トップジュニアたちにテニスを指導した錦織

12月4日、錦織圭(日清食品/世界ランク47位)は都内でスポンサーイベント、「UNIQLO LifeWear Day 2021-テニスとサステナビリティ-with錦織圭」に参加。子供たちと触れ合い、トークセッションでは努力やあきらめないことへの大切さなどを語った。


【画像】スポンサーイベントに参加した錦織圭(写真27点)

イベントの第1部では、今井茂樹(公益財団法人日本テニス協会普及推進本部副本部長)さん考案のテニス風ゲーム「テニピン」を抽選で選ばれた子供たち30名と楽しみ、第2部で「サステナビリティについて考えよう」に参加。さらに第3部でジュニア選手とヒッティング、アドバイスを送ったのち、ポイントゲームも楽しんだ錦織。

イベント内では坂本正秀(ユニクロ)さんとトークショーも実施。その中で、自身も好きな言葉と語る「努力」することの大切さ、あきらめないことの大事さを説いた。その後、記者会見では、12月29日で32歳を迎えるものの、「まだまだ、まだまだできると思っている」と力強く語った。

以下はイベント内での一問一答である。

<坂本さんとのトークセッション>
Q錦織選手に3つのキーワードで、ジュニア選手たちの成長につながる話を聞き出せればと思います。一つ目のテーマは「努力」ですが、いかがですか?

錦織「努力しているのかどうかと言われると、その判断は神のみぞ知るというところなので、自分が努力しているのかはわからないですが、トップになるには、テニスでも会社でもそうですし、トップになるのは、どの職業も努力が必要。100%の力を注ぎ込むということは、どの職業でもいずれは必要になってくるので、それは意識しますね。自分でもトレーニングを欠かさない、練習を欠かさず毎日全力で取り組み、試合も全力で戦う。シンプルなことですが、毎日全力を注ぎ込みながらということは毎日やっています」

Q.努力する中で、いろいろとアクションをしてらっしゃいますよね。

錦織「僕は昔から世界のトッププレーヤーになりたいという思いがあって、12歳くらいの時にテニスの大きな大会で優勝して、そこから自分の考えは、プロになるというのが一つの目標になって。
そこに到達するためには、保証はないけど、毎日努力しないと辿り着けないので、遠くはまだ見なくていいけど、毎日のステップを欠かさずやり切るということは意識していた。

僕の場合は、目標がすでにあったので、そこに辿り着くために努力するというのはありました。『子供の頃、夢を持った方が良い』と言いますけど、無理に探す必要はない。けど、自分の好きなことだったり、どの職業もそうだけど、成長していくとどんどんおもしろくなるので。もちろん嫌いなことを進んでやってほしいということは思わないけど、自分の好きなことでも辛いタイミングというのは来るので、そこを乗り越えれば楽しくなるよと伝えたいですね」

Q.13歳で渡米されました。辛かったことありましたか?

錦織「もちろん、最初はありましたね。英語もしゃべれなかったですし、海外に行くといのは慣れないところに行くということだし、学校も知らない人だらけでコミュニケーションも取れない。食事も日本食が食べられないですし。嫌なことだらけだったけど、テニスという目標があったので、そのためには我慢するしかないな、と。最初は我慢もありました。

中学生くらいのころ、寮に入っていたんですけど冷蔵庫は共有で、自分の飲み物とかを入れておくと、いつの間にかなくなっていたりする。勝手に取っていかれたり。
そういうので、カルチャーショックというか、けっこう泣いたりもした。ルームメートが、すごく大きな高校生くらいの人で、いじめられたというわけではないけど、ちょっかいをかけられて泣くというイヤな思いは、まぁ、ちょくちょくありましたね(笑)」

Q.好きなことを見つけること、目標を持つことの重要性

錦織「そうですね。なかなか夢を見つけるというのは、子供のころは難しいですけど、なんとなく好きだなというのはサインだと思う。まだみんなのころは焦らなくていいと思います。高校生、大学生となったら自然に見えてくることもあるし、サッカーだったり、好きなことがあれば、毎日、たくさん練習していくともっとおもしろくなるよというのは覚えていてください」

Q.2つ目のテーマは「挫折」です。挫折した時に、どのように乗り越えますか?

錦織「僕の場合はケガが一番ですかね。ケガが多くて1年間休まなきゃいけなかったり。やっぱり、疑心暗鬼というか自分を疑う時も自然と出てきますけど、でも、なんでテニスをしているのかというと、好きだから、楽しいからやっているわけで、別に誰かに強制されてイヤイヤやっていることではないからこそ、毎日努力できる。イヤなこともあるけど、同じくらい幸せもあるので、だからやめられないというか、そういうところがありますね」

Q.どういう風に切り替えますか?

