米の小売価格の高騰を受け、3カ月後はどうなる? 対策は? 個人投資家2,600名のアンケート結果から米の価格高騰による影響を探ります。また、日経平均、為替の見通し結果を基に専門家が解説。
はじめに
今回のアンケート調査は、2025年3月31日(月)から4月2日(水)にかけて実施しました。
あらためて3月の日経平均株価の値動きを振り返ると、月末31日の日経平均は3万5,617円で取引を終えました。前月末の終値(3万7,115円)からは1,538円安、月間ベースでも3カ月連続の下落となっています。
また、月間の相場状況を振り返ると、「月初での軟調な展開から、一時は持ち直す動きを見せるも、月末にかけて再び下落していく」という展開で、前月と似たような値動きとなりました。
日経平均は前月に下回った3万8,000円台の回復が期待され、実際に手が届く場面があったものの、結局は米トランプ政権の関税政策の動向に振り回される相場地合いに加え、米国の経済指標などからも景気減速を示唆するものが増え、市場の一部では、景気の悪化と金利の高止まりが併存するスタグフレーションを警戒する見方も浮上したことで不透明感が強まり、「リターンムーブ」の格好で一段安となっていきました。
このような中で行われた今回のアンケートですが、2,600名を超える個人投資家からの回答を頂きました。
日経平均については、DIの値が大きく後退し、株安を見込む見通しが一段と強まったほか、為替のDIについても、円高見通しが続く結果となり、全体的に相場の先行きに対して不安を抱えている様子がうかがえる印象となりました。
次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し
「不安と警戒感を背景にDIが大幅に低下」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がマイナス45.88、3カ月先はマイナス5.71と、両者ともにマイナスに沈む結果となりました。
前回調査の結果がそれぞれ、マイナス8.11と+11.47だったことを踏まえると、1カ月先のマイナス幅の拡大が際立っているほか、3カ月先もマイナスに転じるなど、日経平均の見通しが大きく悪化している様子が感じ取れます。
実際に、回答の内訳グラフを見ても、弱気派の増加が目立っています。

今回の1カ月先DIにおける弱気派は56.43%と半数以上を占めています。前回の割合(21.63%)からは倍以上に増えた格好です。

3カ月先については、弱気派の割合が前回の24.88%から30.07%に増える一方、強気派が26.98%から24.36%に減少しています。1カ月先と比べると変動は小さいですが、3カ月先のDIがマイナスとなるのは、2023年5月調査以来と、かなり久しぶりになるため、相場の中長期的な見通しについても、慎重姿勢に傾いている印象があります。
また、今回のDIの結果については、アンケートの実施期間(2025年3月31日~4月2日)が、米国の「相互関税」発表直前であったことが影響していると考えられます。市場の不安と警戒感が、結果に反映された面があると思います。
そして、その米相互関税の発表を受けた国内外の株式市場ですが、大きく下落で反応し、日経平均は3万6,000円台割れの水準から3万1,000円台割れのところまで急落しました。米国の主要株価指数(ダウ工業株30種平均・S&P500種指数・ナスダック総合指数)も、直近の最高値から10%安の調整相場入り、もしくは20%安の弱気相場入りのところまで下落していきました。
米相互関税の内容が、想定よりも厳しいものとなったことで、相手国だけでなく、米国自身も景気後退や、インフレの再燃懸念などが一気に高まり、不安や警戒を先取りする格好で売りが増えました。また、強気派のふるい落としや、株価の下落に耐え切れなくなったポジションの投げ売りなども加わって、短期間のうちに一気に株価水準を切り下げた格好です。
このように、4月の新年度相場は、「トランプ関税ショック」で波乱の幕開けになってしまったわけですが、関税の影響が出てくるのはこれからであるほか、その間に政策の修正が行われることも想定されます。株価の下落で先取りした不安が現実のものになるのかは、これから「答え合わせ」をしていくことになります。
ちょうど、4月の中旬からは日米で企業決算が本格化することもあり、企業が関税の影響をどう見積もってくるのかを確認しつつ、株式市場は一喜一憂しながら、株価水準を探っていくことになりそうです。
今月の質問「米の価格高騰による影響続く」
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」についてです。3月のテーマは「米の価格高騰による影響続く」でした。昨年から続く米の小売価格の高騰を受け、質問1では価格高騰をどの程度懸念しているかを尋ねました。
・質問1:米の価格高騰について、どの程度懸念していますか?

当該質問の回答者の39.4%が「ある程度懸念している」と回答しました。次いで、「非常に懸念している」が39.3%、「あまり懸念していない」が16.7%、「全く懸念していない」が4.6%となりました。
また、懸念しているという意味を含む選択肢(非常に懸念している、ある程度懸念している、の合計)は、78.7%と8割弱に達しました。今まさに、米の価格高騰は、多くの人の共通の懸念であると言えます。
これに関連し、質問2では今後の価格動向について尋ねました。3カ月後、価格がどのようになっているかを尋ねる質問でした。
・質問2:米の価格は3カ月後、今と比べてどうなっていると思いますか?

