7月1日のドル/円は、前日までのドル安傾向が継続し、米国の金利低下の期待から海外市場でドル安円高の動きが見られた。トランプ大統領によるFRBへの批判もドル売り要因になった。

ただ、結局のところ新しい円高レンジに入るほどの盛り上がりはなかった。マーケットは今週の米雇用統計に注目している。


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今日のレンジ予測

[本日のドル/円]上値メドは144.25下値メドは142.55円

FX:取引の中心が欧州時間からNY時間へ移る
トランプ関税:新車への課税は、中古車価格と自動車保険料の上昇につながる
FRB:SF連銀総裁「利下げはトランプ政策の影響を見極めてからでも遅くない」
豪ドル:RBA次回利下げは8月
NZドル:RBNZ次の利下げは7月。OCR3%まで引き下げ


前日の市況

 7月1日(火曜)のドル/円相場の終値は、前日比0.59円「円高  円安」の144.41円。1日のレンジ幅は1.38円だった。


 7月になってマーケットは「ドル売り」に再フォーカスしている。この動きに大きな影響を与えているのは、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定される可能性が高まっていることと、次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長の人事を巡る思惑だ。


 ベッセント財務長官は次期FRB議長候補に名乗りを上げた。トランプ大統領はFRBに強く利下げを求めていて、政策金利を1.0%まで下げるべきだと述べているが、次のFRB議長が政府の言いなりに利下げを続けることになれば、米国に1970年代のインフレ2桁時代が再来するおそれがある。またFRBの金融政策の独立性への懸念がドルの信認低下につながり、中期的なドル安を引き起こす可能性もある。


ドル売り再開。ドル/円2日続落、一時142円台
出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成

 2025年130営業日目は144.01円からスタート。東京時間朝につけた144.06円がこの日の高値。
広範なドル売りのなかで、ドル/円の上値は重い。高値は6月23日の148.03円をピークに、この日まで6営業日連続で切り下がっている。

144円台はすでに短期的な売りゾーンになっている様子。


 東京時間夜遅くには143円台を下に抜けて142.68円まで下落した。142円台での取引は6月13日以来。ただその後は143円台前半まで買い戻された。


 この日発表された日銀短観では、大企業・製造業の景況感に小幅改善が見られ、意外にもトランプ関税の影響は少なかった。経済見通しが安定している時にあえて政策変更はしたくないというのが日銀の考えなのか、植田日銀総裁は追加利上げに非常に慎重な姿勢を示している。これもマーケットが円を積極的に買わない理由のひとつだ。


レジスタンス:
145.95円    06/25
145.26円    06/26
144.95円    06/27
144.76円    06/30
144.06円    07/01


サポート:
142.68円    07/01
142.52円    06/05
142.37円    06/03
142.11円    05/27
141.97円    04/29


2025年 主要指標 終値

ドル売り再開。ドル/円2日続落、一時142円台
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今日の為替ウォーキング How Long

今日の一言

ストレス発散のポイントは、爆発するまでため込まないで、早めにうっぷんを晴らすこと


How Long

 今週は米国の6月雇用統計が発表される。4日金曜日はアメリカの独立記念日なので、発表日は1日前倒しされて3日になる。


 市場予想では、6月の失業率は1ポイント上昇して、非農業部門雇用者(NFP)は、前月より減って11.0万人の増加予想となっている。もっとも、「前月より減る」という言い方が果たして正確なのかわからない。雇用統計の過去データは常に修正されるので、もし大幅に下方修正されて11.0万人以下になっていれば、「前月より増える」が正しくなる。そもそも今月の数字も来月には大幅修正されるだろうから、やはり「前月より減る」だったということになるかもしれない。

 


 6月の米国雇用統計の予想についてはあわせてこちらもご覧ください。
6月雇用統計の注目ポイント 雇用統計三つのシナリオ予測。「米利下げで円高」リスクもあり?


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 従って雇用統計は、単月の数値の変化よりも、トレンドの変化が及ぼすマクロ的な影響を見ることがより重要である。


 例えば、失業率が過去最低水準にあるということは、仕事を失う心配が少ないから、貯金するより買い物をしたり旅行をしたりする人が増えるということだ。消費の拡大は、米国経済を支える重要な要素である。


 実質賃金の伸びが緩やかであり、名目賃金の伸びが鈍化している状況は、米国経済がデフレやハードランディングを回避し、緩やかなインフレのもとでソフトランディングする可能性が高いことを示唆している。


 マーケットが注目しているのは、トランプ大統領の政策が、米国の雇用市場に、今後どのような影響を及ぼすかということである。しかし、雇用統計は「遅行指標」だ。採用の凍結や解雇が公表データの雇用者数に反映される頃には、すでに経済は大きく変化している。データ重視主義の米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の変更に遅れてしまい、経済が悪化してしまうリスクがある。


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今週の注目経済指標

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(荒地 潤)

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