■年収500万円のケースで計算



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ふるさと納税に興味はあるけれど、仕組みがよくわからないのでやったことがない」という人もいるのでは。



今回はそんな方に向けて、ふるさと納税の仕組みをわかりやすく解説します。



また「ふるさと納税をやると節税になる(税金の支払いが少なくなる)」と思っている人の誤解も解いておきましょう。



さらにふるさと納税を行うことで所得税や住民税の金額がどう変わるのか、実際に計算をして説明しますので、自分のケースに照らし合わせてみてください。



■「ふるさと納税」をわかりやすく解説



ふるさと納税とは、読んで字のごとく、ふるさと(自分の生まれ故郷)に納税するということです。



地方で生まれ育ち、進学や就職で都会に移住する人は多いと思います。そうなると、都会は人が多いため税収は多くなり、地方は税収が少なくなってしまいます。



そこで「生まれ育った町に自分の意思で納税できる制度があればいいのでは」といった問題提起から始まったのがふるさと納税です。実際は生まれ故郷に限らず、どこの地域に納税しても構いません。

納税と名前が付いていますが、制度上は地方自治体への「寄附」となります。ふるさと納税は、寄附をすることで税金の控除が受けられる「寄附金控除」の一つです。



本来、今住んでいる自治体に納税すべき所得税・住民税を、ふるさと納税で自分が選んだ自治体に寄附という形で納税していることになるので、納める税金が少なくなるわけではないのです。



大まかに言えば、税金の納付先を振り替えているわけです。そうなると、自ずとふるさと納税の寄附金額の上限は、自分が支払う必要がある税金以内ということになります。



この上限額が次項で説明する「控除上限額」となります。



■【ふるさと納税】税金の控除の仕組み



ふるさと納税で選んだ自治体に寄附をすると、2000円を除いた金額が所得税・住民税の控除という形で返ってきます。つまり、2000円は自己負担となります。



■【控除額の計算】



「ふるさと納税」って本当にオトク?わかりにくい「控除額」の計算を解説

出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」



この寄付金控除を受けるには、原則として確定申告をする必要があります(※)。



確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税から控除され、残りは翌年度分の住民税から控除されます。

※確定申告が不要な給与所得者で、ふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内である場合は、確定申告を行わなくても寄附金控除が受けられる「ふるさと納税ワンストップ特例」が利用できます。この特例を使うと(2000円を除いた額が)全額住民税からの控除となります。

自己負担額の2000円を除いた寄付金の全額が控除されるためには、所得税および住民税から控除できる限度額の目安である「控除上限額」を知っておく必要があります。



控除上限額は年収や家族構成、その年に受ける各種控除の金額によって異なります。



■【控除上限額の目安】



「ふるさと納税」って本当にオトク?わかりにくい「控除額」の計算を解説

出典:総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について



※1 「共働き」は、ふるさと納税を行う方本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケースを指します。
※2 「夫婦」は、ふるさと納税を行う方の配偶者に収入がないケースを指します。
※3 「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」を、「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」を指します。


※4  中学生以下の子供は(控除額に影響がないため)、計算に入れる必要はありません。

上記の表は住宅ローン控除や医療費控除、その他の控除を受けていない給与所得者のケースです。そのため、これらの控除を受けていると、ふるさと納税で控除できる上限額が変わってきます。



特に住宅ローン控除は金額が大きいため、控除額に影響が出る可能性が高いので注意しましょう。



■【ふるさと納税】控除額の計算をしてみよう



控除上限額の範囲内で寄附をすると、2000円の自己負担額を超えた部分の全額が所得税、住民税から控除されます。

たとえば、年収500万円の独身の会社員(住宅ローン控除や医療費控除、その他の控除を受けていない給与所得者)が5万円寄附した場合を見てみましょう。

所得税からの控除額= (寄附金額-2000円)×所得税の税率



※所得税の税率は、令和19年中の寄附までは復興特別所得税の税率を加えます。

(5万円-2000円)×10.21%=4900円



所得税から4900円が控除されます。

住民税からの控除額=寄附金額-2000円-所得税からの控除額

5万円-2000円-4900円=4万3100円



住民税から4万3100円が控除されます。

所得税の控除額はふるさと納税を行った年の所得税から控除(還付)されますが、住民税の控除額は翌年度の住民税から控除(住民税が減額)されます。住民税は前年の収入を元に算出するため、寄附をした次の年となるわけです。



住民税は普通徴収(納税者が自身で納付する方法)の場合は6月頃に納税者本人に納税通知書が届き、特別徴収(事業者が従業員に代わって納税する方法)の場合は5月頃に事業者あてに住民税決定通知書が届きます。

この通知書で控除額を確認することができます。



■ふるさと納税がお得といわれる理由



ふるさと納税は寄附金から2000円を引いた分が所得税・住民税から控除される仕組みであることはお分かりいただけたと思います。



では、何がお得なのかというと、寄附を行うことでその自治体から返戻品がもらえることです。控除上限額までであれば、2000円の自己負担でさまざまな返戻品を受け取ることも可能です。



ただ、こうした返戻品が目的化されてしまい、本来の趣旨とはかけ離れてしまっている状況が問題になっています。



一方で、所得税や住民税の負担が重く、手取りが少ないことを嘆いている人も多いでしょう。せめてふるさと納税をやることで少しでも見返りがあればというのが本音だと思います。



ふるさと納税をはじめるには、各事業者が提供している「ふるさと納税サイト」を使えば簡単にはじめられます。まだ、やってみたことがないという人はこの機会に始めてみてはいかがでしょうか。



■参考資料



  • 総務省「ふるさと納税ポータルサイト」( https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html )
  • 国税庁「復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」( https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/fukko/pdf/02.pdf )
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