「純金積立」と「プラチナ積立」とは?

 以下の通り、「純金積立」と「プラチナ積立」は、対象物(貴金属現物)と手段(積立て)の掛け合わせで存在しています。単純な図式であるため、名前がカタカナやアルファベット羅列の金融商品に比べると、「何をどのようにして」運用しているのかが明確です。


図:対象物×手段→投資手段


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

 本レポートの目的は、似て非なるこれらの二つの投資手段を比較することにあります。

どちらが優位か?というよりは、おのおのがどのような性質を持っているのか?を議論します。


「貴金属の積立に興味はある。しかし、金(ゴールド)とプラチナ、どちらがよいかわからない」という方には特に、参考になると思います。ぜひ最後まで、お読みください。


クイズ:30年後の資産はいくら?

 先に「積立て」について述べます。例えば、Aという対象物が以下の価格推移を演じたとします。30年間、毎月1万円、Aに積立投資をした場合、資産(評価損益+投資金)はいくらになるでしょうか?


図:30年後の資産はいくら? 単位:円


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

 選択肢は次の三つです。

(1)497万円、(2)397万円、(3)297万円。月々1万円、投資をしますので×30年(360カ月)で、投資金は360万円です。


積立収益増=価格下落で数量増×最終価格反発

 答えは497万円です。投資金は合計360万円でしたので、資産は1.38倍(38%増)になりました。(手数料考慮後)


図:シミュレーションの結果(1)資産の額と投資金 単位:百万円


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

 スタートした時の価格が5,000円で、取引を終えた時の価格が約2,100円でしたので、価格は半値以下になりました。一時90%以上、下落する場面もありました。しかしなぜ、38%もの収益を上げることができたのでしょうか。


 積立て投資の損益は、「保有数量×最終価格」で計算します。つまり、いくら最終価格が低くても、保有数量が多ければ利益が出る場合があるのです。では、保有数量はどのような時に増えやすいのでしょうか。


 保有数量は「価格下落時」に増える傾向があります。例えば、1万円を投資するとして、その時の貴金属価格が1万円の場合、購入できる量は1グラムです。5,000円の場合であれば2グラムです。

投資金の額が変わらなければ、価格が半値になれば購入できる量は2倍になるのです。


 また、「価格下落」によって効率的に増えた保有数量を、効率よく収益化するためには、取引終了前に価格が一定程度反発することが必要です。先ほどのシミュレーションで、仮に20年目で取引を終えてしまった場合、損をします。損が発生するのは、価格が一定程度反発する前に取引を終えてしまったためです。


 上記より、積立て投資を効率化させるための必須条件は、(1)価格下落・低迷を利用して保有数量を増やすこと(2)取引終了前に価格が一定程度反発すること、と言えます。


図:シミュレーションの結果(2)資産の額と保有数量


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

「純金積立」は超長期視点で価格反発を享受

 先ほど、(1)価格下落・低迷を利用して保有数量を増やすこと(2)取引終了前に価格が一定程度反発すること、の二つが、積立投資を効率化させる必須条件だと述べました。では、これらの必須条件を、金(ゴールド)は満たすことができるのでしょうか。


 以下は、7つのテーマがもたらす金(ゴールド)市場への影響を、図示したものです。短中期的に「有事ムード」「代替資産」「代替通貨」が、中長期的に「中央銀行」「中国・インドの宝飾需要」「鉱山会社」が、超長期的には「見えないリスク」が、金(ゴールド)市場に影響を与えていると、考えられます。


図:金(ゴールド)市場のテーマ(筆者イメージ)


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

 超長期以外の6つは、絶えず、金(ゴールド)相場を上げたり下げたりしているわけですが、以前の「 金(ゴールド)に「100年越し」の長期上昇要因発生!? 」で述べた通り、超長期的には、西側のパラドックスとハイブリッド戦起因の「見えないリスク」が、金(ゴールド)相場の底値を切り上げる可能性があります。


