先週の日本株は週前半に押し目(上昇トレンドにおける一時的な下落)を付けた後、力強く反転上昇。天井圏から一直線で急落するのではないかという不安を払拭(ふっしょく)しました。


 日経平均株価(225種)の30日(金)の終値は3万3,189円。先々週(6月19~23日)の前週末比924円安の大幅下落を跳ね返し、前週末比1.2%上昇の407円高で取引を終了しました。


 上昇を支えたのは、日本の内部要因というより、高金利が続いても堅調を維持する米国経済への期待感でした。


 外国為替市場でも先週は1ドル=143円半ばから一時145円台に達する円安が進行。


 海運株、輸送用機器(自動車)、鉄鋼株など、米国など海外で稼ぐ景気敏感株の上昇が相場のけん引役になりました。


 米国では、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が30日、前週末比2.35%高と大幅に上昇。時価総額が終値ベースで初めて3兆ドル(約434兆円)を超えた アップル(AAPL) や銀行株の上昇が貢献しました。


 30日(金)夜間の日経平均先物市場が大きく上昇しているため、7月に入った今週3日(月)の日経平均は大幅反発し、終値は前週末終値比で564円高の3万3,753円でした。約33年ぶりの水準に達し、バブル経済崩壊後の終値最高値を更新しました。


 この日、東京証券取引所の取引開始前に発表された6月の日銀短観では、自動車産業を中心に大企業製造業の業況判断が7四半期ぶりに改善。前週末の米国株高にも支えられ、半導体関連など幅広い銘柄に買いが広がりました。


 ただ、30日(金)のニューヨーク外国為替市場で1ドル=144円30銭台を付けた円相場が再び145円台まで下落した場合、政府・日本銀行による為替介入がいつ起こってもおかしくありません。


 その場合、日本株が急落する可能性も高いので注意が必要でしょう。


先週:日本株は押し目をつけて再上昇。米国株への依存度高まる!?

 4月に始まった日本株の上昇相場もすでに3カ月が経過。そろそろ息切れ感が出てもおかしくない時期でした。


 しかし、先週の日経平均は日足チャートの25日移動平均線に下支えされる形できれいに下げ止まって反発。


 最大の要因は27日(火)に発表された米国の複数の景気指標が、予想を大幅に上回る堅調ぶりを示したことです。


 5月の米国新築住宅販売件数は前月比12.2%増、前年同月比では20.0%も増加。


 新築住宅の販売価格の低下や中古住宅の供給不足もあって、米国では高金利でも旺盛な住宅購入需要があることを示しました。


 同日発表の米国調査会社コンファレンス・ボードの6月消費者信頼感指数は、予想を大幅に上回る1年5カ月ぶりの高水準となり、米国GDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費が、物価高の鈍化もあって非常に活発であることも判明しました。


 海外投資家が売買代金の7割を占める日本株もその発表を好感。


 翌28日(水)の日経平均は前日比655円高と急騰し、先々週22日(木)終値から前日27日(火)終値まで4営業日連続の下落で合計1,036円安となっていた下げ幅の一部を取り戻しました。


 28日(水)、ECB(欧州中央銀行)のフォーラムに出席した米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、2023年内に2度の利上げが見込まれると発言。


 7月25日(火)~26日(水)に開催される次回FOMC(連邦公開市場委員会)での0.25%の利上げを否定しませんでした。


 同じ28日にはバイデン政権が中国向けのAI半導体の輸出規制を強化するという報道も流れました。


 しかし、30日(金)発表の5月米国個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)は前年同月比3.8%の上昇と約2年ぶりの低水準となりました。


 FRBが最重要視する、食品とエネルギーを除くコアPCEは前年同期比4.6%の上昇と、予想をわずかに下回りました。


 これを受け、30日の米国株は大幅上昇して、2023年の上半期を終了。S&P500種指数の2023年1~6月の上昇率は15.9%に達しました。


 生成AI(人工知能)の発展・進化に対する期待感で沸くナスダック総合指数の2023年上半期の上昇率は31.7%に到達。


 実に1983年以来、40年ぶりの上半期上昇率を記録しています。


 これまで米国では、景気や雇用に関する強い指標が出ると、FRBのさらなる利上げ懸念で株価が下落する傾向が鮮明でした。


 しかし、先週の米国株は「経済指標が強い→高金利でも景気がいい→株価上昇」というポジティブな反応に変わりつつあります。


 28日(水)には、FRBによる銀行の資本や財務の健全性を審査する2023年のストレステストに、大手銀行23行が合格したことが判明。


 3月にシリコンバレー銀行など米国地銀が相次いで破たんしたように、FRBによる急激な利上げで銀行セクターに金融不安が広がるのではないかという不安感が払しょくされたことも、先週の米国株上昇の一因になりました。


今週:145円突破で為替介入?米国景況指数・雇用統計、ロシア情勢に注目!

