日経平均株価はボックスレンジを下放れ弱気ムードが強まりつつあります。今後、トランプ政権の関税政策強化で米国景気の一段の減速が懸念される中、日銀の早期追加利上げ実施なら、一段の円高進行も弱材料となってくるでしょう。

円高進行に備え、その耐久力が強いとみられる銘柄群を紹介していきます。


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日経平均株価はボックスレンジを下放れ、下値リスクを考慮した銘柄選別が重要に

 2024年10月以降、日経平均株価はおおよそ3万8,000~4万円のレンジ相場が続いていましたが、2月末にかけて同レンジ下限を明確に下回ってきています。目先は、3万8,000円レベルが強固な上値抵抗線として意識されることで、上昇期待よりも下落リスクをより考慮すべき局面に入っていると判断すべきでしょう。


 ちなみに、米国市場においても、S&P500種指数は直近高値の2月19日から(調整相場入りとされる)10%以上の下落となっています。


 株式市場下落の主な要因としては、米国の景気減速懸念の強まり、トランプ政権の関税政策に対する不透明感、日本銀行による早期の追加利上げ懸念などが挙げられるでしょう。


 2月後半以降、米国では想定以上に悪化する経済指標が目立ってきています。ミシガン大学が発表した2月の消費者信頼感指数(個人消費の先行指標とされるもの)が前月比では2021年8月以来の大きな下げ幅となったほか、3月速報値も一段の悪化となっています。


 また、2月のサービス業PMI(購買担当者指数)も2年ぶりに節目の50を割り込む水準となっています。2月のISM(米サプライマネジメント協会)製造業景気指数に関しても市場予想を下回り、活動停滞の領域に近づく状況です。


 米国の関税政策に関しては、3月12日に米国の鉄鋼・アルミ輸入への関税を25%とする措置が発動されました。それに対し、カナダやEU(欧州連合)では報復関税を課す旨を発表しています。


 今後は、4月2日以降に発動が予定されている各国との「相互関税」が焦点となります。関税強化策は、米国をはじめとした世界的な景気の悪化、インフレ上昇につながるものとして、今後も株式市場の買い手控え要因となる公算が大きいでしょう。


 一方、日本では、春闘の第1回集計において平均の賃上げ率が5.46%となり、昨年を上回る34年ぶりの水準となっています。賃金と物価の好循環が継続していることから、追加利上げのタイミングは早まるとの見方が強まってきています。


 米国の景気減速・日銀の早期追加利上げ観測はドル安・円高要因となります。ドル/円相場は年初の1ドル=158円台水準から、一時は146円台にまでドル安・円高が進んでいます。米国が関税政策や移民政策を強化するほど、米国景気の先行き懸念は高まることになり、それは一段のドル安要因にもつながっていきます。


 また、欧州の財政拡張策に伴うユーロの上昇は、ユーロ高・ドル安を通じて、ドル安・円高にもつながりやすいでしょう。日本株にとって円高進行は、基本的にネガティブ材料と捉えられるため、一段の円高進行リスクを考慮する場合においては、銘柄選びが重要になってくるといえます。


海外売上比率の低い好業績・高配当利回り銘柄に投資妙味

 海外売上比率が高い輸出関連株にとっては、ドル安・円高は円換算ベースでの売上減少につながるため、収益水準が低下することになります。仮に、円建てで取引を行っていた場合は、現地での価格競争力が低下することによって、販売数量の減少が見込まれることになります。


 また、海外子会社を連結化する際に、基準時の為替レートがドル安・円高となる場合にも、円換算時に収益が目減りすることとなります。さらに現在の環境下では、米国輸出に対する関税の対象になる可能性があるため、輸出関連株はより買い手控えられやすい状況にあると考えられます。


 少なくとも、米国の関税政策の行方が見極められるようになるまで、輸出関連株よりも海外売上比率の低い内需銘柄を選好すべきといえるでしょう。ちなみに、輸出関連株は全般的に新年度の業績見通しが慎重になりやすいとみられ、本決算発表に向けてはガイダンスリスクも高まることになります。


