ムチャな要求をしてくる人。ちょっとしたことでも文句を言ってくる人。
■事例1)飲食店でおきたクレーマーエピソード
「週末の夕方ということもあり、お店は満席に近い状態でした。」と、当時の状況を語るのは、とある飲食店で、ホールを担当していたAさん。
その日、Aさんは、とあるテーブルでボトルワインのオーダーを受けました。その注文を通した直後、キッチンから別テーブルのお客様のお料理が出来上がったと伝えられ、Aさんは、出来上がった料理を手にホールに出て行ったのです。すると、別テーブルに料理を運ぶAさんを見て、ボトルワインをオーダーしたお客様が激怒したのです。『何してるんだ!すぐにビールをもって来い!!』お客様のあまりの剣幕に、Aさんは思わず身をすくめました。
しかも、注文はボトルワインだったはずなのに、お客様はビールを持ってこないと怒っています。『えっ?ビールって…ワインのオーダーだったはず…』と、一瞬頭が混乱してしまったAさんは、その場ではただ戸惑い、動けなくなってしまいました。すると、その様子を見たお客様は、さらに激怒。周りのテーブルの方にも聞こえるほどの大声でAさんを罵倒し始めたのです。
最終的に、その騒ぎに気付いた店長が出てきて謝罪をしたことで、その場は収まりました。さて、この場合、Aさんには何か激しい落ち度があったのでしょうか?
実は、Aさんがワインのオーダーを受けてから料理を運んだという判断は、決して間違っていたわけではありません。どちらかというと、「他のテーブルよりなにより、自分のオーダーを優先しろ。」というお客様の要望のほうが過剰な要求であり、その後も大声で罵倒し続ける行為はクレーマーそのものといってもよいでしょう。
ただ、ここでAさんは混乱して止まってしまうのではなく、まず「お待たせして申し訳ございません」という一言を口にし、冷静にお客様の注文の再確認を行うことができていれば、お客様も、ここまで怒りを爆発させることは無かったのかもしれません。
■事例2)電話対応でおきたクレーマーエピソード
「電話という、相手の顔が見えない状況で気が大きくなる人もいます。」と語るのは、以前某パソコン機器メーカーに勤務していたというSさんという女性。
ある日のこと。Sさんは、男性客からの、自社製品についての問い合わせ電話に対応しました。男性客曰く、「パソコン本体とモニターを接続したところ、本体は動いているのに、モニターにおかしなメッセージが出て、画面が表示されない。」とのこと。
まずは『商品名をお伺いできますか?』と、冷静に問いかけるSさん。すると男性客は、『えっー…と、あれだよ。〇〇って言うやつ』と、Sさんが勤務する社名を答えてきました。商品名がわからず、メーカー名を答えたのだろうと判断したSさんは、ユーザー登録情報から、この男性客の購入した商品を特定しようとしました。
そこで、『ユーザー登録を確認させて頂きますので、お名前とお電話番号をお伺いできますでしょうか?』と告げると、男性客は、『はっ?そんなの聞いてどうするんだよ!ともかく、この変になってるのをなんとかしてくれよ!』と、こちらの問いには答えてくれようとしません。
それならば、とりあえず症状を確認しようと、『では、画面にはなんと言うメッセージが表示されていますでしょうか?』と問いかけるSさん。すると男性客は、『英語だから読めねーよ!』と一言。Sさんは『そのままアルファベットを読み上げて頂いて、けっこうですよ』と、フォローしますが、男性客は『あぁ、面倒くさい!!見りゃ分かんだろう!』と全く話になりません。しまいには、『もう女じゃ話になんねー!男だせ、男!』と言いたい放題。
結局、根気よくSさんが対応した結果、単にパソコンとディスプレイのケーブルがちゃんと繋がっていなかっただけということがわかったそう。このようにお互いの顔が見えないということで、気が大きくなり、相手を軽視した言葉を投げかけてくる人も、中にはいるようです。
■事例3)コンビニでおきたクレーマーエピソード
警察沙汰になったクレーマーエピソードもあります。2018年11月のこと、福岡県北九州市のコンビニで、顧客が18歳の女性店員に土下座を要求するという事件がありました。事件を起こしたのは30歳の男性。その女性店員に対して、『殺すぞ!』という暴力的な言葉で脅したり、レジにあったトレイを投げつけるといった行為も行ったそうです。結果、その後、男性は強要と威力業務妨害の疑いで逮捕されました。
このような事件へと発展してしまった原因は、男性が『女性店員の態度が気に入らなかったから』。単に『店員の態度が悪かった』という理由で、男性はここまで怒りをあらわにし、結果的に警察が出動するまでの事件へと発展させてしまったのです。
ただ、この件に関しては、本当に女性店員の態度が悪かったとしても、ここまで物事を大きくしてしまう必要性はまったく無く、結果的にその場にいた他の顧客にも迷惑を掛けてしまっています。これは、クレーム行為以外の何ものでもないと言って過言ではないでしょう。
■まとめ
近年は『ストレス社会』のあおりを受けてなのか、このように他人に対して理不尽な文句をつけて騒ぐクレーマーのエピソードを耳にすることが多くなっているように感じます。ここでご紹介したエピソード以外でも、学校やご近所付き合いの中でなど、意外と身近な場面でクレーマーに遭遇したという人も多いのではないでしょうか。
万が一、クレーマーに遭遇してしまった場合は、けっして相手の感情に巻き込まれることなく、できるだけ冷静に対応するように心掛けたほうがよいでしょう。そうすることで、相手の感情の高ぶりを抑えることができるかもしれません。
ただ、もっと気をつけたいのは、自分自身がクレーマーになってしまわないようにすることでしょう。たとえこちらが対価を払っていたにせよ、商品やサービスを提供する人に対して強く出ていいというものではありません。また、通信手段の発達により、顔が見えないやり取りをする機会も増えてきましたが、電話越し・パソコン越しだったとしても、その向こうには実際の人間がいます。
ひとりひとりが、相手に敬意をもって接するということを、心がけていくことで、クレーマーとよばれてしまう人が、ひとりでも減っていくことを願ってやみません。