米国政府は現在、国防費よりも利払い費の方が多い。これは米国にとって、「帝国の終わり」を意味する。
トランプ関税により、株式先物は暴落し、為替は大きく円高に振れたが、トランプ政権は市場を重視せず、いったんは景気後退も覚悟する姿勢です。
景気後退は米国にとってインフレと金利が低下する唯一の残された選択
連邦政府の利払いは今や1兆ドルを超えており、これは軍事費に費やす額をはるかに上回っている。米国社会はコントロールを完全に失っている。米国債の利払い費は過去最高の1兆1,200億ドルに上り、過去4年間で117%増加した。米国政府は現在、国防費よりも利払い費の方が多いのだ。これは米国にとって、「帝国の終わり」を意味する。
連邦政府の支出(国防費:青と利払い費:赤)

連邦負債の対GDP比

バイデン政権は、年間利払い額が5,170億ドルの連邦予算を引き継ぎ、それを2倍以上の1兆1,000億ドル以上に増額した。米国は利払い費を下げないともうやっていけない。負債と資産を両方膨らませる両建て経済は終焉(しゅうえん)を迎えたのである。
スコット・ベッセント財務長官が「長期金利を下げる」と公言しているのは当然のことで、トランプ政権は現在、米国が破産するのを防ぐために大変な努力をしているのである。
そうはいっても、トランプは今しばらく財政赤字を垂れ流し続けなければならないが、不正費用を支払う代わりに、減税を通じて国民と米国企業に還元する方針だ。その見方が正しければ、トランプは輸入関税をほぼ恒久化し、国税庁を閉鎖する可能性がある。悪質な不正支出を減税に変える。
本日発表されたトランプ関税は市場予想の最悪のシナリオを超えるものであり、逆に言えば、トランプが経済体制を変えようとしていることを明確に示すものであった。
関税の数字は単純に、その国の米国に対する貿易赤字をその国の米国への輸出で割った数字であった。
トランプが関税=「経済独立宣言」を発表した直後から、株式先物は暴落し、為替は大きく円高に振れた。ゴールドは売られておらず、全部売りという状況ではない。
S&P500CFD(日足)

ナスダック100CFD(日足)

日経平均CFD(日足)

ドル/円(日足)

ゴールドCFD(日足)

トランプは、「1789~1913年まで、我々は関税に支えられた国家であり、米国は相対的に見て史上最も裕福であった。そして1913年、人類に知られていない理由で、所得税が制定された」と述べ、相互関税が発表されたことを受けて、「米国史上最大の減税」を行う予定であると述べた。
トランプ政権は関税によって年間6,000億ドル以上の収益を上げようとしていると報じられている。
ビアンコリサーチのジム・ビアンコは「覚えておいてほしいのは、この関税率が維持されると仮定していることだ」と述べ、ピーター・オンジェは「関税は1890年代以来の最高水準に達する可能性がある。1890年代が経済の黄金時代だったことは注目に値する。所得税が導入される前、連邦準備制度が設立される前、そしてディープステートが買収する前の時代だ」とコメントした。
米国の輸入品に対する平均関税率(1909~2024年)

ラトニック商務長官は「トランプは米国に4兆ドル規模の製造業復興をもたらすだろう。
ベッセント財務長官は「株式市場の暴落はMAG7の問題であり、MAGAの問題ではない」と言い放った。金利を引き下げる最も手っ取り早い方法は「不況」である。2025年には9.2兆ドルの米国債が満期を迎える中、借り換えが必要になる。国債の利払い費が軍事費を上回る1兆ドルを超える現状で、この巨大な借り換えの前に金利を引き下げる最も手っ取り早い方法は「不況」である。
ベッセントは「6~12カ月でトランプの経済になる」「市場も経済も中毒になっていた。われわれは政府支出に病みつきになっていた。この先はデトックス(解毒)の期間になる」と市場に対して警鐘を鳴らしていた。
ベッセントが述べている通り、デトックス(解毒)の期間は、株は上がりにくいが金利は景気後退を受けて長期金利を低下させることができるかもしれない。株式相場を下支えするためにトランプ大統領が政策を転換することはあるのかと問われると、ベッセントは株式アナリストらがいう「トランプ・プット」といったものは存在しないと言明した。
昨年の大統領選挙の前にベッセントは「今後数年間で、私たちはある種の大規模な経済再編を経験するだろう。それは新しいブレトンウッズ体制に相当するものだ。今後4年間でそれが起こる可能性は非常に高く、私はそれに参加したいと思っている」と述べていた。
現状のトランプ政権は株式市場など気にしていない。それは明らかだ。「トランプ・プット」は来年の中間選挙が近づかないと期待しにくい。トランプ、ベッセント、パウエルは皆、市場が下落(金利が低下)するのを喜んで受け入れている。景気後退はインフレと金利が低下する唯一の残された選択である。
米10年国債金利(日足)

トランプ政権のアジェンダの背景にあるアイデアの多くは、CEA(大統領経済諮問委員会)委員長に指名されたスティーブン・ミランが2024年11月に公表した論文に基づいている。
元財務省上級顧問のミランは、「持続的なドル過大評価」に起因する経済的不均衡の解消と、国際貿易システム改革に向けロードマップを提示した。
トランプは、政権の4年間で国際金融秩序全体を一変させる可能性が十分あるとはっきり述べており、市場参加者はそれに対応する必要に迫られている。
【金融危機のような不吉なもの、国政選挙のような平凡なもの、ティーパーティーのような些細なもの。きっかけは、これらすべてのシナリオの根底にある基本的なクライシス・ダイナミクスに従って展開する。最初の火種が、不屈の対応とさらなる非常事態の連鎖反応を引き起こす。これらのシナリオの核となる要素(債務、市民社会の崩壊、世界的な混乱)は、細部よりも重要である。もし外国の社会もフォース・ターニングを迎えているとすれば、連鎖反応が加速する可能性がある。国内外において、これらの出来事は、アメリカが必要な行動を怠り、否定し、あるいは遅らせてきた問題領域である、極度に脆弱な地点における市民組織の断裂を反映したものとなるだろう】
『フォース・ターニング 第四の節目』(ウィリアム・ストラウス&ニール・ハウ)
4月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
4月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、愛宕伸康さん(楽天証券経済研究所所長兼チーフエコノミスト)をゲストにお招きして、「物価高騰と日銀の金融政策(利上げは5月に前倒しも?)」「米国の利払いと不景気観測」「トランプとドル安:将来的にはマールアラーゴ合意=ドル切り下げも…」「ゴールドのリバリュー」「日銀の苦悩:金利を引き上げると、円レバレッジのコストが上昇し、円キャリートレードに景響を及ぼし、システムを救済し続けるために円を増刷する必要性が高まり、円安が進み、結果として日本国民のコストが再び高まる」「ドル/円という相場下落リスクのバロメーター」「相場の大転換がやってきた」というテーマで、愛宕さんのホンネを聞いてみました。ぜひ、ご覧ください。




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4月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

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(石原 順)