 海外売上比率の低い(円高抵抗力の強い)銘柄は、業種的には、建設、食料品、紙・パルプ、電気・ガス、陸運、倉庫・運輸、情報・通信、小売、銀行、不動産、サービスなどが挙げられます。


 中でも、食料品、紙・パルプ、電気・ガス、小売、外食、専門商社(電子部品など)などでは、原材料や商品を多く輸入している企業も多いとみられ、これらはむしろ円高がメリットとなってくる可能性もあります。ただ、食料品大手企業は輸出販売も多く、円高メリット分は相殺されてしまうケースもあるでしょう。


 また、最近は小売業界などでインバウンド需要が拡大基調となっていますが、円高進行は海外旅行客の日本国内での消費意欲減退につながるため、特に百貨店などではネガティブに捉えられやすくなってしまっています。


 円高抵抗力の強い銘柄として、海外売上比率20%未満の銘柄を対象としました。この中で、時価総額が1,000億円以上あり、今期(2025年3月期決算企業含む)営業増益見込みの銘柄を配当利回りの高い順にランキングしています。最近の全体相場の下落に連れ安する格好から配当利回り水準は総じて高まってきており、投資妙味も強まっていると考えられます。


 なお、トランプ政権の関税策強化に伴う米国景気の悪化観測、日銀の追加利上げなどを考慮すれば、当面は円高基調が続くと考えられるため、2025年3月期配当権利落ち後のタイミングなどでも投資効率は高いとみられます。


円高抵抗力が強いとみられる高配当利回り銘柄

(表)海外売上比率の低い高配当利回り銘柄ランキング


コード 銘柄名 配当利回り
(%) 3月14日
終値(円) 時価総額
(億円) 海外売上
比率(%) 予想営業
増益率(%) 1890 東洋建設 5.99 1,335.0 1,259 14.65 6.5 7148 FPG 5.51 2,365.0 1,999 0.00 10.7 4928 ノエビアホールディングス 5.48 4,200.0 1,434 0.00 0.7 1885 東亜建設工業 5.20 1,365.0 1,200 17.09 11.4 5021 コスモエネルギーホールディングス 4.78 6,678.0 5,900 5.32 3.2 1719 安藤ハザマ 4.68 1,354.0 2,451 7.99 45.2 9107 川崎汽船 4.47 2,170.0 13,870 9.38 25.1 8020 兼松 4.08 2,574.0 2,175 17.66 1.4 8923 トーセイ 3.67 2,396.0 1,166 0.00 11.6 9303 住友倉庫 3.63 2,837.0 2,248 15.15 0.9 7599 IDOM 3.60 1,163.0 1,243 0.67 26.0 9025 鴻池運輸 3.53 2,733.0 1,556 11.80 29.3 9065 山九 3.48 6,082.0 3,562 17.51 16.4 9143 SGホールディングス 3.27 1,595.0 10,214 11.86 0.9 9301 三菱倉庫 3.25 985.9 3,827 17.46 5.6 注:配当利回り、株価、時価総額、海外売上比率は楽天証券スーパースクリーナー
予想営業増益率は会社計画

(スクリーニング要件)


  • 時価総額が1,000億円以上
  • 海外売上比率が20%未満
  • 今期(3月期本決算は2025年3月期)営業増益予想
  • 前期実績営業利益が100億円以上
  • 東洋建設(1890・東証プライム)

     国内海洋土木を主体とする建設会社です。海外工事はフィリピンに強みを持っています。 インフロニア・ホールディングス(5076) の持分法適用会社ですが、任天堂創業家の資産運用会社も大株主となっています。受注は国内建築事業が好調に推移し、2024年12月末の繰越受注高は過去10年間で最も高い水準となっているようです。


     配当方針としては、2026年3月期までに配当性向100%、下限50円としています。

    中期的には、洋上風力事業の海上工事分野でトップクラスシェアを獲得し、収益の柱としていくことを目標ともしています。


    FPG(7148・東証プライム)

     オペレーティング・リースを手掛けるリースファンド事業、国内・海外の不動産ファンド事業が主力事業です。リースでは、航空機、コンテナ、船舶などを手掛けています。会社側では、2027年4月1日より原則適用開始となる「リースに関する会計基準」による影響は極めて軽微としています。2025年9月期も2ケタ営業増益を見込むなど、高い業績成長が継続しています。


