5月は大幅な円安からスタート。日銀はまた引きこもり状態になって今夜は米国の雇用統計の出番です。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の荒地 潤が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 「円安やりすぎ? 日銀「利上げしない」で一気に146円に接近」 」
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]↑上値メドは146.25円↓下値メドは143.40円中国経済:中国市場から過去最大の資金流出。元安、株安、金利差、貿易関税の全てがマイナス要因
トランプFRB:パウエル議長、トランプ政策に関するFRB公式発言に細心の注意を払うように促す
フランス経済:フランス中銀、2025年成長見通しを0.9%に引き下げ
円安:日銀「円安は安定している。利上げする必要ない」
中国:3兆元規模の国債発行を予定。トランプ貿易関税、デフレ対策のため
前日の市況
5月1日(木曜)のドル/円相場の終値は145.35円。前日終値比2.28円の大幅「円安」だった。

2025年87営業日目は142.97円からスタート。関税交渉の期待と日本銀行会合の結果待ちで底堅い動き。東京時間朝にやや下げてつけた142.87円がこの日の安値となった。
日銀金融政策決定会合で政策据え置きが発表されると144円台まで大きく円安方向に動いた。

日銀金融政策決定会合レビュー
5月初日は円相場が大幅に下落した。この円安の要因は、日銀の金融政策決定会合の結果と日銀総裁の記者会見内容だった。日銀はこの日まで開催した金融政策決定会合において、政策金利を0.5%程度で据え置くことを全会一致で決定した。
それだけではなく、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で2025年度と2026年度の実質GDP(国内総生産)成長率見通しを下方修正。消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率予測も引き下げた。
2025年度:+2.2%(前回見通しから0.2%引き下げ)
2026年度:+1.7%(前回見通しから0.3%引き下げ)
2027年度:+1.9%(新規追加)
日銀総裁は会見で、基調的な物価上昇率が物価安定目標の2%に達する時期について「やや後ずれしている」との認識を示した。これにより、追加利上げの可能性が当面低下するとの見方が広がった。
日銀総裁は、日米通商政策の不確実性が低下して、見通し実現に自信が持てれば「利上げになる可能性は十分にある」述べている。他の中央銀行に比べると、この発言は「タカ派」的である。しかし、マーケットは日銀にそれ以上の強い姿勢を期待していたため、結局は円安の動きになった
2025年 主要指標 終値

今日の為替ウォーキング More Than A Feeling
今日の一言
「相場は読むものではなく、従うものである」
More Than A Feeling
BLS(米労働省)が4月4日に発表した2025年3月の米雇用統計によると、NFP(非農業部門)の就業者数は22.8万人増加した。市場予想の13.5万人増を大きく上回る結果となった。暖冬の影響やスーパーマーケットチェーン店のストライキが終了したことが、雇用増加に寄与した。
失業率は4.1%から4.2%に上昇した。失業率の上昇は労働参加率が62.5%に上がったことが大きな理由だが、小数第二位まで見ると4.14%から4.15%への微増にすぎない。平均労働賃金は、前月比0.3%、前年同月比で3.8%上昇した。賃金の増加率はインフレ率を上回る水準が続いている。

トランプ政権のDOGE(政府効率化省)が推進する連邦政府職員のリストラが注目されているが、その影響は雇用統計にまだ完全には反映されていない。これは有給休暇中や退職金を継続的に受け取っている職員は、まだ雇用状態と見なされているせいだが、今月以降は失業率上昇や就業者数減などの数字となって表面化することになるだろう。
この影響は民間部門にも波及すると考えられ、より多くの人々が職を失うリスクが高まっている。DOGEによる雇用削減は、年末までに50万人を超える可能性があると試算されている。
3月の雇用統計では政府関連部門の雇用は1万9,000人増で、医療関係5.4万人増、小売業2.4万人増、レジャー関連4.3万人増と、製造業の1,000人増を別にすると全体的に堅調だった。FRB(米連邦準備制度理事会)が5月に急いで利下げをする理由は見当たらない。
雇用統計の予想は「 4月雇用統計の注目ポイント 強い雇用市場はいつまで?『トランプ関税』時限爆弾まもなく爆発か 4月米雇用統計 詳細レポート 」をお読みください。
パウエルFRB議長は3月雇用統計発表後の講演で、トランプ政権の関税引き上げが予想よりも大幅に大きくなる可能性を指摘し、それに伴うインフレ上昇と経済成長鈍化のリスクについて懸念を示した。しかし同時に、現状では経済は依然として良好な状態にあるとして、利下げを急ぐ必要はないとの姿勢を明確にしている。
また、トランプ大統領からの利下げ要求に対しては、FRBの政治的独立性を強調し、経済指標に基づいて慎重に金融政策を決定していく姿勢を示した。市場はこれらの発言を受けて、FRBの利下げ開始時期を6月まで先送りする見方を強めている。

今週の注目経済指標

ヒートマップ分析


(荒地 潤)