中国政府が自国民の海外旅行を解禁したことで、タイの観光事業者は中国人旅行者の増加に期待を寄せる一方、現実には多くの矛盾を抱えている。新型コロナウイルスの水際対策では、タイ保健省疾病管理局(DDC)と民間航空局(CAAT)の方針に食い違いが見られた。

感染状況が悪化している中国から旅行者が入国することを各国は不安視。帰国前検査の義務化を発表した国もある。
 

タイ観光協議会(TCT)によると、インド政府が1月1日から、タイから帰国する入国者に新型コロナウイルスRT-PCR検査を義務化した。検査にかかる費用は、スワンナプーム国際空港で約3000バーツ、一般の医療機関では約2000~5000バーツ。チョンブリー観光協議会のタネット会長代理によると、タイ入国時に必要な健康保険の購入も合わせて、渡航費用が約20%増加。旅行予約の延期やキャンセルが相次ぎ、インド人旅行者は半減したという。
同会長代理は、他国にもインド同様の水際対策が広がれば、タイを訪れる旅行者の障害となると話した。

人気観光地の南部プーケット県でもインド人旅行者は半減。プーケット観光協議会のタネート会長によると、旅行者を対象にRT-PCR検査費用を補助しているが効果は見られず、国際会議や結婚式などを含めたグループツアーは100%キャンセルとなっている。

2022年の外国人観光客数は1181万8727人で、タイ人も含めた観光収入は約1.5兆バーツと予測。最も観光客数が多かった国はマレーシアで、195万1834人。2位がインドで96万5994人、3位がラオスで84万4959人、4位がカンボジアで59万1657人、5位がシンガポールで58万9770人。

2022年の中国人観光客は約27万4000人。中国の海外旅行解禁により、今後3カ月で約30万人、2023年末までに約500万人が入国する見込み。