当該質問の回答者の47.6%が「変わらない」と回答しました。次いで、「高い」が26.8%、「安い」が21.8%、「わからない」が3.9%となりました。
足元の米の小売価格は高騰状態にあります。「変わらない」ということは、高騰している状態が変わらないことを意味します。
米の価格高騰は、一部の業者が在庫を確保していることで生じる「流通の目詰まり」が一因で起きていると報じられています。備蓄米を放出しても、思ったように価格が下がっていないことが、それを裏付けています。
質問3では、価格高騰を受けて、どのような対策をされているかを尋ねました。
・質問3:米の価格高騰を受けて、どのような対策をしていますか?(複数回答可)

当該質問の回答者の42.1%が「特に何もしていない」と回答しました。次いで、「他の穀物や代替品を利用する(家庭内)」が19.5%、「米の消費量を減らす(家庭内)」が18.4%、「新しい入手経路の確保(ふるさと納税、知り合いから購入、など)」が13.1%、「外食の際に米を含まないメニューを選ぶ」が2.9%、などとなりました。
半数弱の方が米の価格高騰が続くと考えているものの(質問2の結果より)、対策については特に何もしていない方が多いことがうかがえます。
また、家庭内での対策の意味を含む選択肢は合計37.9%でした(米の消費量を減らす(家庭内)と他の穀物や代替品を利用する(家庭内)の合計)。この割合は、外食の際の対策の意味を含む選択肢(外食の際に米を含まないメニューを選ぶ)の2.9%を大きく上回りました。このことから、対策は外食の際ではなく、家庭でできる範囲で行うと考えている人が多いことがうかがえます。
質問4では、米の価格高騰が投資行動に与える影響について、自由に書いていただきました(128文字以内)。
大変にたくさんのご回答をいただき、全てを紹介することはできないため、以下のとおり主要なキーワードとその出現回数を確認します。
・質問4:米の価格高騰が、投資行動に与える影響について、具体的な考えや対策があれば教えてください。(128文字以内)

出現回数が最も多かったキーワードは「米」(196回)でした。次点で「投資」(139回)、影響(89回)、価格(81回)、株(71回)、高騰(48回)、思う(40回)、行動(39回)、優待(37回)などがこれに続きました。
以下は主な回答の一部です(文意を変えず、一部修正をしています)。インバウンド、食品の備蓄強化、優待、生活防衛、製粉会社、など投資活動に関わりそうなキーワードが複数ありました。
- お米が欠かせない寿司や定食などを提供している企業は、値上げせざるを得ないだろう。とはいえ、それが必ずしもマイナス要因になるわけではない。インバウンドによる消費増加がプラス要因になる。多言語対応などの対応が進んでいる外食関連企業に注目したい。
- インフレの加速と潜在的な戦争や災害に備えた食品の備蓄強化が進むことが予想される。こうした動きに関わる食品関連企業の株に注目したい。
- お米やお米券を優待の品としている企業に投資したい。生活防衛のため、日用品がもらえる優待にも注目したい。
- 株主優待でお米やお米券がもらえる企業、かつ配当利回りが高い企業の株に注目したい。家庭でパンやスパゲッティなども購入するようになったため、製粉会社の株にも注目したい。
- ご飯のお代わり無料実施やご飯の大量廃棄を続けていたものの、それらを改善した企業に注目したい。
- 長期的な投資では物価高に追いつかないかもしれない。短期的に利を求める投機も検討したい。
- 米の価格高騰が投資行動に与える影響はない。しかし、世界の食料価格の高騰も見込まれる。今後の価格動向次第で投資行動は変わるかもしれない。
ここまで、「米の価格高騰による影響続く」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。
為替DI:4月の見通し。個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものである。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示す。

「4月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,664人のうち65%の1,076人が、ドル/円は「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かった。円高予想が円安予想より多かったのは、3カ月連続。

円安予想から円高予想の割合を引いて求めたDIは、マイナス30になった。円高予想は、前月からさらに6ポイント増えた。
DIは、マイナス100から+100までの値をとり、DIのプラス値が大きくなるほど、円安見通しの個人投資家の人数が多いことを示し、逆にマイナス値になるほど、円高見通しの個人投資家の人数が多いことを示す。ただしDIは「多さ」の指標であって、円高・円安の「強さ」を表すものではない。

