夏休みが終わり2学期が始まると、各学年ともに重要単元を学びます。



学習内容が難しくなるだけではなく、中学生は評定にも影響のある定期テストも控えているため「なんとか1学期の点数より良い点数を取ってほしい」と考える保護者の方も少なくないでしょう。



近年、個別指導の塾で「成績保証システム」を導入しているところが出てきています。



「一定の期間内に特定の科目が二十点以上アップしなければ授業料無料保証」などと謳っているケースが多く、授業料返金よりは「規定期間内に目標達成できなければ塾が指定する期間の授業料を無料にする」というのが主流です。



しかし、塾と言っても教育サービス企業であり、会社として利益を出すことも必要です。



一見すると成績保証制度というシステムは保護者には嬉しいですが、本当に経営が成り立つのか疑問を感じる方もいるでしょう。それでは、どういったシステムなのか説明していきます。



塾の成績保証キャンペーン「全額返金します!」は本当?カラクリはあるのか

LIMO編集部作成



■【成績保証制度】成績優秀層への「授業料免除」と真逆の発想



塾で費用が免除となると、塾指定の模試で規定の偏差値をクリアしている、または超難関大学がB判定以上といった成績優秀者を対象とした特待生制度が一般的でした。



進路実績を出してくれる優秀層への免除は、難関学校の合格を勝ち取り進路実績として大々的にアピールできるため、塾にとってメリットになります。



しかし、最近では個別指導塾で「一定期間会に定期テストでの点数がアップしなければ授業料無料にします」とアピールするところが増えています。



食品や電気代などの値上げラッシュが続く中で、教育費の捻出は頭が痛く悩み多い問題ですが、こうした成績保証をしている塾の「結果が出なければ返金される」「手厚いサポートで定期テストの結果が良くなる」というシステムは魅力的であり画期的です。



さらに、これまでの塾の費用免除とは違い、対象となるのが「成績に伸び悩んでいる子に焦点を充てている」という点が斬新といえます。



■返金保証をクリアするには条件がある



とはいえ、塾が掲げる返金保証制度は「どんな子でもどの教科でもOK」というわけではありません。



例えば、2008年から成績保証制度を導入している城南コベッツの「成績保証コース」では、以下のような条件を提示しています。



  • 公立中学の生徒(国私立中または公立中高一貫在籍者は除く)
  • 保証期間は入塾の翌々期まで(第1期4月から7月・第2期8月から11月・第3期12月から3月)
  • 保証対象となる科目を週2回受講すること
  • 講習会を受講すること
  • 遅刻・欠席は月2回までとすること(体調不良による遅刻・欠席を含む。公共交通機関(バスを除く)の遅れは遅延証明書を提出した場合、遅刻とみなさず)
  • 宿題は毎回提出する
  • 指定する教材を購入する
  • 指定する学習量を確保する
  • 定期テストの原本(問題・答案)を毎回持参する

つまり、公立中学の生徒であり、苦手な科目の授業を週2回受けて、遅刻欠席をほぼせずに担当の先生が課す宿題をきっちり勉強し提出し、さらに目標達成に向けて指定された学習量に真面目に取り組んでいる。季節講習会にも出て、毎回定期テストの問題や答案を持ってきて、それでも目標の点数に届かなければ返金しますよ、という制度です。



■努力し続けられるかどうかは本人次第



私立中学も対象にした個別指導塾もありますが、やはり受講回数や欠席遅刻といった条件は課せられており「無条件での成績保証」は行われていません。



返金保証制度が導入されていても、それをクリアする条件は並大抵のことではなく「ここまでやれば確実に成績が伸びる」という勉強量を要求されます。



たしかに、これだけの勉強量を真面目に取り組めば保証期間内に目標をクリアできるでしょう。



しかし、それを乗り越えられるかどうかも本人のやる気次第なため、期間内に達成できない、あるいは宿題を提出できず条件が満たせなかったという事態も起きかねません。



さらに、通常授業と季節講習会は別物であり、夏休み中に受講する場合は「講習会の授業料を支払う」ことになります。たとえ全ての条件をクリアした上で定期テストで目標が達成されなくても、季節講習会の授業が無料になることはありません。



この他にも教材費やテスト代、施設維持費などは対象外です。「成績保証制度があるから家計に安心」とも一概には喜べないのです。



■特待生制度との共通点もある



塾でみられる真逆の戦略、成績保証制度と特待生制度は共通点がないようにみえますが、共通点もあります。



少子化の時代、教育産業も生き残りが激化しています。「成績がイマイチだったけれどこの塾に通ったことで大幅アップした」という実績を生み出すことができ、特待生制度を導入している塾と「塾の宣伝効果になる」という意味で一致しています。



成績保証を導入している塾は目標達成への課題や道筋も明確で、成績不振の子を持つ親にとっては選択しやすいといえるでしょう。



成績が低迷している場合、子ども本人もどこから手をつければいいのか分からないため、塾を利用して「自分に合った学習指導を考えてもらう」ということはプラスになります。



しかし、成績保証制度を導入している塾では成績不振の子が続々と入塾してくるため、担当の先生が常にきめ細かいサポートを継続できるのかを注視することも必要です。



勉強に悩んでいるのは「うちの子だけ」ではないことを念頭に、長期的な視点を持って受験に向けて勉学に励むようにしたいですね。



■参考資料



  • 城南コベッツで業界初のFC教室への成績保証制度を導入( https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201401200219 )
  • 城南コベッツ・成績保証コース( https://www.covez.jp/junior/course/hosho.html )
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