発達障害の診断基準のひとつとして主力にされている「知能検査」ですが、知能検査をすることでおおよその知能指数(IQ)が分かります。



IQの数値によって知的障害(精神遅滞)の有無を判断したり、小学校入学時に特別支援学級への在籍が必要なのか否かなどを審議するため、発達障害やグレーゾーンの子どもを育てる親としては知能検査の内容はとても興味深いもの。



そして、知能検査の中にはさまざまな種類が存在していることをご存知でしょうか?
我が家の長男は5歳のときに「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」の診断を受けていますが、その際に実施されたのは「田中ビネー式知能検査Ⅴ」という検査でした。



しかし、小学校入学後に行なった検査は「WISC-IV知能検査」。



今回の記事では、知能検査「田中ビネー式」と「WISC-IV」には一体どのような差があるのか?また、発達障害を抱える子どもたちのIQはどれくらいなのか?ということについてお伝えしていこうと思います。



■発達障害やグレーゾーンの子どもたちのIQってどれくらい?



知能検査によって知能指数であるIQの数値が分かりますが、そもそも発達障害やグレーゾーンの子どものIQはどれくらいなのでしょうか?



IQの平均値は100とされていて、85~115の間に約68%の人が収まり、70~130の間に約95%の人が収まります。(※1)



発達障害を抱えている子どもの中には、平均値よりも高いIQを持っているケースも見られるため「IQが低い=発達障害」と一概にいえるわけではありません。



しかし、一般的に見て「IQ69以下」(※2)であれば知的障害があると判断されることが多く、知的障害を持っていない発達障害児やグレーゾーンの子どもの場合は「IQ70~79」である場合も少なくありません。



後にご紹介する「WISC-IV」知能検査では、ちょうど平均的な結果がIQ100になるように問題が構成されていて、50%の子どもがIQ90~109の間に入ります。



知的障害と判断されるIQ69以下の子どもの割合は2.2%、知的障害はないけれど「発達になんらかの問題を抱えている」と考えられているIQ70~79の子どもの割合は全体の6.7%。
知能検査の合計得点によって、以下のように知能レベルが分かれています。



IQ130以上は「非常に高い」、120~129は「高い」、110~119は「平均の上」、90~109は「平均」、80~89は「平均の下」、70~79は「低い(境界域)」、69以下は「非常に低い」と分類されています。(※2)



70~79のIQ数値には「境界域」とあるように、この辺りのIQ数値である子どもたちには発達障害が確認されることも多く、発達障害と診断はされなくても「なんらかの問題を抱えている」と考えられる言動が目立つこともあります。



■田中ビネー式とWISC-IVの違いは?



我が家の長男が保育園の年長時に行なった知能検査は、「田中ビネー式」でした。



この発達検査では「動物の絵を見て何かを当てる」「鉛筆を使って三角や四角を描く」「お手本の図形を見て同じように組み立てる」「間違い探し」などといった問題内容がほとんどで、検査時間は長かったものの(約1時間)、そこまでの難易度を感じることはありませんでした。



傍から見てあまり難しそうに見えなかった田中ビネー式の知能検査ですが、それでも長男は「IQ70」台という「発達になんらかの問題を抱えている」という数値結果に。



一方、小学1年生の秋に受けた知能検査WISC-IVでは、あまりの難易度の違いに親はびっくり!



問題内容は、口頭での算数問題(車が7台ありました。そこへ3台増え、次に5台減りました。今は何台残っていますか?など)が多く、「水曜日の次は何曜日ですか?」などの質問から、「感謝とはどういう意味ですか?」などといった、紙に書かれた言葉の意味を説明するという、小学1年生にはとても無理と思えるような問題も多く出されていました。



2種類の知能検査を見てきた私ですが、両者の違いは歴然!



もちろん、検査そのものが違うので問題が異なるのは当然です。それとともに、「IQの算出方法の違い」も影響していると思われます。『発達障害のアセスメントに用いる発達検査・知能検査( https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2016/007506/022/0754-0757.pdf )』(瀬尾 亜希子)によると、「田中ビネー知能検査ⅤにおけるIQ値は発達の割合の目安であり、WISC-ⅣにおけるIQ値は同じ年齢の子どもの集団における位置を示している」としています。



■「田中ビネー式」でも「WISC-IV」でも結果はほとんど同じに



田中ビネー式とWISC-IVという2種類の知能検査を行なった息子ですが、問題内容が明らかに異なっていたにも関わらず、検査結果はほぼ同じに。



上述の『発達障害のアセスメントに用いる発達検査・知能検査』によると、「WISC-Ⅲの平均IQ値が100.1であったのに対し、田中ビネー知能検査の平均IQ値は111.7であった」とあるように、田中ビネー式の方が若干高く出るものの、ほとんど差はないようです。



※しかし、そもそもIQの算出方法が異なるため、単純比較はできません。



知能検査を受けて子どもの知能指数を知るためには、医療機関や専門機関への受診が欠かせません。



本来であれば「子どもと臨床心理士」の2人(もしくは、子ども1人と臨床心理士2人など)で別室にて行うのが最良とされていますが、我が家の長男は母と離れられず、筆者も同席して行いました。



知能検査ということで気負いしてしまうこともあると思いますが、子どもの進路決定にも関わる大切な検査ですので、できる限り子どもの気持ちに沿って進められるといいですね。



また様々な知能検査があります。算出方法や評価の仕方など、専門家からしっかり説明を聞いて、冷静に検査結果と向き合えると良いでしょう。



【参考】
(※1)『知能指数( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A5%E8%83%BD%E6%8C%87%E6%95%B0 )』ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典
(※2)『指導に活かす発達の評価 WISC-Ⅳを中心に(2012セミナー10研修資料)』(講師:大六一志、主催:発達協会)
『発達障害のアセスメントに用いる発達検査・知能検査(第63回日本小児保険協会学術集会 モーニングセミナー2)』瀬尾 亜希子
『WISC™-IV知能検査( https://www.nichibun.co.jp/kensa/detail/wisc4.html )』日本文化科学社



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