楽天証券は、個人投資家向けに日経平均や為替の見通しなどを聞くアンケートを実施した。3カ月先の日経平均は「強気」と答えた人が回答者の32%を占めた。
揺れた4月相場。日経平均は一時3万0,700円まで下落
今回のアンケート調査は、楽天証券が2025年4月28~30日に実施。個人投資家2,600人以上が回答しました。
新年度相場入りを迎えた4月の日経平均株価は、3万6,045円で取引を終え、月間ベースで4カ月ぶりの上昇に転じました。また、前月末終値(3万5,617円)比では427円高と小幅な上昇にとどまりましたが、月間の値幅(高値と安値の差)は5,282円とかなり大きく、相場が上下に揺れ動いた格好となりました。
あらためて月間の値動きを振り返ると、月の始めは、米トランプ政権の関税政策に対する警戒感を背景に、前月からの下落基調を引き継ぐ格好でスタートしました。その後も下値を探る動きが続き、不安がピークに達した4月7日の取引時間中には3万0,700円台まで下落する場面を見せました。
ただし、米相互関税の上乗せ分については90日間の発動が猶予されたほか、米中関係の改善期待など、米トランプ政権の政策対応に軟化の兆しが見られたことによって、株価は大きく切り返す動きとなり、月末まで戻り基調が続く展開となりました。
日経平均については、DIの値が大きく改善し、過度な株安への懸念が後退する一方、為替のDIについては、米ドル・ユーロ・豪ドルのいずれの通貨に対しても、円高見通しの根強さを示す結果となり、依然として先行きの不透明感がくすぶっている印象です。
日経平均3カ月先は「強気」32%、「弱気」上回る。関税不安は継続
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先が+5.67、3カ月先は+8.62となりました。
前回調査の結果がそれぞれ、マイナス45.88、マイナス5.71でしたので、両者ともにDIの値がプラスに転じた格好ですが、とりわけ、1カ月先の改善幅の大きさが際立っています。

実際に回答の内訳グラフを見ると、弱気派の割合が、前回調査の56.43%から20.34%へと劇的に減少したほか、強気派の割合についても、前回の10.55%から26.01%へと大きく増えていることが確認できます。

また、3カ月先についても、弱気派が23.17%、強気派が31.79%となっており、前回の結果(弱気派:30.07%、強気派:24.36%)と比べて、ちょうど弱気派と強気派の割合が入れ替わったような格好となっています。
このように、今回のDI改善については、関税政策や米中関係をはじめとする米トランプ政権の対応に軟化の兆候が見られ始めたことで、景気後退やインフレ再燃など、実体経済に多大な影響を及ぼすといった「最悪のシナリオ」が回避できるのではという安心感が広がったことが主な要因として挙げられます。
日足チャートでも、今回のアンケート実施期間(2025年4月28~30日)の日経平均は25日移動平均線を上抜け、節目として意識される3万6,000円台の回復も視野に入るところまで株価水準を戻していました。
さらに、粘り腰を見せている米経済指標の結果から、米国経済の堅調さが確認できたほか、日米で本格化している企業決算でも、全体的に売上高や利益などに大きな落ち込みがなく、併せて自社株買いを打ち出す企業も多かったことなどが追い風となりました。
とはいえ、株式市場がこのまま戻り基調をたどれるかどうかは微妙なところかもしれません。4月半ばから見せている株価反発の根拠になっている「安心感」は、危うさも抱えています。
例えば、米経済指標の堅調さの背景として、関税適用前の「駆け込み」が影響していることが考えられますが、その反動が今後の経済指標の結果に表れる可能性があります。
第一関門の米4月雇用統計は無難に通過しましたが、月の半ばには4月分の物価指標(消費者物価指数と卸売物価指数)や小売売上高などが公表される予定となっています。
また、米国が各国と行っている関税交渉では、日本時間の5月7日時点でまだ合意に至っている国や地域はなく、米中関係改善期待についても、協議や会合が行われておらず、そろそろ「期待先行」による株価反発には限界があるほか、交渉に時間がかかってしまうと、それだけ関税の影響も色濃く出ることになるため、今後も株価を上昇させていくには、なるべく早い段階で「具体的な材料」が欲しいところです。
さらに、関税政策を巡っては、5月に入り、映画や医薬品といった分野別の関税を打ち出す動きも見られ始めています。
確かに、トランプ米大統領による対応が軟化しつつあるような動きもありますが、「関税強化による貿易赤字削減と国内産業の保護」を優先させるという基本的な姿勢は変わっておらず、関税政策が軽減されることはあっても撤廃される見込みは低いため、先行きの不透明感が相場を覆う状況は、まだしばらく続くことになりそうです。
今月の質問「ガソリン価格高騰!どんな対策をしていますか?」
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
ここからは、毎月テーマを決めて行っている「今月の質問」についてです。4月のテーマは「ガソリン価格高騰!どんな対策をしていますか?」でした。
・質問1:ガソリン価格が高いことを、どの程度、気にしていますか?