円安が終わる時、株高も終わる
「日本が円安を誘導することによって米国に非常に不公平な不利益をもたらしている」とトランプ大統領は日本を非難した。そして、この問題は関税で解決できるという思いつきから、日本に対して大幅な関税を課すことを決めた。
ドル/円が1986年12月以来37年半ぶりの水準まで円安が進んだ昨年に、日本が円買い介入をしたことをトランプ大統領はご存じないのだろうか。石破茂首相は、なぜすぐに直電して抗議しなかったのか。
国会で遺憾の念を表明したところで、相手に伝わらなければ、トランプ大統領が正しいと認めているのと同じだ。もっとも、日本が円安誘導を一切してこなかったと言えばウソになる。
日本経済にとって円安のメリットは三つある。第一に、円安は輸出企業の国際競争力を高める。日経平均には輸出関連の大型株が多く含まれているため、円安は株価を押し上げる効果がある。
第二に、円安はインバウンド(訪日外国人)の需要を増やしている。インバウンドの増加は、サービス業や小売業などの国内消費にプラスに働く。
そして第三に、円安によるインフレ期待が高まることで、消費や投資の前倒し効果が期待できる。このように、円安は日経平均株価上昇の重要なパワーなのだ。
円安が日経平均株価の追い風になってきたことは間違いない。逆に言えば、「円安効果」が薄れることが、日経平均にとっての大きなリスクとなる。
ドル/円が昨年162円近くまで円安になった大きな理由は、日本銀行がマイナス金利政策を維持する中で、米国が大幅に利上げをして日米金利差が拡大したからだ。従って、日銀が利上げを始め米国が利下げをする中で日米金利差が縮小方向に向かうことは強い円高要因になる。
植田和男日銀総裁は、日本経済は「デフレではなくインフレの状態にある」との見解を示して、追加利上げへ向けて着々と準備を進めている。米連邦準備制度理事会(FRB)は慎重な姿勢をとっているものの、政策方向は利下げであることは変わっていない。2025年の利下げ回数は2回との見通しを持っている。
円安が日本株上昇の大きな理由であったならば、円安が円高に変わったとき、株式市場も大きな調整が入る可能性がある。日経平均4万円は通過点という強気の意見も多かったが、円高の強さによっては、4万円は天井になってしまう可能性もあるだろう。
ユーロ/円
楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,085人のうち55%の599人が、今月のユーロ/円は「円高/ユーロ安」に動くと予想していることが分かった。ユーロ安予想がユーロ高予想より多かったのは、3カ月連続。

円安予想と円高予想の差であるDIはマイナス10になった。ユーロ安予想は、前月から7ポイント減った。

豪ドル/円
個人投資家931人のうち59%の553人が、今月の豪ドル/円は「円高/豪ドル安」に動くと予想している。豪ドル安予想が豪ドル高予想より多かったのは、3カ月連続。

円安見通しと円高見通しの差であるDIはマイナス18になった。豪ドル安予想は、前月から4ポイント減った。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「日本」「アメリカ」「インド」を選択した人の割合に注目します。選択肢は、ページ下部の表のとおり13個です。(複数選択可)
図:「日本」「アメリカ」「インド」を選択した人の割合の推移

2025年3月の調査で、「日本」を選択した人の割合は79.31%、「アメリカ」を選択した人の割合は53.56%、「インド」を選択した人の割合は22.58%でした。日本上昇、米国下落、インド下落の傾向が継続しています。
今回の調査は、トランプ氏の米大統領就任からおよそ2カ月後に行われました。就任後、同氏は、同国の輸入関税の税率引き上げを実施したり、税率引き上げの対象国を拡大させたりしてきました。3月に入り、「かけられたらかけかえす」を意味する「相互関税」が実施されることが濃厚になり、世界は貿易戦争の様相を呈し始めました。
こうした関税をめぐる情勢悪化を受けたかのように、今後投資してみたい国(地域)で、米国を選択した人の割合が低下し始めました。このことは、全面的な関税引き上げや、中国などの特定の国・地域との関税引き上げ合戦の激化が、米国の不利益になると考えている投資家が増え始めたことを示唆しています。
また、インドを選択した人の割合の低下が同時進行していることにも留意が必要です。すでに、関税の税率引き上げ騒動は世界規模の貿易戦争の様相を呈しているため、インド経済への打撃も懸念されます。
これまで本欄で述べてきたとおり、投資家の間でインドは、日本や米国の情勢が悪化した際の「受け皿」と目されている節があります。そのインドが貿易戦争のあおりを受けるかもしれない、という状況を投資家が嫌気しつつあると言えます。
米国とインドと対照的に、上昇しているのが「日本」です。投資家の趣向が日本に回帰しているといっても言い過ぎではありません。世界が貿易戦争の様相を呈する中で、しっかりと足元を固めるという意図が見え隠れします。
引き続き、関税をめぐる諸情勢、そして今回取り上げた「日本」「アメリカ」「インド」を投資してみたいと思う人の割合の動向に、注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2025年3月調査 (複数回答可)

表:今後、投資してみたい国(地域) 2025年3月調査 (複数回答可)

(楽天証券経済研究所)