3年目を迎えて、鳥栖との開幕戦に先発し、さっそく今季初得点をマーク。第3節・川崎戦でも落ち着いたフィニッシュでゴールを奪い、第5節・福岡戦では難易度の高いラストパスを供給してアシストを記録している。
U-22代表にも選出され、欧州遠征でドイツ、ベルギーと対戦して帰ってきた。現在進行形で成長を続ける平岡大陽は、いまなにを考え、さらにはなにを見据えてプレイしているのだろうか(2023年4月6日取材)。
中学生のころは145cmあったかどうか
湘南でスタメンをつかみかけている平岡 photo/Getty Images
-プロ入り後の2年間で得たもの、掴んだものから教えてください。
「いつもいっぱいいっぱいで、やっていることが正解なのか、未来につながっているのか、いい影響を及ぼしているのか不安なときもありました。右も左も分からなかった1年目も、ちょっとわかってきた2年目も、それよりも少しわかってきた3年目もまだまだ甘いところがあって、トライアンドエラーを繰り返しています。ただ、それが次へ進むことにつながってきました。確実に階段を登ってきているなと思っています」
-左のインサイドハーフを務めていますが、意識していることは?
「自分が結果を残すのも大切ですが、チームのなかで求められていることを最低限出さないといけない。
-現在のプレイスタイルはどのように構築されてきたものなのでしょうか?
「僕は中学生のころメッチャ小さかったんです。145センチなかったかな。だからこそ、一対一の守備練習とかで一回も手を抜いたことがない。変な真面目さがあって、『絶対にこのうまい相手に食いついてやろう』というこだわりを持ってやってきました。人に認められたことはなかったですが、なんとなく守備は悪くないなと思っていたんです。それが、高2の冬に湘南のスカウトである牛島真諭さんに声かけられたときに『守備がいい』と言われました。それ以外にも自分の良さはありましたが、積み上げてきたものがカタチになった瞬間でした。それから意識するようになり、さらに増していきました」
-左足でのボールタッチもすごく自然で好印象があります。
「すごく嬉しいですね。父親に『左足も使え』と言われたんです。だから、意識して練習していました。
「マジかって感じでした」U-22で感じた世界のカベ
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第1節の鳥栖戦でいきなり今季初ゴールをマーク photo/Getty Images
-U-22代表でドイツ、ベルギーと戦いましたが、どのような印象を受けましたか?
「実力不足を痛感しました。まだまだ果てしない……と思いました。いまの段階では、たぶん、向こうの選手に胸を張って勝っていると言えるものはなかったです。球際にしても、日本やったら勝てているところを勝てなかったり、パスも縦へのスピード感が違ったり、強度や体力も足りていなかった。メンタリティもまだ足りてない。
-高くて厚いカベがあるなという感じですか?
「海外に行きたいって思うよりは、このままでは行けないと思いました。慣れればというのはあると思いますが、それを抜きにしたらちょっとまずいなと。ただ、兄と話したときに『全然やったわ、遠かったわ』と伝えたら、『そうか。でも、案外近かったりするかもな』と言われました。一皮むけることで、遠くに見えていたことが近く感じることもあるので、そういうこともあるのかなと思いながらやっていきます」
-いま経験できたのは良かったのではないですか?
「間違いなく良かったです。頭のなかで整理するのも難しいですけど、自分のなかで砕いて次につなげないといけない。感じたままで終わったら、なにも生まれないです。感じたことを次にどう生かすか、具体的には難しいですが、そういう作業をしていかないとどんどん差をつけられていきます。経験を生かすも殺すも自分次第です。誤解してほしくないのは、僕がいまJリーグでなにかを残しているかと言ったら、なにも残してないです。Jリーグでもまだまだのところ、海外の選手と戦うことで種類の違う危機感が芽生えました」
-普段から見ている海外のリーグはありますか?
「 アトレティコ・マドリードが[3-5-2]をやっていたときにマルコス・ジョレンテがインサイドハーフをやっていたのですが、そのときは好きで参考にしていましたね。
-川崎戦で決めたゴールは落ち着いていたし、ポジショニングも良かったのでは?
「落ち着いているように見えて、いっぱいいっぱいだったんです。あのときは、前日にアーセナルがコーナーのこぼれをニアの上に決めたのを見ていました。なんでこんなにピタッと止められて、強いインパクトができるのかなと考えたら、ボールしか見ていないような気がしたんです。まわりの選手は関係なく、オレはこのボールをここに止めて蹴るんやみたいな意志が見えたんです。これ、一回やってみようと思っていたら、翌日の試合でホンマにその状況が来て、そのときにアーセナルのプレイが思い浮かんだわけではないですが、頭の片隅で働いて『ボールだけ見たろ』と思ってシュートしました。相手をまったく見てないんですよ。それがよかったです」
-今季、これぐらい決めたいとイメージしている数字はありますか?
「シーズン前に、知り合いとJリーグでゴールとアシストを合わせて7はいきたいねと話したので、そこはなんとなく意識しています。いまJリーグで2得点1アシストなので、超えられたらいいなという希望です。去年が0得点0アシストだったので、7は絶対にムリだなと思っていました。
-数年後、こういう選手になっていたいという将来像はありますか?
「いまはないですね。長期の目標を持つと、しんどい。高校まではW杯に出たいなと思っていましたが、いまそれを見据えてしまうとしんどいじゃないですか。それよりも、一日一日の積み重ねです。ここ最近は結果を残せていますが、まだまだ。でも、よくやっているなとも思います。一日一日に必死なのは今でも同じで、気が付いたらここまできた感じです。3年後にどうなっているか……。ビッグになっているかもしれないし、サッカーを辞めているかもしれない。ひとつ言えるのは、振り返ったときにやってきて良かったと思えるキャリア、誇れるようなキャリアになっていればいいなと思います。だから、『自分なんかダメだ』と思っている高校生に言いたいです。『やることをやっていれば、ワンチャンあるよ』と。
何事にも真面目に取り組んできた結果、現在がある。プロ入り3年目の20歳にして、自身のことをこう認識している。おそらく、この性格は今後も変わらず、平岡大陽はこれからも真面目に、真摯にレベルアップに努めるだろう。そうなると、その先にどんな将来が待ち受けているのか。
A代表に関しては「テレビのなかのもの」と語り、パリ五輪は「頭の片隅にちょっとあるぐらい」だという。現在地からそこまでの距離がわかっているからこその言葉だろう。この差をいかに縮めていくか、階段をいかに登っていくか、成長を見届けたい若者である。
インタビュー・文/飯塚 健司
電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)280号、4月15日配信の記事より転載