■老後2000万円問題を振り返る
東京電力は7月の電気料金を6月分に比べて平均モデルで306円増えることを公表しました(従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月の場合で再生可能エネルギー発電促進賦課金、口座振替割引額、消費税等相当額を含む。2022年5月27日公表)。
食料品や日用品だけでなく、電気料金の値上げも続いており、家計に不安を抱えてしまいますよね。
特に年金生活となれば、なおのこと。
2019年には年金だけでは2000万円不足するという「老後2000万円問題」が話題となりましたが、「3000万円くらいないと安心できない」と考えはじめる方もいるのではないでしょうか。
60代の貯蓄を見れば、貯蓄がゼロの世帯もある一方で、3000万円以上保有している世帯もあります。
老後2000万円問題を改めて確認しながら、60代の貯蓄のリアルをみていきましょう。
■老後2000万円問題とは何だったのか
まずは2019年に話題となった「老後2000万円問題」をおさらいしましょう。

老後2000万円問題とは、夫婦2人で月に5万5000円赤字となり、老後を30年と仮定した場合、約2000万円が不足するという計算です。
ただし、これは2017年の総務省「家計調査」をもとに試算されています。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2021年(令和3年)平均結果の概要」によれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計収支は以下の通り。

出典:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2021年(令和3年)平均結果の概要」
■65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計収支
実収入:23万6576円(うち社会保障給付:21万6519円)
消費支出:22万4436円
- 食料:6万5789円
- 住居:1万6498 円
- 光熱・水道:1万9496円
- 保健医療:1万6163円
- 交通・通信:2万5232円など
非消費支出:3万664円
月の収支:▲1万8525円
2021年の65歳以上・夫婦のみ無職世帯の月の赤字は約2万円です。
実際には、収入も支出もご家庭により差が大きいでしょう。たとえば上記は、年金と考えられる社会保障給付が約21.6万円です。
同様に、たとえば住居費は1万円台となっているため、賃貸であればさらに支出が増えます。
また「老後2000万円問題」には旅行や趣味の費用、リフォーム代、身内との付き合い、介護費用などは入っていません。
実際には2000万円以下で済む人もいれば、2000万円以上必要な方もいるでしょう。
■【60代の貯蓄】3000万円以上もつ世帯はどれくらい?
それでは60代の貯蓄について、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)各種分類別データ」を参考に確認しましょう。

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)各種分類別データ」をもとにLIMO編集部作成
■60代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
- 平均:2427万円
- 中央値:810万円
■60代の貯蓄分布
- 金融資産非保有:19.0%
- 100万円未満:6.4%
- 100~200万円未満:4.8%
- 200~300万円未満:3.4%
- 300~400万円未満:3.3%
- 400~500万円未満:2.6%
- 500~700万円未満:5.9%
- 700~1000万円未満:5.3%
- 1000~1500万円未満:8.4%
- 1500~2000万円未満:6.0%
- 2000~3000万円未満:9.6%
- 3000万円以上:22.8%
- 無回答:2.6%
60代の貯蓄は平均で2427万円となりました。しかしこちらは一部の富裕層に引っ張られています。
中央値では810万円となり、こちらがより実態に近いといえるでしょう。
詳しく分布を見ると、3000万円以上保有しているのは約2割でした。老後2000万円が目安になりつつある中、3000万円あればうらやましいと思う方も多いでしょうが、やはり2割という少数派です。
2000万円以上でみるとおよそ3世帯に1世帯でした。
■「60代」貯蓄保有世帯のみでは、平均が3000万円超に
金融資産保有世帯のみでも確認しましょう。

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)各種分類別データ」をもとにLIMO編集部作成
平均は3014万円と、3000万円を超える結果になりました。中央値もグンと上がり1400万円です。
貯蓄3000万円を保有するのは約3割。2000万円以上で見ると約4割という結果になりました。貯蓄保有世帯のみで見れば、貯蓄2000万円以上ある世帯も珍しくないようです。
■貯蓄3000万円を築くには早めの準備を
貯蓄3000万円をもつ世帯は多くはないものの、一定数いることが分かりました。年代的に若い頃からの貯蓄のほか、退職金や相続資産もあるでしょう。
ただ、今の現役世代が貯蓄3000万円を築くのは簡単ではありません。はじめに確認した通りさまざまなモノの値上げが進んでいますし、平均年収はこの30年間変化していません。
一方で、現代では共働きで世帯年収を上げるご家庭もあります。育児をしながら働くのは大変ですが、共働きをサポートする家電やサービスも増えています。
また貯蓄や運用に関する情報も昔に比べて多く、NISAやiDeCoのように運用益が非課税になる制度も利用できます。
昔のようにお金を使い、貯めることは叶わなくなりましたが、情報収集をして工夫をおこなうことで貯蓄を増やすことは可能でしょう。
将来安心できる貯蓄を築くためにも、早いうちから情報収集をして、コツコツと備えていきましょう。
■参考資料
- 東京電力「2022年7月分電気料金の燃料費調整について」( https://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2022/1663068_8667.html )
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)各種分類別データ」( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/ )
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2021年(令和3年)平均結果の概要」( https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2021.pdf )