もうすぐボーナスシーズンが到来します。この時期になると、自分のキャリアや年収について考える方も増えてきます。
多くの人の憧れである「年収1000万円」ですが、日本にいったいどれくらいいるのでしょうか。
実は年収1000万円でも、「生活が苦しい」という声が聞かれます。主に子育て世帯でこうした発信も多いため、「子どもを育てる東京都の世帯」にもフォーカスを当ててみましょう。
■年収1000万円は日本でどれくらいいるのか
まずは国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」より、日本で年収1000万円の方割合を確認しましょう。

出典:国税庁 「令和2年分 民間給与実態統計調査」
「1000万円超 1500万円以下」を確認すると、全体で3.4%(男性5.2%、女性0.7%)です。さらに年収1000万円以上に広げると、全体で4.6%となりました。これでもかなりの少数派ですね。
こちらは給与所得者の統計なので、個人事業主などは含まれていません。会社員にとって、「年収1000万円」を目指せるのはほんの一握りであることがわかります。
■世帯年収1000万円はどれくらいか
では、「世帯年収」に視点を広げるとどうでしょうか。昨今は共働きが主流となっているので、世帯合計ではハードルが下がると予想できます。
世帯年収については、厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査の概況」を参考にしましょう。

出典:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」
こちらの調査によると、世帯年収1000~1100万円に属する世帯は3.1%であることがわかりました。
さらに「年収1000万円以上」に広げると、その割合は12.1%。世帯でみれば、およそ1割の方が年収1000万円を超えることがわかりました。
「世帯年収」なので、片働きも共働きも含まれます。参考までに、総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)」をみると、二人以上・勤労世帯の「年収1000万~1250万円」の女性の有業率は66.5%です。
世帯年収1000万円の場合、およそ6~7割が共働きで達成しており、片働きは3~4割程度だと考えられます。
■東京の子育て世帯で「年収1000万円」を超える割合
年収1000万円というのは、多くの人の憧れであり、実際に狭き門であることがわかります。
しかし「年収1000万円でも生活は苦しい」という声はあがります。特に東京の子育て世代ではその声が強い傾向にあるため、実情を深掘りしましょう。
■東京の子どもがいる世帯で「年収1000万円以上」の割合
2018年10月31日に公表された、小学生までの子どもを養育する3318世帯と、20歳未満の子どもを養育するひとり親543世帯を合わせた3861世帯(その父母7179人と子ども6762人)に調査した「平成29年度 東京都福祉保健基礎調査『東京の子供と家庭』」より、東京の子育て世帯の世帯年収をみていきます。
世帯(3861世帯)の年間収入
- 収入なし:0.8%
- 100万円未満:1.1%
- 100~200万円未満:3.7%
- 200~300万円未満:5.3%
- 300~400万円未満:7.6%
- 400~500万円未満:9.5%
- 500~600万円未満:13.3%
- 600~800万円未満:20.2%
- 800~1000万円未満:14.1%
- 1000~1200万円未満:10.4%
- 1200~1500万円未満:5.9%
- 1500万円以上:4.9%
- 無回答:3.2%
東京に限れば、年収1000万円を超える世帯は21.2%と約2割になりました。ちなみに最も多い年収帯は「600~800万円未満」です。
同調査の平均年齢は男性40.5歳、女性39.2歳。子どもの人数は2人が44.9%で最も高く、次に1人が41.2%です。
■子育て世帯の悲鳴「年収1000万円でも苦しい」
全国平均に比べ、年収水準の高い東京であっても「生活は苦しい」という声があがります。その主な原因は大きく3つあります。
■1. 税金面
額面が1000万円でも、税金や社会保険料が引かれると手取りはかなり減ります。日本の税制上、給与があがるほどに税率があがります。
年収があがるほどに手取りの伸びは鈍るため、特に年収1000万円を少し超えたラインでは、思った以上に手取り増が実感できません。
また共働きか片働きかでも税負担が変わるので、世帯によって負担が違う点に不満の声があがりやすいのです。
■2. 児童手当
日本には公的補助がいくつかありますが、所得制限とセットになることがほとんどです。所得制限にあたるのが「年収1000万円」付近になることが多く、負担増の原因になります。
その代表格が児童手当。児童手当では、目安年収が960万円を超えると金額が5000円に下がります。
※扶養人数により、目安となる年収は変わります。
税金を納めているにもかかわらず、平等に補助が受けられない現状に対し、不満の声をあげる方も少なくありません。
■3. その他の助成制度
さらに「高等学校等就学支援金制度」や自治体独自の「乳幼児医療費助成制度」でも年収1000万円の付近がラインになることから、「年収1000万円でも生活は苦しい」という声があがります。
「乳幼児医療費助成制度」については、所得制限がない自治体もあります。しかし東京の一部の自治体では所得制限を設けるところもあり、自治体格差を感じる方も多いです。
■「年収1000万円」の実情
年収1000万円の割合や、実情について見ていきました。転職市場では「年収1000万円」に憧れを抱く方も多いですが、実際には所得制限の壁などで苦しい思いをする方も多いです。
年収1000万円の近辺にラインが引かれることが多いため、ここを通過点と考えれば頑張れるかもしれません。しかしそれは、今後も年収があがる見通しのある場合に限られます。
日本ではここ30年ほど賃金が伸び悩んでおり、加えて最近では急激に値上げが加速しています。
こうした現状では、収入アップだけでなく貯蓄をいかに増やすかという視点も重要になります。
預貯金だけではインフレに負けてしまうので、資産運用にもバランスよく振り分けながら、自分の資産を守っていきたいですね。
■参考資料
- 国税庁「令和2年分(2020年)分民間給与実態統計調査」調査結果報( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf )
- 東京都「平成29年度東京都福祉保健基礎調査」( https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/31/13.html )
- 内閣府「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案の概要」( https://www.cao.go.jp/houan/pdf/204/204_2gaiyou.pdf )
- 厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html )