先週の日経平均は3週ぶりに反落し、3万7,000円台を下回る場面もありました。その背景には米トランプ政権の関税政策への警戒感があります。

今週からは日米で多くのイベントを控えているため、市場は方向感を模索する展開が見込まれます。本レポートでは、テクニカル分析と相場材料の視点からポイントや行方を読み解きます。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


 先週末3月28日(金)の日経平均株価は3万7,120円で取引を終えました。


 先週末終値(3万7,677円)からは557円安、週間ベースでは3週ぶりの反落となったわけですが、米トランプ政権の関税政策に振り回される格好で、市場のムードが楽観から警戒へと傾いたこと、そして、週末28日(金)が3月の権利落ち日となり、いわゆる「配当落ち」によって理論上では300円ほど株価が押し下げられたことなどが影響しています。


 そんな中で迎える今週は、「月またぎ」で4月の新年度相場に入ります。


 日米ともに注目イベントを多く控えており、具体的に挙げていくと、米国では、トランプ政権の「相互関税」の中身が発表されるほか、経済指標面では、3月分のISM(米サプライマネジメント協会)景況指数(製造業・非製造業)や雇用統計が公表されます。日本国内でも1日(火)に日本銀行短観が公表されます。


 こうしたイベントの動向を見極めつつ、今週の株式市場は方向感を探って行くことになりますが、足元の相場地合いは不安定さを増しているだけに、上振れと下振れの両方の展開を想定しておく必要がありそうです。


 そこで今回のレポートでは、チャートから読み取れる現在の相場の状況や今週のポイントなどについて考えて行きたいと思います。


日本株は週末に失速、節目の下抜けに要警戒

 まずはいつものように、日足チャートで先週の日本株市場の様子から確認して行きます。


図1 日経平均(日足)の動き(2025年3月28日時点)
[今週の株式市場]4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~
出所:MARKETSPEEDII

 先週の日経平均は、25日移動平均線や3万8,000円の株価水準を意識しながら堅調に推移し、先週末比でプラス圏を維持していたのですが、週末の28日(金)に失速したことで、冒頭でも述べたように週間ベースで下落する展開となりました。


 また、日足チャートから読み取れる情報としては、25日移動平均線が株価の抵抗(レジスタンス)として機能し、今後の株価が「リターン・ムーブ」の格好で下落が意識されやすくなりました。


 そのため次のポイントは、「昨年12月27日の高値から10%安となる3万6,358円を下抜けてしまうのか?」が注目されることになります。


 一般的に、株価が高値から10%ほど下落すると相場が調整局面入りすると言われています。日経平均は3月11日にこの10%安水準を取引時間中に下回る場面がありましたが、完全な下抜けにはならなかったことで本格的な調整局面入りを回避していた経緯があります。


 ただし今回については、29日(土)の朝に取引を終了した日経225先物取引のナイトセッションの終値(3万6,300円)が10%安水準を下回っているため、週初となる31日(月)の取引は高い緊張感に包まれる中で迎えることになります。


 続いてTOPIX(東証株価指数)についても見て行きます。


図2 TOPIX(日足)の動き(2025年3月28日時点)
[今週の株式市場]4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~
出所:MARKETSPEEDII

 TOPIXも週末28日(金)に失速する展開となりましたが、下値が2本の移動平均線(25日と75日)がサポートとして機能した一方、株価の上値については昨年の9月から年末にかけて形成された「上昇ウェッジ」の延長線が抵抗となっていたことがチャートから読み取れます。


 こうした値動きから、先週のTOPIXはそれぞれの線に挟まれた「想定範囲内」での推移だったと言えますが、株価の下振れに警戒すべきである点については日経平均と同じです。


 とりわけ、昨年7月と12月の高値どうしを結んだ「上値ライン」の攻防が注目されます。上の図2を見ても、先ほどの2本の移動平均線と現在の上値ラインがほぼ同じ株価水準に位置していることが分かりますが、この上値ラインはこれまで上値の抵抗として機能してきました。


 つまり、株価が上値ラインを維持できればその役割が抵抗からサポートへと変化することになり、その後の株価反発に対する期待も高まりそうですが、下抜けてしまった場合には株価の下落が加速してしまう可能性があるわけです。


 したがって、今週の日経平均とTOPIXはともに「節目」の下抜けに注意する必要があります。


米国株も25日移動平均線が抵抗になる展開

 次に米国株市場の動きについても見て行きますが、日経平均と同様、主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合指数)は揃って、25日移動平均線が抵抗となる格好で株価の動きが失速していく状況となっています。


図3 米NYダウ(日足)の動き(2025年3月28日時点)
[今週の株式市場]4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~
出所:MARKETSPEEDII

 NYダウについては、12月4日と1月31日の高値を頂点とする「ダブルトップ」が形成されつつあり、カギとなるのは「ネックライン」とされる4万2,000ドルの株価水準への意識です。


 そして、先週末28日(金)のローソク足がこの4万2,000ドルを下抜ける陰線となっていて、チャートから受ける印象はあまり良くありません。早い段階でこのネックラインおよび200日移動平均線を回復できるかが注目されます。


