大型連休明けの日本株市場は底堅く推移し、連休前後のギャップは見られずTOPIXは連騰を続けています。その一方で、米国株は上値が重く足踏み感も出てきています。

これまでは、米政権の軟化期待や堅調な経済指標、企業決算などを背景に株価の反発基調が続いてきましたが、今後は米中協議や米経済指標が焦点となる中、株価の持続的な上昇には具体的な成果が不可欠です。


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著者の土信田雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 日米株市場、株価反発に「危うさ」あり。さらなる上昇に欠けるものとは? 」


日本株は連休前後で「ギャップ」が生じず

 大型連休明けで迎えた今週の国内株式市場。連休後7日(水)と8日(木)の取引は堅調な値動きとなっており、連休前と比較して大きなギャップが生じなかった格好です。


 とりわけ、TOPIX(東証株価指数)は連休前からの連騰記録を10日にまで伸ばしています。


<図1>TOPIX(日足)の動き(2025年5月8日時点)
日米株市場、株価反発に「危うさ」あり。さらなる上昇に欠けるものとは?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 実際に、TOPIXの日足チャートを確認すると、値動きは小幅ながらも、足元の株価は75日と200日の移動平均線を上抜けつつあり、節目の2,700ポイント台をうかがう水準まで株価を戻していることが確認できます。


<図2>日経平均(日足)の動き(2025年5月8日時点)
日米株市場、株価反発に「危うさ」あり。さらなる上昇に欠けるものとは?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 一方、日経平均株価は75日移動平均線や3万7,000円を試す展開となっています。テクニカル分析的な目安を超えられていないという面では、TOPIXと比べて出遅れている印象ですが、両者ともフィボナッチ・リトレースメントの「76.4%戻し」を達成しています。


米国株市場は足踏み?

 続いて、日本株市場が連休中の期間を含む米国株市場の動向を見ていきます。


<図3>米NYダウ(日足)の動き(2025年5月7日時点)
日米株市場、株価反発に「危うさ」あり。さらなる上昇に欠けるものとは?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 ダウ工業株30種平均は50日移動平均線に上値が抑えられていますが、1月30日の高値からの10%安(調整相場入りするとされる水準)を回復しています。


<図4>米S&P500(日足)の動き(2025年5月7日時点)
日米株市場、株価反発に「危うさ」あり。さらなる上昇に欠けるものとは?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

<図5>米ナスダック総合指数(日足)の動き(2025年5月7日時点)
日米株市場、株価反発に「危うさ」あり。さらなる上昇に欠けるものとは?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDII

 その一方で、S&P500種指数とナスダック総合指数は50日移動平均線を上抜けてきましたが、上値が切り下がっていて、株価が伸び悩んでおり、200日移動平均線を前にやや足踏みしている印象です。


「息切れ感」も出てきた株価の反発基調

 4月半ば以降、国内外の株式市場は株価の戻り基調を描いてきましたが、その背景には、関税政策や米中関係をはじめとする米トランプ政権の対応に軟化の兆候が見え始めたことがあります。


 これにより、景気後退やインフレ再燃など、実体経済に多大な影響を及ぼすといった「最悪のシナリオ」が回避できるのではないかという安心感が広がったことが主な要因として挙げられます。


 さらに、底堅さを示している米経済指標の結果を受けて、米国経済の堅調さが確認できたことに加え、日米で本格化している企業決算においても、全体的に売上高や利益などに大きな落ち込みが見られず、併せて自社株買いを発表する企業も多かったことなどが追い風となりました。


 しかしながら、先ほどもチャートで確認したように、株式市場がこのまま戻り基調をたどれるかどうかは予断を許さない状況かもしれません。株価反発の根拠となっている「安心感」には、危うさも内在しています。


株価のステップアップには「具体的な成果」が必要

 例えば、米経済指標の堅調さの背景として、関税適用前の「駆け込み需要」が影響している可能性が考えられます。その反動が、今後の経済指標の結果に表れることもあり得ます。


 最初の関門であった米4月雇用統計は無難に通過しましたが、5月中旬には4月分の物価指標(消費者物価指数と卸売物価指数)や小売売上高などが公表される予定となっています。


 また、米国が各国と行っている関税交渉においては、米国当局から「今週中にいくつかの国と合意に至る見込み」との発表がありましたが、5月7日時点ではまだ合意に至っている国や地域はありません。


※(追記)なお、この原稿を執筆している8日夜時点で、英国と世界で最初の合意がなされると報じられました。株式市場は「合意に達した」という事実を好感して、上昇する初期反応となる可能性が高そうですが、その後は合意内容(関税がどこまで緩和されるかなど)の詳細や、こうした動きが今後も加速度的に増えていくのかが焦点になります。米国は英国とのあいだに貿易赤字がほとんどなく、合意を形成しやすかったという事情を踏まえると、貿易赤字が大きい国との交渉がスムーズにいくとは限らず、時間を要してしまう状況になれば、それだけ関税の影響も色濃く現れることになります。


 加えて、10~11日にかけては、スイスで米中協議が行われる予定となっています。


「期待先行」による株価反発はそろそろ限界を迎えつつあり、株式市場がさらにステップアップしていくためには、なるべく早い段階で「具体的な成果」が求められ、その内容を市場が好感できるかが焦点になってきます。


 加えて、関税政策を巡っては、最近になって、映画や医薬品といった分野別の関税を検討する動きも出てきています。


 確かに、トランプ米大統領による対応が軟化しつつあるような動きも見受けられますが、「関税強化による貿易赤字削減と国内産業の保護」を優先させるという本質的な姿勢は依然として変わっていない点には注意が必要です。


 期待されている米中協議についても、関税政策が軽減されることはあっても撤廃される見込みは低く、依然として高い関税が残り、結果的に米経済を下押しすることも考えられます。従って、先行きの不透明感が相場を覆う状況は、まだしばらく続くことが想定されます。


(土信田 雅之)

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