 超長期的な価格上昇は、積立投資効率化の必須条件「(2)取引終了前に価格が一定程度反発すること」を満たすことに貢献し得ます。また、先述のとおり超長期以外の6つのテーマが価格を上げたり下げたりすることは必須条件「(1)価格下落を利用して保有数量を増やすこと」を満たすことに貢献し得ます。


 上記より、これからの金(ゴールド)は、積立投資になじむ可能性が高いと言えそうです。


「プラチナ積立」も超長期視点で価格反発を享受

 ではプラチナはどうでしょうか。以下のとおり、プラチナ相場は2015年のフォルクスワーゲン問題発覚以降、長期低迷状態にあります。


 同社が違法な装置を使って不正に排ガス浄化テストを潜り抜けていた問題が発覚して以降、ディーゼル車の排ガス浄化装置向けに使われるプラチナの需要が急減する観測が浮上し、上値が重い状態が続いています(リーマンショック後の安値水準(1,000ドル前後)は維持)。


図:NYプラチナ先物(期近 月足) 単位:ドル/トロイオンス


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:ミンカブ・ジ・インフォノイドの資料をもとに筆者作成

 幸か不幸か(これからプラチナ積立を始める人にとっては「幸」だと筆者は考えます)、価格が低迷しているということは、積立投資効率化の必須条件「(1)価格下落・低迷を利用して保有数量を増やすこと」を満たすことに貢献し得ます。


 さらに足元、値位置はゼロ円に程近いため、「シミュレーションの結果(2)資産の額と保有数量」で述べたとおり、保有数量をより効率的に増やしやすい状態にあります。


 また以下の通り、超長期的視点で、プラチナが「水素社会」に貢献し得る需要な存在であることは、積立投資効率化の必須条件「(2)取引終了直前に価格が一定程度反発すること」を満たすことに貢献し得ます。


 上記より、これからのプラチナは、積立投資になじむ可能性が高いと言えそうです。


図:プラチナの「新しい常識」


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

王道の純金・裏道のプラチナ。積立になじむ

 金(ゴールド)とプラチナの市場環境と、積立投資効率化の必須条件をまとめると以下のようになります。金(ゴールド)とプラチナはともに、将来的に、積立投資を効率化させるための二つの必須条件を満たす可能性があると言えるでしょう。


図:金(ゴールド)・プラチナと、積立取引効率化の条件


なぜ金(ゴールド)とプラチナは、積立てになじむのか?
出所:筆者作成

 また、純金積立とプラチナ積立は実物資産への直接的な投資です(星の数ほどある金融商品の中で、これらは実物を購入する行為である「買い物」に最も近いと筆者は考えている)。


 このため、資産の価値がゼロ円になる可能性は、倒産リスクや発行体リスク、償還リスクがある個別株や投資信託、ETFなどに比べれば、非常に低いと言えるでしょう(人類が金(ゴールド)とプラチナに価値はないとみなせば、ゼロになる)。


 この点も、金(ゴールド)、プラチナが超長期を前提に取り組む、積立投資になじむ理由の一つです(実物資産ゆえの強み。しかし金利が付かないデメリットもある)。


 これからも、さまざまな不安が存在することで注目を集める可能性がある、きらびやかな金(ゴールド)は積立投資の王道として、まだしばらく、価格が上がらず我慢を強いられても、いつか日の目を見そうなプラチナは積立投資の裏道(王道との対比)として、ともに超長期視点で、投資家の皆さまのポートフォリオを豊かにしてくれると、筆者は考えています。


 超長期を前提に、金(ゴールド)とプラチナの特性を生かしつつ、貴金属の積立投資を資産運用・資産形成のお供に加えてみることをご検討いただいては、いかがでしょうか。


 以前の「 人生のお供に「プラチナ」を。新社会人の皆様へ 」も、合わせてご覧ください。


[参考]積立てができる貴金属関連銘柄(一例)

純金積立

金(プラチナ、銀)


投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド


海外ETF

SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ・ゴールド・トラスト(IAU)


米国株

バリック・ゴールド(GOLD)
アングロゴールド・アシャンティ(AU)
アグニコ・イーグル・マインズ(AEM)


(吉田 哲)