     また、配当性向は50%を目標としており、収益成長に伴い配当金の水準も年々膨らんでいます。足元では積極的な自社株買いの実施も目立っています。


    ノエビアHD(4928・東証プライム)

     化粧品販売が主力事業です。販売代理店や直営店での対面販売、通信販売で展開し、「なめらか本舗」「ノエビア」「エクセル」「ノブ」などが主要ブランドとなります。「南天のど飴」「眠眠打破」などの医薬品・食料品もドラッグストアを中心に販売しています。化粧品販売の堅調推移や経費削減などによって、2025年9月期も連続増収増益を見込んでいます。


     また、2024年9月期まで13期連続での増配を続けています。化粧品会社の中では、中国依存度が低いことが足元では安心感につながるとみられます。


    東亜建設工業(1885・東証プライム)

     港湾工事を主力とした土木工事が売上の約5割を占める建設会社です。海外工事はODA案件が中心となるようです。

    港湾・海洋土木の分野では国内受注高2位のシェア、冷凍冷蔵倉庫建設では国内トップの実績です。


     国内土木や海外事業における利益率の改善を要因として、2025年3月期営業利益は従来の減益予想から一転、2ケタ増益予想まで大幅上方修正しています。年間配当金も大幅増配となります。なお、2025年3月期、2026年3月期の株主還元策として、配当性向40%以上を目指すとしています。


    コスモエネルギーHD(5021・東証プライム)

     燃料油の国内販売シェアは12%程度と推定される国内石油元売りの大手企業です。現有処理能力は1日当たり40万バレル程度です。アブダビ首長国で石油開発事業なども手掛けるほか、陸上風力発電の国内シェアも第3位の位置づけです。2026年3月期まで3カ年累計の総還元性向を60%以上としており、石油業界の中ではトップクラスの還元姿勢が注目されます。


     また、中期的には、2024年4月に資本業務提携を行った岩谷産業の推進する水素事業の展開において、重要な役割を担っていく可能性なども期待されます。


    安藤ハザマ(1719・東証プライム)

     トンネルやダムなどの大型土木工事に強みを持つ中堅ゼネコンの一角です。現在はリニア工事で多くの実績を上げているとみられます。2025年3月期第3四半期(4-12月期)営業利益は前年同期比93.5%の大幅増益となり、2025年3月期通期では前期比45.2%増見通しにまで上方修正しています。建築工事の採算性向上が上振れの要因となるようです。


     業績の上振れに伴って、年間配当金も増配としていますが、2026年3月期まで総還元性向70%以上を目標としていることで、新年度も高水準の配当が期待されます。


    川崎汽船(9107・東証プライム)

     国内海運大手3社の一角です。海運大手3社のコンテナ船事業が統合した新会社「Ocean Network Express(ONE)」が持分法適用会社で、最近の収益急拡大のけん引役になっています。海運大手の中では相対的に海外売上比率が低くなっています。2025年3月期経常利益はすでに3度の上方修正を行っていますが、ONEの短期運賃上昇効果が大きく寄与する形のようです。


     2025年3月期年間配当金は期初計画の85円から100円に増配されていますが、2026年3月期も100円配当継続の方針となっています。


    兼松(8020・東証プライム)

     総合商社の準大手的な位置づけとなります。ICTソリューション、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空の5セグメントで展開しており、資源権益に投資していないことが特徴です。ICTソリューション事業をはじめ、事業ポートフォリオの主体が国内市場をターゲットにしているため、世界的な景気変動の影響は受けにくいとみられます。


     財務体質の健全性も相対的に高いことから、商社セクター内ではディフェンシブ性が強いと位置付けられます。株主還元策としては、総還元性向30~35%を目標に累進配当を実施しています。


    トーセイ(8923・東証プライム)

     不動産再生事業を柱に、不動産開発、賃貸、コンサル、ホテルなどをバランスよく展開しています。事業エリアは東京圏中心です。2025年11月期は5期連続で営業2ケタ増益見通しになっています。不動産再生事業、開発事業の拡大を見込んでおり、開発事業では大半の物件がすでに売買契約締結済みです。


