今日は、日本株を「誰が買い、誰が売っているか」需給面から分析する。2023年以降、最大の買い手は自社株買いで最大の売り手は年金基金。

それでも、短期的な値動きを支配しているのは外国人投資家である。日本企業のガバナンス改善を評価した外国人投資家の買いについて解説する。


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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 日経平均4万円超え、最大の買い手は「自社株買い」上値を追う外国人 」


日本株の買い手は「外国人投資家」と「自社株買い」

 過去30年以上、日本株の動きを支配してきたのは外国人投資家です。外国人投資家が買えば上がり、売れば下がる傾向が顕著です。外国人は、買うときは上値を追って買い、売るときは下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な値動きは外国人次第です。


 その外国人投資家は、2023年以降、買い越しに転じています。短期的には売り買いが目まぐるしく入れ替わり、それが、日経平均株価の激しい乱高下につながっています。しかし、全体で見ると、2023年以降、外国人投資家はトータルで買い越しとなっています。


2023~2025年(6月13日まで)の投資主体別株式売買(買い越し・売り越し)
日本株、買い手は誰だ?増える自社株買いで外国人投資家が日本株を再評価(窪田真之)
出所:JPX「投資部門別売買状況二市場」より楽天証券経済研究所作成

 以下、上記の、主体別売買動向を説明します。外国人投資家については最後に説明します。


1:最大の買い手は、事業法人の「自社株買い」

 外国人投資家は、日本株の動きを支配していますが、最大の買い手ではありません。最大の買い手は、事業法人の「自社株買い」です。


 自社株買いであるため、マーケットを動かすような買い方はしません。それでも、トータルで最大の買い手は「事業法人」です。


 事業法人の買い越し17.9兆円が「自社株買い」の全てではありません。事業法人だけでなく、金融法人も巨額の自社株買いを行っています。金融法人の自社株買いや、市場を通さない自社株買いなどを合わせると、20~30兆円の自社株買いが出ていると推定されます。このことから、自社株買いがいかに大きな買い手であるかが分かるでしょう。


2:最大の売り手は信託銀行(信託勘定で売買する年金基金など)

 売り手で最大なのは「信託銀行」です。これは、信託勘定を使って売買する、年金基金などの売買を表しています。年金基金は基本ポートフォリオを決めており、原則その比率で運用を続けています。


 株が上昇すると、時価ベースで株の組み入れ比率が高くなるため、基本ポートフォリオに戻すために、株を売ることになります。2023年以降は、そのような年金基金のリバランス売りが、最大の売り主体となっています。


3:銀行・生損保は継続的な売り手

 金融法人も「自社株買い」では、巨額の買い手です。ただし、自社株を買う一方、毎年計画的に進めている「政策保有株の売却」では、大口の売り手となっています。

政策保有株の売却額の方がはるかに大きいので、「銀行・生損保」はトータルで売り越しとなっています。


4:個人および投資信託

 個人投資家は、株が下がると買い越しになり、株が上がると売り越しになる傾向が顕著です。日経平均が上昇してきた2023年以降は、トータルで売り越しとなっています。投資信託も、個人投資家の売買の影響が大きいため、トータルで売り越しとなっています。


 ただし、一つ注意事項があります。個人投資家の実際の売り越し額は、ここで出ている金額よりもっと小さいものです。


 個人投資家は、新規公開株(IPO)の割り当てを受け、上昇後に売却することが多いです。ここで新規公開株の購入は「買い」に計上されず、上場後の売却だけ「売り」に計上されます。そのため、個人投資家の売り越し金額は、実態よりも大きく出ています。


外国人投資家が日本企業のガバナンス改善を評価

 外国人投資家は、アベノミクスがスタートした2014年に、日本株を約15.2兆円買い越しました。アベノミクスにより、資本主義の構造改革・成長戦略が進むことを期待したためです。


 確かにアベノミクスで構造改革・成長戦略は進みましたが、その進み方は外国人投資家の期待を下回るものであったため、2015年以降、外国人投資家は再び日本株を売り越すようになりました。


 ところが、近年の日本企業のガバナンス改善を評価して、2023年以降再び、買い越しに転じています。


外国人と事業法人による日本株売買動向(買い越し・売り越し):2017~2025年(6月13日まで)
日本株、買い手は誰だ?増える自社株買いで外国人投資家が日本株を再評価(窪田真之)
出所:JPX「投資部門別売買状況二市場」より楽天証券経済研究所が作成

 かつて日本企業の経営者は、株価を上昇させることにあまり本腰を入れてきませんでした。

「借金を返済し、事業を強くすることだけに集中していれば、株価はそれを評価して上がっていくものだ」という感覚の経営者が多かったといえるでしょう。


 そのため、かつての日本企業はあまり自社株買いを行わず、実質無借金でバランスシートに余剰資産を抱える企業が増えました。その結果、財務内容が良好で収益基盤も堅固なのに、株価が解散価値といわれる株価純資産倍率(PBR)1倍を割り込む企業が増えました。


 東証の要請や、合意なき買収が増えてきたことを受け、日本企業の経営者はようやく自社株買いを増やし自己資本利益率(ROE)を高めて株価を上げることに、本格的に取り組むようになりました。


 それが、自社株買いの増加につながり、それを評価して、外国人投資家も日本株を買うようになったと考えられます。


日本株の投資判断

 結論はいつも書いてきたことと変わりません。日本株は割安で長期的な上昇余地が大きいと判断しています。ただし、トランプ関税ショックはまだ終わっていないため、これからも急落・急騰を繰り返しながら、上昇していくと考えています。時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。


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(窪田 真之)

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