主義)は、英国内では人権と平等の法律のもとに保護された信念ではありますが、悲しいことにヴィーガンたちは常に適切な食事を提供されるわけではないのです。過去4年間で、英国内のヴィーガンは4倍に増えていることからも、航空会社はヴィーガン用の機内食を徹底化させるべきです」と話している。ヴィーガン協会が主催となって今年初めに開始されたキャンペーン「Vegan on the Go(ヴィーガン・オン・ザ・ゴー)」では、電車を利用するヴィーガンの乗客のために鉄道会社にヴィーガン向けの食事を提供するよう奨励していたが、次は航空会社へのキャンペーンを計画しているようだ。


このニュースを知った人からは、「ナッツとクリスプスしか食べられなかったなんて、それは最悪よね。予約していた食事が提供されないとなれば一大事よ」「自分の信念で偏食な人生を送るには、それなりにリスクもあるってことを覚悟しないと」「世の中には飢餓で何も食べられず死にゆく人もいるっていうのに、自分がヴィーガンだからって7時間ナッツとクリスプスしか食べられずに不満を言うなんて…呆れるわ」「なんでみんなそんなに冷たいの。追加料金まで払って予約した食事が出ないとなると文句も言いたくなるでしょう!? 飢えてる子供を引き合いに出してまでヴィーガンを批判するなんて信じられない! ヴィーガンの信念を持つことはあなたたちには関係ないことでしょう!?」「余分に払った機内食の料金を返金してもらえばいいことだろう」「でも今回は航空会社の責任ではないよね。航空会社を責めるのは筋違いでしょ」「アレルギー疾患の人とか、こういうヴィーガンの人ってなんでどこでもいつでも自分の希望が通ると思うんだろう。自分で作って持って乗ればこういう事態にもならず100%安全で、しかもメディアに訴える必要もないだろうに」といった声があがっている。

画像は『The Independent 2018年10月25日付「Vegan passenger served nothing but crisps and nuts during seven-hour flight」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)