図4 米S&P500(日足)の動き(2025年3月28日時点)
[今週の株式市場]4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~
出所:MARKETSPEEDII

 S&P500についても、週末28日(金)の取引で200日移動平均線を下放れしてしまったほか、5,600pの株価水準を下抜けており、直近の高値(2月19日の6,147p)から10%安の水準(5,532p)も視野に入っているため、この水準の下抜けには注意が必要です。


図5 米ナスダック総合指数(日足)の動き(2025年3月28日時点)
[今週の株式市場]4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~
出所:MARKETSPEEDII

 そして、ナスダック総合指数についてはすでに高値から10%安の水準(1万8,183p)を下回っており、調整入りしている状況となっていますが、先週末28日(金)の株価は直近安値(3月11日の1万7,238p)に迫っており、安値を更新するのかそれとも踏みとどまるのかが注目されます。


 このように、先週の米株市場も日本株と同様に、下値の目安となる株価水準や移動平均線といった「節目」を維持できるのか、それとも下抜けて一段安となってしまうのかが焦点になります。


米トランプ政権の「相互関税」はどこまで警戒すべきか?

 これまで見てきたように、日米の主要株価指数のチャートからは相場の下振れに警戒した方が良さそうな印象となっていますが、ここからは相場の材料面からも考察していきます。


 やはり、今週の最大の注目材料になりそうなのは、4月2日に内容が発表される予定の米トランプ政権による「相互関税」です。


 各種報道やトランプ大統領の発言などからは、関税の対象国が絞られたり、調整や交渉の可能性を示したりするなど、実際には「思ったほど酷いものにならないのではないか?」という見方が優勢と思われます。


 しかし、先週公表された自動車関税が例外なしだったことのインパクトや、これまでにも関税をめぐって話が二転三転してきたこともあり、蓋を開けてみないとわからない状況と不安は拭いきれていません。


 そこで、米トランプ政権の関税政策についてその目的別に整理してみると、大きく3つに分けられます。


 まず、政権が発足して間もなく発動したカナダやメキシコ、中国に対する関税は、「違法薬物や不法移民などへの対策を相手国に求める」という政治的な意味とメッセージがねらいだったと思われます。


 また、先週の自動車関税をはじめ、鉄鋼・アルミ製品に賦課された関税については、「外国企業による米国内での生産を促す」ことがねらいのため、このタイプの関税政策は「アメリカ・ファースト」の面が強いと言えます。妥協の余地が生まれにくく、強硬的になりやすいと考えられます。


 そして、今週発表される相互関税ですが、こちらは相手国との関税率の相違や非関税障壁などを是正することが主な目的とされているため、交渉や妥協の余地は生まれやすく、いわゆる「ディール」が有効になる関税政策かと思われます。


 そのため、公表される相互関税の内容次第では不透明感の後退と材料の出尽くし感で株価が上昇していく可能性が意外に高いかもしれません。


 ただし、ほどほどの内容にしないと、米トランプ政権の思惑とは反対に相手国の報復措置を招いてしまうことも考えられるため、その匙加減が試されることになりそうです。


米国の景況感にも注意

 そして、もうひとつ注目される材料が米国の景況感です。


 3月に入ってからの米国の経済指標の中には、米国景気の減速を匂わせるものが増えてきていますが、これに加えて先ほどまで見てきた米トランプ政権の関税政策の不透明感や、DOGE(政府効率化省)の動きの影響などが加わったことで、市場の一部では、「米国景気が本格的に後退した際に、FRB(米連邦準備理事会)が適切に利下げできないのでは?」というスタグフレーション的な見方も浮上しています。


 実際に、先週発表された米2月個人消費支出(PCE)や米3月ミシガン大学消費者態度指数(確報値)、そして米3月カンファレンスボード消費者信頼感指数などの経済指標は、いずれも弱い結果となり、とりわけ、先行きの見通し項目について、「景気の後退と金利の高止まり」の警戒が強まっています。


 こうした米国の景気後退への警戒感は、景気の影響を受けやすいとされる中小企業の銘柄で構成される株価指標(米ラッセル2000)の動きにも表れています。


図6 米ラッセル2000(日足)の動き
[今週の株式市場]4月相場入りと日米株市場の岐路~米国の関税政策と景況感が焦点~
出所:Bloombergデータを元に作成

 上の図6を見ても分かるように、足元の米ラッセル2000は2,000pから2,100pの範囲内で推移し、2,000p割れが視野に入っている状況となっています。


 そしてチャートを過去に遡ると、米ラッセル2000が2,000pを下回って推移していたのが2022年から2023年の後半にかけての期間にあたるのですが、この期間の米国ではインフレが想定以上に進行し、FRBが急ピッチな利上げで対応し、それに伴う景気後退懸念が燻っていた時期になります。


 つまり、米ラッセル2000の2,000p台割れは景気減速を織り込みに行くことを意味する可能性があるため注意が必要です。


 今週の米国では、米3月ISM景況感指数(製造業と非製造業)や米3月雇用統計が公表されますが、その結果が米国の経済指標の悪化が傾向として続いているのか、それとも一時的だったのかによって今後の株式市場のムードが変化することになるため、4月相場の最初の週は慎重な立ち上がりになりそうです。


(土信田 雅之)

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