     配当金も大幅増配計画ですが、会社側では2026年11月期には配当性向を35%にまで引き上げる方針です。

    時価総額1,000億円以上の不動産企業で、5期以上連続で営業2ケタ増見通しとしている企業は同社と 霞ヶ関キャピタル(3498) のみです。


    住友倉庫(9303・東証プライム)

     倉庫を中心として、陸海空分野での一貫した総合的な物流サービスを提供しています。大手倉庫企業の中では、港湾運送分野のウエートが高い点が特徴となります。不動産賃貸業が安定収益源となっていますが、不動産賃貸面積はここ20年間で53%の増加となっています。


     2025年3月期営業利益は小幅増益の予想です。不動産事業の減価償却費増などが重しになりますが、物流事業において貨物の取扱量回復を見込んでいます。年間配当金は100円をミニマムと設定し、DOE(株主資本配当率)3.5~4.0%を目安にするとしています。


    IDOM(7599・東証プライム)

    「ガリバー」ブランドで展開する中古車小売のトップ企業です。小売りモデルへの転換を進め、特に大型店は2027年2月期に100店舗(2024年2月期53店舗)体制を目指しています。小売の販売台数増加や粗利益率上昇で、2025年2月期第3四半期(3~11月)営業利益は過去最高益を更新と、足元の業績は好調に推移しています。


     中期計画では2027年2月期営業利益300億円を目標としており(2025年2月期計画203億円)、目先は高い利益成長の継続が想定されます。なお、配当性向は30%程度を目安としているようです。


    鴻池運輸(9025・東証プライム)

     得意先の工場や構内において、各種の業務を請負う複合ソリューション事業が主軸の物流会社です。ユーザーは鉄鋼業界や食品業界向けが主力となっているようです。また、空港関連業務なども手掛けています。2021年3月期をボトムに営業利益は2割以上の高成長が続き、配当金もそれに伴って増加してきています。


     インド市場の展開にも注力しており、2026年3月期には、新規連結子会社の寄与なども想定されます。2025年3月期決算発表時には新中期計画も発表予定で、株主還元策の強化なども期待できそうです。


    山九(9065・東証プライム)

     港湾倉庫作業や物流業務代行、鉄鋼や化学業界での構内作業といった物流事業、製鉄所やプラントのメンテナンスを行う機工事業が2本柱となります。機工事業をけん引役に2025年3月期上半期は過去最高益を達成、通期計画も上方修正しています。年間配当金も増額され、配当水準も順次切り上がる状況です。


     目先の注目点は、2025年3月期決算発表時点における中期計画の見直し公表となります。ROE(自己資本利益率)10%の蓋然(がいぜん)性を高める施策を示すと公表しており、自社株買い実施計画などが示される可能性は高そうです。


    SGHD(9143・東証プライム)

     宅配便業界第2位の佐川急便が主軸で、倉庫・物流や不動産事業なども手掛けています。2024年7月からC&Fロジホールディングスを連結子会社しているほか、2025年2月には台湾企業のモリソン社の買収を発表しています。


     2025年3月期営業利益は平均単価上昇や新規連結効果などで増益に転じる予想です。3月27日には、2026年3月期を初年度とする新中期計画を公表する予定になっています。焦点となるのは自己株式の取得実施の有無、その規模感となりそうです。また、直近で買収した企業とのシナジーへの期待が高まるかにも注目です。


    三菱倉庫(9301・東証プライム)

     倉庫業界で売上高トップクラスの一角です。物流関連拠点は世界140カ所あります。港湾荷役や陸上運送業務も手掛けるほか、不動産賃貸事業が安定収益源となっています。2025年3月期は4期連続増配計画で、4年間で配当水準は2.7倍となる見通しです。


     2月28日に6年間を対象とする新中期計画を発表、2030年度事業利益は630億円(2024年度見込み225億円)を目指す計画です。配当金はDOE4%以上に向けて増配を継続する計画であるほか、自己株式取得は期間中400億円以上を実施する予定です。


    (佐藤 勝己)

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