先週の日経平均は「下げ過ぎ」感を修正

 先週末3月27日(金)の日経平均終値は1万9,389円でした。週足ベースで7週ぶりに反発した他、前週末終値(1万6,552円)からの上昇幅も2,837円とかなり大きなものとなっています。


 日本銀行による大量のETF(上場投資信託)買いをはじめ、米国の量的緩和の再開や2兆ドル規模の経済対策成立に向けた動き、東京五輪が中止ではなく延期の方向になったことなどを背景に、これまでの株価急落による「下げ過ぎ(オーバーシュート)」感が修正される動きだったと言えます。


 今週は3月から4月への「月またぎ」、そして新年度相場入りとなりますが、日本株は引き続き反発基調を維持できるかが焦点になります。また、先週の反発によって、株式市場は底入れをし、下落の峠を越えたのでしょうか?


 早速、足元の状況から確認していきます。


■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年3月27日取引終了時点)


日本株はどこまで反発できる?相場ムードを左右する二つの「オーバーシュート」
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きをローソク足でたどってみると、週初の23日(月)が「はらみ足」の陽線で下げ渋り感が出ていた他、翌24日(火)と25日(水)は大きな陽線が「窓」を空けて続き、株価水準を一気に切り上げる勢いが出ていたこと、そして、週末にかけての26日(木)と27日(金)は1万9,000円台を意識したもみ合いによる一服感といった展開だったことが分かります。


 そして、気が付けば25日移動平均線を射程圏内に捉える株価水準となっています。先週末時点の25日移動平均線は1万9,817円ですが、ここを上抜けできれば、2万円台乗せも見えてきます。これまでの株価の下げがキツかっただけに、株価の戻りもある程度大きなものになると想定されますので、その可能性は十分にあります。


 とはいえ、「日経平均がどのくらい戻したのか?」を具体的に見ていくと、株価急落直前(2月20日)の高値である2万3,806円から、下げ止まった3月19日安値の1万6,358円までの下げ幅(7,448円)に対する先週末時点での上昇幅(3,031円)は、下げ幅の約40%戻しに相当します。確かに、先週は不安を後退させる材料が次々と登場しましたが、これにより劇的に状況が大きく改善する見通しが立ったわけではないため、上昇の勢いが止まってしまう展開も考えておく必要がありそうです。


 実際に、先週末にかけては1万9,000円を挟んだもみ合いとなりましたが、ちょうど下げ幅の38.2%戻しである1万9,203円あたりで様子をうかがっていると見ることもできますので、この先もさらに株価の戻りを試せるかどうかはいわゆる「半値戻し」にあたる2万82円を超えられるかがポイントになります。


短期トレンド:上方向の意識強まる。30日(月)の値動きが重要に

 同様に、最近の値動きを平均足とMACDの組み合わせで短期のトレンドを捉えてみます(下の図2)。


■(図2)日経平均(日足)の平均足とMACD(2020年3月27日取引終了時点)


日本株はどこまで反発できる?相場ムードを左右する二つの「オーバーシュート」
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 平均足が24日(火)に陽転し、翌25日(水)にはMACDがシグナルを上抜けるクロスが出現しているため、上方向への意識を強めていることが分かります。


 となると、「今週も株価の戻りを試す展開になるのでは?」というシナリオが描けるのですが、注意したいのが、先週末の先物取引の終値が大阪取引所で1万8,550円、CME(シカゴ)で1万8,565円と下落している点です。


 先週末27日(金)時点の平均足の始値が1万8,521円、終値が1万9,158円ですので、今週30日(月)の平均足の始値は1万8,839円となります。もし、30日(月)の四本値(始値・高値・安値・終値)の平均がこの1万8,839円以上にならないと、平均足が陰線となってしまいますので、週初の買いの強さが試されることになります。ここを無事に乗り切れば、あらためて戻りを試す展開への期待が高まることになりそうです。


中長期の株価メド:基本の想定レンジは1万8,525~2万786円

 続いて、週足チャートで中長期の株価メドについても見ていきます。


■(図3)日経平均(週足)の動き(2020年3月27日取引終了時点)


日本株はどこまで反発できる?相場ムードを左右する二つの「オーバーシュート」
出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3に描かれているのは、2016年6月24日週の安値1万4,864円から2018年10月5日週の高値2万4,448円までの上昇幅に対するフィボナッチ・リトレースメントの押し目ラインです。

最近までの株価急落によって、76.4%押し(1万7,125円)割れの水準まで一気に下落した後、先週の値動きで50%押し(1万9,656円)あたりまで戻してきたというのが現在の状況です。


 チャートを過去にさかのぼると、値動きがまとまっている箇所が見られます。具体的には、2017年から2018年にかけての38.2%押し(2万786円)~61.8%押し(1万8,525円)の範囲、もうひとつは、2018年から2019年半ばにかけての23.6%押し(2万2,186円)~50%押し(1万9,656円)の範囲です。


 そのため、今後の相場は50%押しを中心とした38.2%押し~61.8%押しの範囲内が基本の想定レンジとなり、事態が改善すれば上方向の23.6%押し、反対に悪化すれば再び76.4%押しまで動くというのがざっくりとした目安になります。


 先週の日経平均は、株価の下げ過ぎによる「オーバーシュート」が修正されるような格好で上昇しましたが、肝心の新型コロナウイルスについては世界的な拡大傾向が続いており、国内でも海外への渡航自粛や、首都圏住民に対する週末の外出自粛が要請された他、非常事態宣言への警戒など、こちらは感染拡大という「オーバーシュート」の懸念が高まっている状況です。


 また、今週は国内の日銀短観や中国のPMI(購買担当者景気指数)、米国ではISM景況感指数や雇用統計など多くの経済指標が予定されています。

新型コロナによる実体経済への影響度を探る相場地合いの中で、株価は戻り基調を継続できるのか、それとも反対に再び下落に向かっていくのか、ふたつの「オーバーシュート」の行方が相場のムードを左右することになりそうです。


(土信田 雅之)