この質問の回答者の41.0%が「ある程度気にしている」を選択しました。次いで、「非常に気にしている」が26.2%、「あまり気にしていない」が21.1%、「全く気にしていない」が10.7%、「ガソリン価格が高いことを知らない」が1.1%でした。
また、気にしているという意味を含む選択肢(非常に気にしている、ある程度気にしている、の合計)は、67.2%と6割強に達しました。ガソリン価格高騰は、多くの日本の消費者の関心事であると言えます。
・質問2:どんな対策をしていますか?(検討中を含む)(複数選択可)

この質問の回答者の24.5%が「ガソリンを比較的安く販売しているお店を探して、給油する」を選択しました。次いで、「燃費を意識した運転を心がける」が22.1%、「対策をしていない」が17.3%、「車を使用する際、遠方への移動を避ける」が10.5%、でした。
また、「公共交通機関を利用する」が9.4%、「電気自動車(EV)やハイブリッド車など、ガソリンの消費量を抑えた車を選ぶ」が8.0%、「政府の支援を待つ」が4.8%でした。
安いガソリンスタンドを探したり、燃費を意識して運転したりするなど、積極的な対策をしている人が大半を占めた一方、政府の支援を待つなど受け身の姿勢の人は少なかった印象です。
ただし、遠方までの移動を避けたり、公共交通機関を利用したり、エコカーを選んだりするなど、もともとの生活様式に影響が及ぶ規模の対策をする人は、安いガソリンスタンドを探したり、燃費を意識して運転したりする人ほど、多くありませんでした。
質問3は、ガソリン価格高騰の原因に関する質問です。
・質問3:ガソリンの原料である原油の国際価格が高止まりしているのは、なぜだと思いますか?(複数選択可)

この質問の回答者の25.2%が「原油を生産している国の一部が減産をしているから」を選択しました。次いで、「円安が進行しているから(日本の原油輸入価格)」が21.5%、「温暖化対策よりも目先の経済成長を重視する国が増えているから」が14.6%、「投機資金が原油市場に流入しているから」が11.4%でした。
比較的多く選択された選択肢の共通点は、私たちが強く関与できない分野、という点です。日本の消費者は、原油の国際価格を左右する産油国の生産動向や、日米の金融政策の動向、新興国の経済情勢などに大きく関わることはできません。
質問4では、ガソリンの価格高騰が、投資行動に与える影響について、自由に答えてもらいました。
大変にたくさんの回答をいただき、全てを紹介することはできないため、以下のとおり、主要なキーワードとその出現回数を確認します。(主要なキーワードはAIツールを用いて抽出。出現回数は一部調整の上、表計算ソフトで算出)
・質問4:日本のガソリン価格の高騰、原油の国際価格の高止まりが目立つ昨今、投資の際にどのようなことに留意していますか?(自由記述、128文字以内)

出現回数が最も多かったキーワードは「ない」(247回)でした。次点で「特に」(202回)、株(145回)、関連(144回)、原油(114回)、石油(99回)、価格(87回)、注目(53回)、ガソリン(52回)、エネルギー(50回)、などがこれに続きました。
※補足:「ない」と「気にしていない」の違いについて。ない (247回)は、存在や、状態、行動の否定など、広範な意味で使用されたケースです。
気にしていない(36回)は、特定の事柄に対する低い関心や、重要視していないという態度を表す、より具体的な表現の際に使用されたケースです。投資判断をする時、ガソリン価格の高騰は気にしていない、などの場面で出現しました。
以下は、回答の一部です(文意を変えず、一部修正をしています)。新技術、株主優待、など投資活動に関わりそうなキーワードが複数ありました。
- 個人的には、ガソリン価格が高騰していることと、投資活動はあまり関連がないと考えている。
- 引き続き、バイオ燃料、原子力、EV・ハイブリッド車に関連する企業に注目していく。
- エネルギー消費を抑える技術・バッテリーの新技術を扱う企業に注目している。
- 運送費が費用を圧迫しているなど、石油に依存している企業は避ける。
- まだ国際社会は石油に頼らざるを得ないため、これからも石油関連株に注目していく。
- 徐々に、石油関連→新技術→電気に投資の軸を移していきたい。
- 短期的には石油関連株、長期的にはEV車関連株に注目している。
- 以前よりもESGが注目されなくなったため、ESG関連の投資を控えようか考えている。
- QUOカードで給油するようにしている。株主優待にQUOカードを扱っている企業に注目している。
ここまで、「ガソリン価格高騰!どんな対策をしていますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。
為替DI:5月の見通し。個人投資家の約7割が「円高」を予想
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものである。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示す。

「5月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券が、個人投資家を対象にドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、回答者の約70%が、ドル/円は「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かった。円高予想が円安予想より多かったのは、4カ月連続。

円安予想から円高予想の割合を引いて求めたDIは、円高予想が前月から8ポイント増えて、マイナス38になった。
DIは、マイナス100から+100までの値をとり、DIのプラス値が大きくなるほど、円安見通しの個人投資家の人数が多いことを示し、逆にマイナス値になるほど、円高見通しの個人投資家の人数が多いことを示す。

Show Me the Way
トランプ米大統領の関税政策は、米国経済にどのような影響を与えるのか。
市場の多くは、トランプ関税は米国のインフレを大幅に悪化させる要因だと捉えている。ところが意外にも、米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレへの影響はそれほど大きくないと予測する。
FRBは、トランプ関税の二つのシナリオを用意している。第1のシナリオは、現在の25%程度の高い関税が長期間続くケース。もう一つは、交渉によって関税が最終的に10%程度まで引き下げられるというケースだ。
シナリオ1:高率関税(25%)継続
FRBは、高率関税のインフレへの影響は一時的であり、来年の消費者物価指数(CPI)は1.5%から2.0%の上昇にとどまると予測している。インフレで需要後退が起きるが、競争圧力による価格抑制をもたらすため、インフレが著しく上昇することはないと考えている。
しかし、このシナリオでは、景気減速が深刻になり失業率が急上昇する可能性が高い。その場合、米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を、より早くより大幅に引き下げることを検討するだろう。
シナリオ2:低率関税(10%)妥結
トランプ関税が低率でおさまった場合、インフレへの影響は大幅に小さくなる。FRBはCPIが最大で0.5%程度の上昇にとどまるだろうと予測している。関税による経済成長や雇用へのマイナス影響は避けられないものの、限定的な範囲にとどまる。インフレ期待は安定し、雇用や消費活動は継続する可能性が高い。
このシナリオでは、FOMCによる政策対応は限定的で済むと考えられる。昨年の予防的な政策金利引き下げにより、FRBには検討する時間が確保されており、政策の方向性が大きく変わる可能性は低いと考えている。
しかし本当に重要なことは最終的な関税率ではない。関税率の「引き下げ速度」が問題なのだ。関税率が20%から25%範囲にとどまる期間が長ければ長いほど、米国がリセッションに陥る可能性が高くなる。
しかし、あまりにも早く関税率を下げると、今度は米国が自らの関税に耐えられないことが見透かされてしまう。トランプ米大統領は、関税政策で強硬姿勢を続けることで政治的な勝利を手にするが、経済的には大敗北するリスクが高い。
ユーロ/円
ユーロ/円相場の先行きについては、個人投資家の60%近くが、今月のユーロ/円は「円高/ユーロ安」に動くと予想している。円高予想は、4カ月連続で円安予想を上回った。

円安予想と円高予想の差であるDIは、円高予想が前月から6ポイント増えてマイナス16になった。

豪ドル/円
豪ドル/円相場の先行きについては、個人投資家の60%以上が、今月の豪ドル/円は「円高/豪ドル安」に動くと予想している。円高予想は、4カ月連続で円安予想を上回った。

円安見通しと円高見通しの差であるDIは、円高予想が前月から8ポイント増えてマイナス26になった。

今後投資してみたい金融商品、国・地域は「特になし」が上昇傾向。トランプ不況の影響か
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」「今後、投資してみたい国(地域)」で、「特になし」を選択した人の割合に注目します。選択肢は、ページ下部の表のとおり、それぞれ13個です。(複数選択可)
図:今後、投資してみたい金融商品・国(地域)で「特になし」を選択した人の割合

2025年4月の調査で、「今後、投資してみたい金融商品」で「特になし」を選択した人の割合(上図の青線)は9.31%、「今後、投資してみたい国(地域)」で「特になし」を選択した人の割合(同オレンジ線)は7.20%でした。ともに、2024年序盤から始まった上昇傾向を維持しました。
当該質問の選択肢は13個あり、金融商品においても国(地域)においても、もともと高い網羅性があります。
こうした特徴がある上で回答者が「特になし」を選択することは、金融商品や国(地域)において、自身の思いに当てはまる選択肢がない、さらに言えば期待できる金融商品や国(地域)が見当たらないと認識していることと、同じ意味であると言えます。
そしてその割合が、2024年序盤以降、上昇傾向にあり、特に今年2月以降、その傾向が鮮明になっています。
2024年といえば、米国の大統領選挙においてトランプ氏が優位になったり(同年半ば)、勝利したりした(同年11月)タイミングです。また、今年2月は、トランプ氏が関税引き上げなど、さまざまな策を打ち出し始めたタイミングです。
トランプ氏の存在感や同氏がふりまく不安が大きくなればなるほど、投資家が金融商品や国(地域)へ抱く期待感が損なわれてきたと言えるかもしれません。
次回の米国の大統領選挙は2028年です。まだしばらく、トランプ氏が世界に不安をふりまき、投資家の心理が熱くなりにくい期間が続く可能性があります。
引き続き、「今後、投資してみたい金融商品」「今後、投資してみたい国(地域)」で、「特になし」を選択した人の割合の動向に、注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2025年4月調査 (複数回答可)

表:今後、投資してみたい国(地域) 2025年4月調査 (複数回答可)

(楽天証券経済研究所)