ヴォルフスブルクで暴れたグラフィッチ photo/Getty Images
長谷部も味わったリーグ制覇
2010年からのブンデスリーガは、ドルトムントとバイエルンしか優勝を果たしていない。ドルトムントも2010-11、2011-12シーズンを連覇しただけで、その後はずっとバイエルンが王者だ。
両クラブ以外が優勝したシーズンは、2008-09シーズンまで遡る。このシーズンを制したのは、まだ欧州経験の浅かった長谷部誠も所属していたヴォルフスブルクだ。
原動力となったのは、2007年に獲得していたFWエディン・ジェコとグラフィッチの2人だ。今振り返ると、この2人を引き抜いたヴォルフスブルクの動きは見事だった。
当時のジェコは5大リーグでのプレイ経験がなく、チェコのテプリツェに所属していた。チェコ国内リーグではまずまずの結果を残していたが、ヴォルフスブルクはその能力を見逃さず400万ユーロで獲得。
ブラジル人FWのグラフィッチはフランスのル・マンで2006-07シーズンに12ゴールを挙げていたが、当時はまだ一流FWと呼べるほどのインパクトはなかった。しかしヴォルフスブルクはグラフィッチの才能も見抜き、市場閉幕間際に750万ユーロで獲得。つまりジェコとグラフィッチの獲得には合計1150万ユーロしかかかっていないことになる。
翌年にはジェコと同じボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFズヴェズダン・ミシモビッチを獲得し、これで攻撃陣は完成。ジェコは移籍初年度が8ゴール、グラフィッチは11ゴールと注目するような成績ではなかったが、2年目となった2008-09シーズンはジェコが26ゴール、グラフィッチは28ゴールと大爆発。
前年の2007-08シーズンは5位で終わっていたため、サポーターの多くはリーグ制覇を予想していなかっただろう。2007-08シーズンはバイエルンがリーグを制していたが、連覇の夢をジェコ&グラフィッチで見事に潰してみせたのだ。
最近は2トップにこだわるチームも少なくなっているが、21世紀に入ってからのブンデスリーガではジェコ&グラフィッチのコンビも最強に近い2トップだったと言える。今のバイエルンから王座を奪い取るには、2人で54ゴールを奪ってしまったジェコ&グラフィッチのような強烈な存在が必要なのだろう。