錦織「僕の場合は1回テニスから離れますね。イヤなことあったら、3日、4日、テニスをしない。テニスから離れてリセットすると、ちょっとじわじわテニスが好きというのが出てくるので、そのタイミングで自分も練習を始めたり。本当にダメな時は、数ヵ月離れてというのでもいいとも思っています。
やっぱり人生は生きていると、いろいろとイヤなことがある時期があるので。子供もあると思いますが、大人になってもイヤなことが時々起きますけど、でも必ず、それと同じくらい楽しいことがあると思うので、何をするにしてもあきらめないことが大事ですね。モットーというか」

Q.心に思っている言葉は「あきらめない」ですか?

錦織「そうですね。でも、好きな言葉は『努力』かな。やっぱり何をするにしても、まず大事なのは努力。生きていくにもそうだし、やっぱり、普通に生きていくだけだと普通の人にしかなれない。別にそれがダメというわけではないですけど、本当に上に行くためには、いろいろな努力も必要だし。でも、楽しいからこそ得られることもある」

Q.以前、私もこう努力をしたと話をした時に、『それは努力じゃなくて当たり前ですよ』と言われたことがありました(笑)

錦織「それは周りにいてくれた人とか、コーチだったり、最初は両親が、休みの日にお父さんとかがずっと球出ししてくれたりしてくれて、それはあまり楽しくなかったんだけど、まぁお父さんが言うならしかたないと思っていました。でも大人になってみると、その経験が良かったというか。子供の頃はイヤだなと思っていたりするけど、周りが考えて導いてくれていたりするので。子供のころは難しいですけど、周りの巡り合わせ、両親だったり、周りが道標を作ってあげると、子供もよりスムーズにいけるのかも」

Q.3つめのテーマは「感謝」です。錦織選手は、よく感謝されていますよね。


錦織「大人になってくると、より思いますよね。子供の頃はやってくれるのが当たり前だし、親がやってあげるのは当たり前だと思うんですけどね、最初は。でも、周りの人たちがいないと自分も生きてはいけないので。大人になったら。学校の先生とか、周りの人とか、スクールのコーチとか、そういう人たちも、そういう人たちの働きのおかげで成長できているので。自分も周囲のおかげ、両親の考えもあって、快く渡米させてくれたり、自分1人ではなかなか生きていけないので」

<子供たちから質問>
Q.テニスに出会ったのは、いつですか?

錦織「テニスを始めたのは5歳です。そのころの記憶はまったくないんですけど、最初は子供用の小さいラケットから始めました」

Q.ストロークどうやったら速く打てますか?

錦織「大人になってくると、筋力が自然とついてくるので、まだ小学校、中学校まではなかなか速いボールは打てません。でも、テニスは速いボールを打つのが一番いいわけではないので、高いボール、遅いボールも有効だったりするので、大人になると自然と打てます。でも、それだけに頼らないでください。いいですか?」

Q.世界のトップと対戦する時に、イライラしたらどうしますか? 

錦織「まず深呼吸します。友達とケンカした時とか、ちょっとイラっとしますよね。親から怒られたりとか。
1回みんな深呼吸して、10秒くらい待ってみると、ちょっと落ち着いてきたりするので。3秒から10秒くらい、1回目をつぶって待ってみてください。そうすると親とかに怒られ時にも、“まぁ、しようがない。許すか”となったりするので、やってみてください」

<記者会見>
Q.イベントを終えての感想をまずお願いします。

錦織「そうですね。あ、そうですねって言っちゃった。新庄(剛志/プロ野球日本ハムビッグボス)さんがダメって言っていたのに(笑) 子供たちとこうやって接する機会ってあまり普段遠征回っているとないので、特にトップレベルの子たちとは接することが少ないので、あまり短い時間の中で、アドバイスをして変えるのはリスクはあるので、難しいところはありましたが、僕もいい時間を過ごせましたし、やはりこういう経験って、僕が10歳、11歳の頃に、僕も日本のプロの方にクリニックしてもらって、何か大きなものを感じて、いい経験値になったので、少しでも自分も力になれたらうれしいですね」

Q.ユニクロが推奨するサステナビリティの講義、実際に受けてみての感想を。

錦織「こうやってユニクロのチームが、なかなかああいう活動をしていることは、僕は知っていましたけど、子供たちだったり、皆さんが耳にする機会は少ないと思うので、こういう小さな取り組みが非常に、今問題になっている環境問題を救っていく第一歩だと思うので、ユニクロさんは服を通してですけど、他のいろいろな人がいろいろな角度から取り組んでいければ、世界もいい方向に変わっていくと思うので、一つのきっかけとして子供たちには覚えてほしいいい話だったと思います」

Q.錦織選手としての活動は?

錦織「僕の服とかも、たくさん試合とか来た服もたくさんあるので、再利用というところは特に大事なのかなと思うので、自分ができる最低限のこと。これって別に正解はないと思いますし、それぞれ個人ができる範囲のことでいいので無理せずやりたいと思います」

Q.子供たちに、夢を叶えるためのメッセージをお願いします。

錦織「最終的には大きな目標というか、ゴールを持って、やってもらいたいですけど、なかなかそれが夢が見つからない子たちもいると思うので、それが決してダメというわけではなくて、いつかは、やりたいことも出てくるし、見つかっていくと思うので何をするにも努力を惜しまないこと、夢をあきらめないということが大切だと思います」

Q.努力の大切さ、努力はどの目標に向かってやっていますか? 

錦織「やりつづけるしかないですね、同じことを。内容的には、いろいろなことを試して、まだまだ成長していくことを感じていますし。もうすぐ32になりそうですけど、まだまだ、まだまだできると思っているので。
後半よくなってきたけど、またケガでプレーできなくて、そういうところの強化というのは毎年やっていますけど、そこを続けてやっていくことがすべきことかなと思います。

Q.今回のイベントでは「服の力」という言葉を使っています。「スポーツの力」ということで、人、世の中に与える力はどんなものだと思いますか?

錦織「正直、この質問が一番難しくて。僕はスポーツをしている身なので、なかなかこっち側からの意見しか言えないですけど、僕自身も、いろいろなアスリートの、特にこの前のオリンピックでは、たくさんの選手からモチベーションをもらえました。メダルを取ったり、輝いてる姿を見て、自分もまた頑張ろうと気になれたので。

でも、同時にスポーツ選手が優遇されることもあったり。今、コロナの時期ということで、スポーツをやらなくていいという意見もわかる。僕自身もわからないし、正解はないと思う。僕自身としては、経験、たくさんいただいた力を(感じてほしい)。自分自身もそこに少しでも参加したいですし、1人でも何かを感じてくれる人がいるなら、自分は常に全力でやっているテニスに取り組みたいという思いはあるので。正直、コロナというのを考えたら、今、スポーツは難しい位置にいるのかなと思います」

Q.好きなことを職業にできて幸せだとおっしゃっていたことがあります。トップ・ジュニアのころ、どんな努力をしてきましたか?

錦織「僕の強く思うようになったのは、12歳で全国大会を優勝してから、自然とプロになるということが頭に出てきて、13歳でアメリカに行った時は、100%プロになるんだと信じていましたね。もちろん、それが悪い方向に行った時は、ほかの職業を考えればいいかなと今は思いますけど。そのころは信じていたので、そこに行くために必要なんだろうなということを、コーチに言われることは全部こなしていたので、辛いことも。なんとなく、上まで行くためには、辛いことも文句言わず、頑張るしかないんだろうなというのが頭の中にあったので、それで頑張れましたね。

最初のきっかけは、(松岡)修造さんの修造チャレンジというところで、世界に行くということをまずそこで教わって、やっぱり日本にいると日本人としか戦えないし、外国人の方とそもそも会うのも少なくて、試合することもないので。世界を目指すというのは小学生、中学生ではなかなか想像しづらいことだと今でも思いますし、そこを助けてくれたのが修造さんだったり、盛田ファンドの盛田さんだったりで、アメリカに行かせてもらったので、やっぱり経験、いろいろを世界を経験していて良かったなと思います」

Q.年末(12月29日)で32歳になりますが、なんでまだテニスに夢中になれるのでしょうか?

錦織「根っこは、楽しさがまだ衰えてないので。これしかないのかなと思いますけどね。なんとか疲れるはあるけど飽きない。どこかに楽しいというのがあって、そのいいバランスがまだまだ継続されてあるのかなと思います」

Q.世界を目指すジュニアの子たちにメッセージをお願いします。

錦織「やっぱり、とりあえず一生懸命やることしか、この頃考えられることはないので、どうやったらゴールに向かって、一つずつ辿り着けるかとか、このショットを練習してとか、このころは想像しづらいと思うので、今ある練習、試合を楽しんでやること。そういう気持ちは、教わることのできないことなので、テニスに対する、スポーツに対する情熱というのか。なので、自分の背中を見ながらでもいいですし、自分の好きな選手だったり、なかなかこうやって身近で接する機会も少ないので、今でも頑張っているという姿勢を見てもらえたらうれしいなと思います」
編集部おすすめ