先週末、日経平均は反発したものの、参議院選挙を控えた様子見姿勢で方向感に欠けました。今週は、選挙通過で落ち着いたスタートが見込まれますが、現政権の求心力低下は否めず、イベント通過後の上昇は微妙かもしれません。
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著者の土信田雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 参院選後も様子見ムードが続く?~政局と企業決算と米関税交渉のはざまで~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」
様子見ながらも先高観を残した先週の日経平均
先週末7月18日(金)の日経平均株価は3万9,819円で取引を終えました。
週間ベースで反発しましたが、週末終値(3万9,569円)比で250円高と、前週の下げ幅(241円)をやや上回って値を戻した格好です。
<図1>日経平均(日足)の動き(2025年7月18日時点)

週間の値動きを図1の日足チャートで振り返ると、4万円台を意識しながらの推移となり、週末18日(金)の取引直後には4万円台を回復する場面もありました。
週を通じて方向感に欠ける展開ではありましたが、25日移動平均線が株価のサポートになっていたことや、5~6月の保ち合いを形成していた時に抵抗となっていた「上値ライン」が、足元ではサポートとして機能しつつあることを踏まえると、上方向の意識を保っていると言えます。
参議院選挙の影響
先週のこうした日経平均の方向感に欠ける展開は、週末20日(日)に控えていた参議院選挙の結果を見極めようとする動きが影響したと思われます。
実際に、先週の東証プライム市場における売買代金の1日平均は4兆0,560億円でした。これは、2025年初めから現在(1月6日~7月18日)までの平均(4兆5,369億円)よりも少なく、市場の様子見ムードが強かったことがうかがえます。
そんな中で迎えた参議院選挙の投開票日ですが、自民・公明の与党が議席数を減らし、過半数に届かない結果となりました。
これを受けた翌21日(月)の国内株式市場は祝日のため休場でしたが、同日の外国為替市場や、シカゴ先物取引所(CME)の日経平均先物取引の様子を見ると、為替はやや円高へ戻し、日経平均先物が小幅に上昇する初期反応となりました。
相場の流れを大きく変えるほどの動きを見せていなかったため、このまま行けば22日(火)の国内株市場も落ち着いたスタートが想定されます。
すでに事前の報道や調査などで与党の苦戦が想定されていたこと、議席を減らしたとはいえ、想定されていた最悪の状況ほどではなかったこともあり、今回の選挙の結果自体は市場にとってサプライズにならなかったと思われます。では、イベント通過の「アク抜け感」で相場上昇に勢いが出てくるかと言えば、その可能性もあまり高くはなさそうです。
というのも、2024年10月の衆議院選挙をはじめ、6月の都議会選挙、そして今回の参議院選挙と、石破政権になって行われたすべての選挙で与党が議席を減らしており、石破茂首相の求心力低下は避けられません。
今後は、予算や法案を通すために野党と交渉する必要があるなど、政策実現にかかるコストや時間は増えるでしょう。
そのため、政権運営の枠組みがどうなるのか、また、8月1日の期限が迫る中で日米関税交渉を進展させることができるのか、さらには野党が推す政策(減税や社会保障費の削減など)の実現性と、それに伴う財政負担への思惑が市場にどう反映されるか、といった点に注視していくことになります。
また、初期反応で円高となった為替市場についても、現政権の基盤が一段と弱まったことで、円売り圧力となりやすい面も意識しておく必要があります。
したがって、選挙を終えた後の国内株市場も、引き続き様子を探りながら推移していくことになりそうです。
今週のイベント:日米で企業決算が本格化
今週のイベントスケジュールについては、日米ともに経済指標の発表が少ないこともあり、本格的にシーズン入りする日米の企業決算の動向を中心に、個別株主体の物色が相場全体のムードに影響を及ぼすかも焦点になります。
国内では、 ファナック(6954) 、 信越化学工業(4063) 、 SCREENホールディングス(7735) 、 ルネサスエレクトロニクス(6723) などの半導体関連企業の決算が予定されています。
先週決算を発表した ディスコ(6146) が保守的なガイダンスを示したことで株価が下落し、一部の半導体関連銘柄にも株安が波及した動きがあっただけに、今週はこれらの決算をきっかけに買い戻しが入るかが注目されそうです。
また、米国でも アルファベット(GOOGL) や テスラ(TSLA) といった「マグニフィセントセブン」銘柄の一角をはじめ、 IBM(IBM) 、 コカ・コーラ(KO) 、 ハネウェル・インターナショナル(HON) などのNYダウ構成銘柄も決算発表が予定されています。
さらに、先ほどは日米の関税交渉について触れましたが、日本以外でも米関税政策をめぐる各国との交渉に進捗があれば、株式市場はその度に消化していくことになります。
これらを踏まえると、海外市場と比べてやや出遅れている印象がある日本株が、その遅れを取り戻す展開に期待したいところです。
<図2>世界の主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年7月18日時点)

75日移動平均線乖離率から見た今後の値動きパターン
続いて、今後の日経平均の動きについて、テクニカル分析の視点で考えて行きます。
図1の日足チャートでは、「上方向への意識を保っている」点を確認しましたが、その一方で売りに押されやすい状況であることも押さえておく必要があります。
先ほども述べたように、相場環境面では選挙後の動向次第でムードが悪化することが考えられるほか、株価と75日移動平均線とのあいだに生じた乖離を修正する動きが出てくるかもしれないことも押さえておきたいポイントです。
<図3>日経平均と75日移動平均線乖離率(2025年7月18日時点)

上の図3は2020年頃からの日経平均と75日移動平均線乖離率の推移を示しています。
図3をみると、乖離がプラス方向に10%あたりまで進むと、株価が天井をつける傾向があることが確認できます。しかし、2020~2021年にかけての時期や、2024年からの数カ月間のように、しばらく10%を挟んで乖離率が高止まりしている場面も見受けられます。
足元では、6月30日に乖離がプラス9.86%まで進みました。先週末時点ではプラス6.35%まで乖離が修正され、少し落ち着いている状況ですが、「さらに乖離の修正が進む」のか、それとも「高止まりしながら株価が上昇して行く」のかの2つのシナリオを描くことができます。
では、どちらのシナリオになりそうなのかが気になるところですが、ここで見ておきたいのが、2020年の3月から6月にかけての場面です。乖離率がマイナスからプラスへと一気に上昇し、75日移動平均線の傾きも下向きから上向きに転じていることなど、足元の状況と似ています。
2020年の場面では、株価がもみ合いを続けつつ、乖離率の修正が進み、その後の一段高へとつながって行きました。
今回についても、乖離の修正が進む可能性が高いと考えられます。
2020年のように、株価水準を保ちながら、75日移動平均線のキャッチアップを待つのか、それとも株価が下落して75日移動平均線をサポートにできるのかによって、値動きが異なってきますが、この両者は時間調整か値幅調整かの違いだけで、本質的に重要なのは「75日移動平均線をサポートに、中長期の上昇へとつなげて行けるか?」という点になります。
そのため、今後の株価が75日移動平均線を保っているあいだは強気目線で大丈夫と思われますが、仮に下抜けるようなことがあれば、これまでの強気姿勢を見直す必要が出てきます。
(土信田 雅之)