水沼貴史の欧蹴爛漫041
今冬にドルトムントに加わったハーランド(左)とエムレ・チャン(右) photo/Getty Images
話題沸騰の“ノルウェーの新星” 最大の武器は
水沼貴史です。日本代表のFW南野拓実がリヴァプール、そして2012年からサウサンプトンでプレイしていたDF吉田麻也がサンプドリアへ渡ったことなどが話題となったこの冬の欧州主要リーグの移籍マーケットですが、この他にも強豪クラブによる興味深い補強がありましたね。
そこで今回は、この冬に欧州のメガクラブへ渡った面々のなかから、皆さんにご注目頂きたい選手を私なりにピックアップしました。彼らが移籍先のクラブにどんなプラスアルファをもたらしているか、若しくはもたらしそうかについてお話しします。
まず紹介したいのは、昨年末まで南野と同じくRBザルツブルクに在籍し、今年1月にドルトムントへ移籍したFWアーリング・ハーランド(19歳/ノルウェー代表)です。ブンデスリーガ第18節のアウクスブルク戦では途中出場からチームを逆転勝利に導くハットトリック、19節のケルン戦と20節のウニオン・ベルリン戦でもそれぞれ2ゴールと、ドルトムントの一員として衝撃的なデビューを飾った彼。左足での強烈なシュートや圧倒的なスピードなど、彼の魅力はたくさんありますが、なかでもオフ・ザ・ボールの動きは絶品ですね。
U・ベルリン戦の前半18分のゴールシーンをぜひ見て頂きたいのですが、ユリアン・ブラントが右サイドからクロスを入れる直前、ペナルティエリア内にいたハーランドが相手DFマルヴィン・フリードリッヒの目の前から突如彼の背後に回り込み、ワンタッチシュートを打ってみせました。サイドからのクロスやスルーパスが出てくる瞬間に相手DFの背中に隠れ、そこから最終ラインの背後に抜け出すのが抜群にうまいなと感じましたし、これが彼の最大の持ち味であると私は思います。これからドルトムントの試合をご覧になる際は、前線にパスが送られる直前に彼がいかに相手DFの死角に入り、優位なポジションをとっているかにご注目頂きたいですね。彼の駆け引きの上手さが分かると思います。
2018年にルシアン・ファブレ監督が就任してからというもの、“高さ、強さ、速さ”の三拍子揃ったセンターFWがいなかったドルトムント。この冬にビジャレアルへ移籍したパコ・アルカセルは圧倒的なスピードの持ち主ではありませんでしたし、マルコ・ロイスやマリオ・ゲッツェは屈強なゴールゲッターというよりも、相手最終ラインと中盤の間へ下りてパスを散らす“偽9番”タイプのFWです。ハーランドが最前線にどっしり構えるようになってから、サイドからのクロスや最前線へのシンプルなスルーパスが得点に結びつきやすくなったような気がします。
![[水沼貴史]今冬に加わった“期待の新戦力” 注目はこの4人!](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTheWorld%252FTheWorld_272506_0f1e_2.jpg,quality=70,type=jpg)
鮮烈なプレミアデビューを飾ったべルフワイン(左)と、ライプツィヒへ移籍したアンヘリーニョ(右) photo/Getty Images
トッテナム&ライプツィヒにも期待の新戦力が
この冬にPSVからトッテナムへ移籍したステーフェン・ベルフワイン(22歳/オランダ代表)も、私が注目している選手のひとりです。絶対的エースのハリー・ケインが負傷離脱、エリック・ラメラとルーカス・モウラも好不調の波ありという問題を抱えているトッテナムにとって、攻撃的なポジションであればサイドや中央を問わずプレイできるべルフワインの加入は浮上のきっかけとなり得るでしょう。
今月2日のマンチェスター・シティ戦(プレミアリーグ第25節)を見ていて感じたのですが、彼は逆サイドや中央へ自由にポジションチェンジをするので、相手DFにとっては捕まえづらい選手ですね。ひと度サイドでボールを持てば縦に速いドリブルで敵陣の深い位置まで入れますし、鋭いターンでカットインもできる。攻撃面で“できる事が多い選手”という印象を持ちました。ただ、やはり左サイドからの仕掛けが彼が最も得意としているプレイだと思いますので、ソン・フンミンと共にトッテナムのサイド攻撃を牽引してほしいですね。シティ戦で強烈なミドルシュートを突き刺すという、鮮烈なプレミアデビューを飾った彼の今後のプレイぶりに注目です。
最後にご紹介するのは、今シーズン開幕前にPSVからマンチェスター・シティに加わり、この冬にシティからRBライプツィヒへローン移籍したDFアンヘリーニョ(23歳)です。
味方にはサイドのスペースや相手最終ラインの背後へパスを出してもらい、自分はそこへトップスピードで走る。そしてそのままワンタッチでクロスを上げるというのが彼の得意なプレイなのですが、ポゼッションサッカーを志向しているシティは攻撃がスローダウンしやすく、自陣に引きこもる相手をいかに崩すかが攻撃面での課題となります。
必然的にサイドにもあまりスペースがなく、シティのサイドバックには対峙DFを独力で剥がすスキルが求められるのですが、一度スローダウンさせられたところから自らのドリブルで密集地帯を掻い潜れるタイプではない彼にとっては荷が重かったのかもしれませんね。
ただ、先ほどご説明した通り彼はボールホルダーを追い越すランニングであったり、サイドのスペースや最終ラインの背後への侵入は得意なので、奪ったボールを“縦に速く”運ぶのが基本スタイルのライプツィヒのサッカーには合うと思います。左サイドバックの選手層が薄かったライプツィヒにとっても、アンヘリーニョは打ってつけの存在ではないでしょうか。捲土重来のための移籍を決断した彼が、直近のブンデスリーガで失速気味のライプツィヒの命運を握るかもしれません。
冬の移籍期間が終わり、来週にはUEFAチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの決勝ラウンドがスタートします。激闘必至のシーズン後半戦を、ぜひ皆さんも楽しんで下さいね。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。
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