 今週の日経平均株価は6月19日(月)の取引時間中につけた3万3,772円の高値を突破し、3万4,000円台の大台を目指す可能性もあります。


 日本では先週、百貨店の 高島屋(8233) が好決算を発表し、30日の終値が前週末比7.3%上昇しましたが、今週も2月決算期企業の第1四半期決算発表があります。


 6日(木)発表では、既存店売上高の増加が続くアパレルの オンワードホールディングス(8016) 、7日(金)発表では中国向け産業用ロボットを手がける 安川電機(6506) などの決算に注目が集まりそうです。


 また、今週も米国の景気関連の経済指標が相次ぎます。


 3日(月)には、ISM(全米供給管理協会)が6月製造業景況指数を発表。


 米国の製造業の景況感は、新規受注の不振などもあって、好不況の境目である50を大幅に下回り、景気後退の懸念材料になってきました。


 製造業の景況感が持ち直せば、米国景気のソフトランディング(軟着陸)論がさらに勢いを増し、株高につながる可能性があります。


 5日(水)には、6月13~14日に利上げ休止を決定した前回FOMCの議事録が発表されます。


 先週、FRBのパウエル議長が2023年内にあと2回の追加利上げが行われる見込みと発言しても、株安にはつながりませんでした。


 そう考えると、たとえ議事録の論調が金融引き締めに積極的なものでも、米国株に対する影響は軽微となる可能性もあります。


 6日(木)にはISMの6月非製造業景況指数が発表されます。


 前回、5月分は予想に反して50.3まで低下し、米国の景気後退懸念に火をつけ、株安につながりました。


 今回は多少、持ち直す予想になっていますが、50を割り込むようだと、米国景気のソフトランディグ論に水を差す恐れがあります。


 7日(金)には6月の米国雇用統計が発表されます。


 非農業部門の新規雇用者数は前月比22.5万人増の予想ですが、2023年に入ってからは大幅な上振れが続いています。


 現在の株式相場は、「雇用が強い→さらなる利上げ懸念で株安」という流れより、「雇用が強い→高金利でも景気後退はないので株高」という流れに傾いています。


 一方、前回5月の失業率は3.7%と予想以上に悪化。今回も失業率がさらに悪化するようだと、景気後退懸念につながりそうです。


 一方、日本国内の強い懸念材料は、1ドル=145円台に一時到達した為替相場です。


 先週28日(水)朝には、1ドル=144円台と約7カ月半ぶりの円安進行を受け、財務省で為替政策の実務を担う神田真人財務官が「行きすぎた動きがあれば適切に対応する」と発言しています。


 2022年9月22日には、円相場が1ドル=145円まで下落したところで24年ぶりとなる第1回目の円買いドル売りの為替介入が行われました。すでにその水準まで円安が進んでいます。昨年はその後、10月下旬に150円台まで下げた後に2度介入が実施されました。


 2022年9月22日(木)の為替介入は株式市場が終了した夕方に行われ、翌営業日に当たる週明け9月26日(月)の日経平均株価は、欧米の大幅利上げ懸念もあって、前週末比722円も急落しています。


 神田財務官や鈴木俊一財務相など政府要人の発言が、2022年9~10月のような「断固たる行動をとる用意がある」といった強いトーンまでエスカレートしたら、為替介入間近ということで、株価の急落に警戒した方が良さそうです。


 また、市場が総楽観に傾いたときは地政学的リスクも心配です。


 先週、民間軍事会社ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏によるロシア政府への反乱は未遂に終わりました。一方、ウクライナ側が反転攻勢によって領土を奪還した上で年末までにロシアと停戦交渉を進める計画があることを米ワシントン・ポストが報じました。


 混乱が残るロシアの国内情勢や、ロシアによるウクライナ侵攻での戦況の変化には引き続き注意が必要かもしれません。


 7月4日(火)は米国市場は独立記念日で休場です。休場明けに米国株が上昇すれば、日本株もツレ高する展開に期待が持てるでしょう。


(トウシル編集チーム)

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