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著者の今中 能夫が解説しています。

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「 決算レポート:アルファベット:検索広告、ユーチューブ広告へのAI導入効果に注目 」


毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)


アルファベット


1.アルファベットの2024年12月期4Qは、11.8%増収、30.7%営業増益。

 アルファベットの2024年12月期4Q(2024年10-12月期、以下前4Q)は、売上高964.69億ドル(前年比11.8%増)、営業利益309.72億ドル(同30.7%増)となりました。グーグル・サブスクリプション、プラットフォーム&デバイスの増収率鈍化によって全社増収率が前3Q15.1%増から前4Q11.8%に鈍化しましたが、営業利益は前年比30.7%増と順調に伸びました。これは、グーグル検索他(検索広告)、ユーチューブ広告が順調で、グーグル・クラウドが好調だったためです。


 セグメント別に見ると、グーグル・サービスが売上高840.94億ドル(同10.2%増)、営業利益328.36億ドル(同22.8%増)となり、増収率、増益率ともに前3Qから鈍化しましたが、営業利益は順調に伸びました。アルファベットにとって主力事業であるグーグル検索他が売上高540.34億ドル(同12.5%増)、ユーチューブ広告が104.73億ドル(同13.8%増)と順調に伸びました。グーグル検索他の伸びはクリスマス商戦が貢献しました。広告主としては金融サービス、小売りが伸びました。ユーチューブ広告の伸びには米国大統領選挙が貢献しました。


 グーグル検索、グーグルショッピング、ユーチューブへのAIの導入も効果がありました。「AI Overview」(グーグル検索をしたときに、アルファベット独自の生成AI「Gemini」が検索全体を要約して表現するサービス)をグーグル検索に導入することによって、検索ユーザー、ショッピングユーザーの増加、利便性向上を通じて広告売上高が増加する効果が見られました。

ユーチューブでも、アルファベットの動画生成AIなどを活用したユーチューブ・クリエーターとコンテンツの増加、ユーチューブ広告の効果向上によるユーチューブ広告売上高の増加の効果がありました。


 ただし、グーグル・プレイやグーグルスマホが入るグーグル・サブスクリプション、プラットフォーム&デバイスが116.33億ドル(同7.8%増)と低い伸びに止まったことが、増収率、増益率の鈍化に影響したと思われます。2023年12月期4Qのグーグルスマホの出荷水準が高かったため、その反動があった模様です。


 グーグル・クラウドは、売上高119.55億ドル(前年比30.1%増)、営業利益20.93億ドル(同2.42倍)と好調でした。メルセデス・ベンツ、メルカドリブレ(アルゼンチンの電子商取引会社)、セルヴィエ(フランスの製薬会社)などの新規顧客を獲得しました。AI関連サービスが特に好調で、設備容量を超える需要がありました。前4Qには、第6世代TPU(アルファベットの自社製AI半導体)である「Trillium」の採用が増加しました。「Trillium」は前世代と比較して、トレーニングパフォーマンスが4倍、推論速度が3倍向上しています。


 その他のベッツの営業損失は11.74億ドルと前3Qと同水準でした。その他のベッツの中に自動運転のウェイモ、量子コンピュータの事業が含まれています。


 配賦不能営業費用(本社経費、Alphabet-level activities)は27.83億ドルとなり、前3Qから減少しました。この中にリストラ費用と事務所面積縮小に伴う費用が含まれていますが、これらの費用は減少しつつあります。


表1 アルファベットの業績
決算レポート:アルファベット(検索広告、ユーチューブ広告へのAI導入効果に注目)
株価(GOOGL) 173.86ドル(2025年3月7日)
時価総額 2,125,960百万ドル(2025年3月7日)
発行済株数 12,348百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 12,228百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。

表2 アルファベットのセグメント別業績(四半期)
決算レポート:アルファベット(検索広告、ユーチューブ広告へのAI導入効果に注目)
単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

2.グーグル・クラウドに大型投資を行うため、2025年12月期増益率は鈍化する見通し。

 会社側では2025年12月期1Qと2025年12月期通期の業績ガイダンスを公表していませんが、2025年12月期の全社設備投資計画を約750億ドルとしました。アルファベットの設備投資は2023年12月期323億ドル、2024年12月期525億ドルと増加していますが、業績好調なグーグル・クラウド、特にAI関連事業の拡大のために大型投資を計画しています。主な投資対象はサーバー(AIサーバーを含む)、データセンター、ネットワークです。


 四半期ベースで見ると、設備投資は前3Q131億ドル、前4Q143億ドルと増加しましたが、今1Qは160~180億ドルになる見込みです。


 この大型投資に伴う減価償却費の負担で、2025年12月期は増益率鈍化が予想されます。楽天証券では2025年12月期を売上高3,960億ドル(前年比13.1%増)、営業利益1,320億ドル(同17.4%増)、2026年12月期を売上高4,510億ドル(同13.9%増)、営業利益1,580億ドル(同19.7%増)と予想します。大型投資は2025年12月期の増益率に対して鈍化要因となると思われますが、2026年12月期は増益率は再び上向くと予想します。


 これは、2026年12月期になると、アルファベットが進めている内製AI半導体「TPU」の性能向上によるAI関連サービスのコスト抑制、削減効果や、グーグル検索、ユーチューブにAIを応用することによってユーザーとコンテンツが増加し、広告売上高が増加する効果が期待できると思われるからです。


表3 アルファベットのセグメント別業績(年度)
決算レポート:アルファベット(検索広告、ユーチューブ広告へのAI導入効果に注目)
単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

表4 アルファベットの地域別売上高
決算レポート:アルファベット(検索広告、ユーチューブ広告へのAI導入効果に注目)
単位:100万ドル、%
出所:会社資料より楽天証券作成

3.今後6~12カ月間の目標株価を220ドルとする。中長期で投資妙味を感じる。

 アルファベットの今後6~12カ月間の目標株価を220ドルとします。


 長い目で見て、2026年12月期の楽天証券予想EPS(1株当たり利益)11.39ドルに、2026年12月期楽天証券予想営業利益率19.7%より、想定PEG=1.0倍前後として想定PER=20倍前後を当てはめました。


 アルファベットには、グーグル検索、ユーチューブ広告、グーグル・クラウドだけでなく、ウェイモの自動運転、量子コンピュータといった長期的な成長期待が高い事業、研究開発対象があります。これらも考慮したうえで中長期で投資妙味を感じます。


本レポートに掲載した銘柄アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)


(今中 能夫)

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