医療費もさほどかかっていない、住宅取得したわけではないサラリーマンの方は、勤務先で年末調整をしてもらうと確定申告は他人事と思うかもしれません。しかし、確定申告すればオトクになるケースもあるのです。
2019年、2020年度分の確定申告はコロナの影響を考慮し、通常翌年3月15日までのところ4月15日までに申告期限が延長されていました。しかし、今年は通常どおり2月16日から3月15日までとなっています。
残りわずかの申告期限ですが、税金の還付もれがないかチェックしてみましょう。今回は、確定申告すれば取れ戻せるお金についてお伝えします。
■そもそも「確定申告」とは
確定申告とは、前年1月1日から12月31日までの1年間の収入と経費を差し引いて税金を計算し、所得税を「確定」して「申告」することです。自営業やフリーランスで仕事している人は、基本的に毎年必ず行う必要があります。
公務員や会社員など給料をもらう仕事の人は、1月~12月まで会社で「このくらいの所得だったらこれくらいの所得税を納めることになるだろう」という金額を給料から天引きして会社が預かり、年末に生命保険料控除の証明書や家族の扶養状況を会社に提出することで「年末調整」をし、その年の所得税を確定して勤務先が所得税を納税してくれています。
年末調整をして、徴収した税金が多すぎた場合、企業によって12月や1月の給料に返ってくるという流れになっています。そのため、お給料をもらって年末調整をしてもらう働き方をしている人は、会社で税金を確定してもらっているので基本的に確定申告は不要です。
しかし、税金の計算の基礎となる課税所得を低くできる「控除」は、年末調整の資料提出の締切りに間に合わなかった分や、年末調整ではできないものは確定申告しないと税金を取り戻せません。
ケース別にみていきましょう。
■ケース1.勤務先の年末調整書類締切り後に書ける事項が発生した場合
秋頃に勤務先から生命保険の控除証明や家族構成の申告書類の提出を求められます。
- iDeCoの控除証明が届いた(小規模企業共済等掛金控除が受けられる)
※口座開設に時間がかかるため、年末に口座開設できた分の控除を受けずにいる方が多いです。お知らせがきたときには数カ月分年末までにまとめて引き落としになる場合もあるので、申告漏れがないようにしましょう。iDeCoの掛金は全額控除になるので、所得税だけでなく住民税の軽減効果も大きいです。
- 年末に新しく保険加入し、生命保険料控除が1月に届いた(生命保険料控除が受けられる)
- 入籍した(扶養に入れる場合、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられる)
- 生命保険料の控除証明書が締め切り後に届いた、出てきた(生命保険料控除が受けられる)
- 子どもが生まれた(扶養控除)
- 親と同居を始めた、または相当の金額を送金し扶養しはじめた(扶養控除)
■ケース2.確定申告でないと手続きできない3つの控除
勤務先に提出する年末調整の書類に記載欄がない控除は、自分で確定申告する必要があります。「医療費控除、寄付金控除、雑損控除」の3つです。
- 雑損控除…火事や水害などの災害や盗難などにあった場合に受けられる控除
- 医療費控除…自分と家族の医療費を10万円以上支払った場合受けられる控除
※所得が200万円未満の場合、医療費の5%の金額が控除となります。
- 寄附金控除…ふるさと納税など特定の市町村・団体に寄付した場合の控除
なお、ふるさと納税はワンストップ特例を利用した場合、確定申告は不要です。ワンストップ特例を利用した場合でも、医療費控除するために確定申告することになった場合はワンストップ特例は無効になるので、ふるさと納税の分も合わせて確定申告しましょう。
「医療費控除」は勘違いや知られていないことが多いので、少し詳しく説明します。
医療費とは、領収書をもらった金額だけでなく、往復の交通費も加算できます。
また、入院や通院したことで生命保険金を受け取った場合には、その金額分は控除できませんので注意しましょう。
医療費控除で戻ってくる税金はさほど大きな金額でもありません。年収350万円(家族構成等の控除により異なりますがここでは所得税率5%と仮定します)の人が80万円で歯科矯正したケースの場合を計算しましょう。
(80万円-10万円)×5%=3万5000円の所得税が還付され、住民税は7万円軽減
80万円払って還付があると、医療費控除の確定申告をして3万5000円しか戻ってこなかったと嘆くかもしれませんが、住民税も軽減されることも知っておきましょう。
■まとめにかえて
もし確定申告が3月15日に間に合わなかったり、申告していなかった場合は還付する確定申告である還付申告することができます。対象になる年の翌年1月1日から5年間提出することができるので、この5年間漏れがなかったか確認してみましょう。確定申告の時期であることをきっかけに、身の回りのお金ごとを整理してみませんか。
■参考資料
- 国税庁「No.2020 確定申告」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm )
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm )
- 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm )
- 国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm )
- 国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm )
- 国税庁「病院に収容されるためのタクシー代」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/21.htm )
- 国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm )
- 国税庁「No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1126.htm )
- 国税庁「No.2030 還付申告」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm )