おコメの値段は倍、うまい棒は10円から15円。ここ数年の物価高がじわじわと家計をむしばんでいる。
▼えまさんプロフィール

「全体的に物価高」で終わらせず現実を直視しよう!
トウシル:備蓄米などが出回るようになり、ようやくもとに戻りつつありますが、2025年4月、おコメの価格が高騰。スーパーで買い物をしたとき「だいたい3,000円超えたくらいかな…」と思っていたら5,000円くらいになっていて、お支払いのたびに「え?」と思いますよね(笑)。
えまさん:ホント、それです(苦笑)。確実に物価高が家計を圧迫していると痛感します。おコメの価格は分かりやすく上がっていますが、その他の食品類、日用品類も、全体的に物価が1.3~1.5倍になったと感じています。
トウシル:4人家族のえまさん宅は、主に食費がキツイですか?
えまさん:食費は分かりやすくキツイですね。2022年ごろまでは「食費を週に1万円で抑える!」という生活ができていたけれど、今はどうしても1週間で1万円を超えてしまいます。
あと、じわじわ痛いのが「光熱費」。コロナ禍以降、夫婦ともに在宅勤務のため、冷暖房費は確実に増えています。特に冬場は平常の1.5倍程度に増えています。
電気料金 = 基本料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金+電力量料金単価×使用料(←変動する部分)
トウシル:経済産業省では、2023年1月の使用分から12月の使用分まで「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づいて、電気料金やガス料金を、使用量に応じて値引きする「価格激減緩和策」が取られていました。2025年度も 7~9月使用料金の支援 が発表されています。
しかし、2025年6月で、すでに35度を超える猛暑日が続きました。光熱費は節約すると命に関わる問題になるだけに、個人でできる工夫は限られてしまいますよね。
えまさん:はい。だからこそ、「なんとなく厳しい…」で終わらせず、何がどれくらい価格が上がったのか、何がいちばん家計を圧迫しているのかをしっかり数値化して、現実と向き合ったほうがいいと思っています。削れる支出と削れない支出をはっきりさせると、対策も取りやすくなると思います。
トウシル:家計簿の達人として知られるえまさんは、インフレ前からの家計簿が残っていると思います。本日は、インフレ前とインフレ後、家計簿を見比べてみたいと思います!
えまさん:はい。違いが分かりやすいように、2022年4月と、2025年4月の家計簿を持ってきました。
トウシル:あ、2022年はまだ紙なんですね。
えまさん:そうなんです。電子化したのは2023年以降で、日々の家計は 「マネーフォワード」 で、資産関係は 「Zaim」 を併用して使っています。


トウシル:あ、2022年は、特別費で東京ディズニーランドに行かれてますね。4人家族で、こんな値段で済みますか?
えまさん:3歳以下は入場料無料で小学生以下も割引があるのですが、当時は義母が入場チケットをプレゼントしてくれていたので、これは中で使った飲食代やお土産代がメインですね。
トウシル:ちなみに今、いくらくらいかかるのか、東京ディズニーランドの大人1デーパスポート料金の推移を見てみましょう。

えまさん:うわぁ~…。
トウシル:2023年には、ついに1万円を超えてしまいましたね…。
えまさん:こうしてみるとやはり、ここ数年で急騰していますね…。でも子供たちも大好きなので、我が家では、年に3回は東京ディズニーランドに行きたい、と思っています。
トウシル:年3回はなかなか大変じゃないかと思うのですが、費用を抑える工夫などはしていらっしゃいますか?
えまさん:ついその場では気分が盛り上がっちゃうんですが、ぬいぐるみやグッズを買っても、あとでそれで遊ぶこともないため「1人1個まで」と子供たちと約束しています。
また、行ったら目いっぱい楽しむためにアトラクションはケチケチせずにお金を出しますが、食事にはあまりお金をかけ過ぎず、レストランは使わずにキッチンカーみたいなところで買って食べるようにしています。
トウシル:園内のレストラン、けっこういい値段しますよね(笑)。
えまさん:そうなんです(笑)。子供たちも大きくなって、たくさん食べるようになってきたので、そこにはお金をかけずに、アトラクションなど、形に残らないけれど思い出として残ることにお金をかけるようにしています。
2022年4月 VS 2025年4月、インフレBefore→After家計比較!
トウシル:気を取り直して(笑)、実際に2022年のインフレ直前と、2025年のインフレ真っただ中の、同じ4月の支出をグラフ化して比べてみたいと思います。
えまさん:やっぱり食費と日用品が分かりやすく家計を圧迫していることが分かりますね。食費は約1万3,000円、日用品は約2万円アップです。

トウシル:ただ、最初に「増えた」とおっしゃっていた「光熱費」は、全体から見るとたいした割合ではなさそうですが?
えまさん:いえいえ。全体の支出が増えているので割合としては多くないのですが、金額を見るとスゴイですよ。

トウシル:確かに! 電気代、水道代はほぼ倍ですね。
えまさん:はい。先ほど言ったように、やはり在宅勤務の影響で、自宅の光熱費は抑えられてないですね。あとはコロナ禍以降、犬を飼い始めたので、私たちが家にいない間も冷暖房を入れてやらないといけない、という原因もあります。
ただ、ココは削れないならほかで削る方法を考えるしかありません。子供が育ってきたり、親の働き方が変わったりなど、環境は常に変わるものです。
えまさんが実践!つらくない「食費削減」方法を教えて!
トウシル:家計簿の中でも日々圧迫を実感し、メンタルにも打撃の大きい食費について、えまさんが日々行っている「食費削減」方法はありますか? できればあまりつらくないものを教えてほしいのですが(笑)。
えまさん:もちろんです(笑)。私もガマンは嫌いなので、明日からでも実践しやすい方法をご紹介しますね。
1.冷蔵庫や食品棚の在庫確認で、無駄買い防止
まずわが家では、冷蔵庫や食品棚の中身を確認して、何がいくつあるか、在庫管理をしています。そうでないと、スーパーに行ったときに、「安いから」という理由でいくつも同じものを買ってしまったりしがちです。結局賞味期限や消費期限を過ぎてしまうなどのフードロス防止にも役立ちます。
2.週に一度のまとめ買いで予算管理
夫婦共働きのため、買い物は週末にまとめ買いをしています。1週間のレシピをだいたい考えて、使い切れる量を購入するので、これも無駄買い防止に役立ちます。
さらに、1週間の予算を決めて買い物をするので、予算オーバーしそうになったら棚に戻す、などの予算管理にも役立ちます。ついつい手が出てしまいがちなレジ前のお菓子や、必須ではない嗜好(しこう)品などをセーブできます。
3.旬の野菜やハツなど安い素材のレシピを実践
季節ものの野菜など、安くなっている食品で作れるレシピを考えています。同じ鶏肉でも、モモ肉、ムネ肉、手羽先、砂肝、ささみなど、部位別で値段が違います。
わが家では最も安いハツ(心臓)をほぼ週1でメニューに取り入れています。普通の部位と同じ扱いで大丈夫です。野菜炒めや、単純に塩こしょうでパリッと炒めて食べていますが、子供も大好きでわが家の定番レシピになっています。
4.週末は残り物を処分して冷蔵庫を空にする
週末の買い物に行く前に、いったん冷蔵庫の残り物で、チャーハンやパスタなどを作って冷蔵庫をきれいにします。そうすると、毎週仕切り直しができるので、材料も余らないし、次の買い物の計画も立てやすくなります。これを実践することで、残り物で何でも作れる料理スキルもアップします。インフレ時だけでなく、長く使えるスキルが身につきますよ。
日用品・雑費こそ削れる支出ナンバーワン!
トウシル:洗剤やトイレットペーパーなど、雑多な日用品の価格も高騰しています。えまさんの家計簿の中でも月々約5万円の大出費ですが、こちらも削減する方法を教えてください。
えまさん:日用品こそ工夫次第で削減できる支出ナンバーワンです。一つ一つはチリツモですが、きちんと計画し、改善すれば、後々の支出削減に大きく貢献します。月々ではなく、年単位で計算すると削減すべき点が見えてきますよ。
1.ふるさと納税を大活用
トイレットペーパーやティッシュペーパーは、ここ数年はほぼふるさと納税で確保しています。
ふるさと納税も、インフレ前は高級フルーツやちょっと高いお肉などの返礼品を狙っていましたが、今はほぼ日用品にシフトしました。寄付したお金は本来支払う税金から控除されるため、自己負担額は実質2,000円で大容量の日用品を確保できます。
2.クーポンやセールに踊らされない
ネットを見ているとあちこちでしょっちゅう、クーポンを配布していたりセールを展開していたりします。見てしまうと「安いから今買わなきゃ」と流されそうになるので、できる限りネットを見過ぎないようにしています。キラキラ系のインスタグラムなども見れば欲しくなってしまうのでできるだけ避けています。
「安いから買う」ではなく「必要だから買う」というマインドへシフトチェンジしています。
3.サブスクを見直す
ぜひやってほしいのがコレ。案外ここで支出がかさんでいる人が多いのではないかと思います。私は今年、Googleフォトの100GBプランを解約しました。子供が小さいうちはたくさん写真を撮りたくなるのですが、見返すことがほとんどないのでハードディスクで十分だと判断。年間2,500円なのですが30年続けたら7万5,000円にもなります。
ネイルやまつエクも継続することを考えたらこれもサブスク扱いできるなと思い、店舗に行かずにセルフに切り替えました。このタイミングで切り替えることで、この先の出費を抑えることができたいい例だと思います。
とはいえガマンし過ぎはつらい…。出す、出さないの基準は?
トウシル:生活を見直して、必要・不必要を切り分けているえまさんですが、あまりやり過ぎて毎日が楽しくなくなるのもよくないはず。えまさんが「これは出す」「ここは出さない」と判断している基準を教えてください。
えまさん:削らないのは、先ほどのディズニーのように、その時しか得られない思い出や体験に使う場合です。しかし子供も育ってくると、プリキュアや野球など、子供自身の趣味も増えてきて、それにかかるお金も増えてきます。ただ、私はココは削りたくないんです。せっかく好きなものが出てきたのを応援したいと考えています。
今年の3月は、家族でMLB開幕戦を見に行って、さすがに大きな額を使いましたが、これは散財とは思っていません。その代わり、長男には月1,000円のお小遣い制を導入して、買い物のときに親が買ってあげていたおやつを、この中からやりくりするようにしてもらっています。
お金のやりくりという金融教育ももちろんですが、お菓子を食べ過ぎて夕飯を残す、ということがなくなったのも予想外な点でいい結果が出ました。
また、犬を飼い始めたのも同じような意味があります。ペットがいることで、子供も親もとても癒やされていて、ここはお金をかける意味があると考えています。
さらに、外食費もあまり意識して削っていない支出です。以前は1人当たり700円程度で済んだけれど、インフレとなった今では1人当たり1,000円を超えるケースが増えています。でも夫婦で在宅勤務のわが家では、外食は家族のコミュニケーションとモチベーションアップに大いに役立っているので、楽しい時間を過ごすための必要経費だと思っています。
そして、実は今、私も人生初の「推し活」をしていて、それにもお金をかけています(笑)。
トウシル:何にハマっていらっしゃるんですか? 興味あります!
えまさん:実は、「Hey! Say! JUMP」にハマっていて(笑)、ファンクラブ代やチケット代はケチらずに出しています。チケットもけっこう高額なのですが、当たったときは全力で楽しみます。ただ、グッズを買いあさったり、遠方への遠征など、自分に合わない「推し活」はしないように自制しています。
トウシル:インフレの今だからこそ、本当に自分に必要なモノや、人生を楽しくできるコトが見えてくるのかもしれませんね。
インフレはマネー&ライフプランを見直す大チャンス!
トウシル:インフレが家計を圧迫して、可処分所得が分かりやすく減っています。積み立てや投資に回せていた余剰資金が苦しくなってきた…という方もいるのではと思いますが、えまさん宅ではこのインフレで、投資額に変化はありましたか?
えまさん:横ばいでキープです。もともとわが家では、「家計は夫の給料だけでやりくりし、私の給与は全額投資へ回す」というスタイルにしているので、それを粛々と続けています。
わが家は今のところ、投資額は変更せずに済んでいます。逆に4月のトランプショックで大きく株価が下落した際、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠で200万円分くらい、一気に買い増しをしました。下落しているということは、買いやすい値段に下がったということなので、ここは勝負に出ていいと判断しました。
ただ、もし家計が回らないのならば、無理に投資を続ける必要はないと思います。積立額が5万円だったのを2万円に一時的に減らす、など、現状に応じた見直しは必要。でも、投資金額は減らしても、投資自体はやめないで、ほそぼそとでも継続したほうがいいのではと思います。
トウシル:一度上がった物価は簡単には下がらないと思います。物価の上昇に応じて、おのおのの給料が増えるまでに時差があり、この期間を耐えられるかどうか、不安も募りますが、えまさんはこのインフレをどう乗り切ろうと思っていますか?
えまさん:私は、令和のインフレが悪いことばかりではないと思っていて、人生やお金の計画を考え直すよいきっかけになったと考えているんです。
実は夫は、投資を始める前は500円玉貯金を10年以上続けていたんですが、それだとインフレ時に現金の価値が下がったら、ためた時よりも少ないモノしか買えませんよね。
夫婦で話し合って、生活は夫の給料でやりくりし、私の給料は全て投資に回す、というスタンスを握れたおかげで、資産形成も順調に進んでいて、インフレになっても、必要以上におびえずに済んでいるのではと思います。
トウシル:今回、えまさんの家計簿比較で、2022年には1万円で賄えた食費が、2025年では1万円では足りない、放っておくとこの差は開く一方だということが数字ではっきりと認識できました。
えまさん:だからこそ、家計簿はぜひ続けてつけてほしいと思います。クレジットカードで支払いをしていると、支払い明細も遅れて通知され、引き落としも翌月なので、1カ月で何にいくら使ったのかが本当に可視化しづらい時代です。家計簿をつけて、週に1回、最低でも月に1回は、「お金の流れ」を振り返ることが大事だと思います。
定期的にお金の流れや割合を把握することで、前月と比べて足が出ている支出を見直し、改善策を立てることもできます。入力して終わり、書いて終わり、にしないで、お金の流れや自分のお金意識を振り返るツールとして、家計簿をぜひ活用してほしいと思います。

(トウシル編集チーム)