世界では紛争や戦争が途切れることがありません。こうした不安定な時代だからこそ、個人投資家は自分の投資資金がどう用いられているのか、今一度考えてみませんか。
世界では紛争や戦争が続いている
世界の歴史は、紛争や戦争の繰り返しです。第2次世界大戦以降、複数の国家が同時に争う世界的な戦争はなくなったものの、地域的な紛争や戦争は繰り返し続いています。
この数年はその傾向が著しく、ロシアとウクライナ間、イスラエルとガザ地区、そしてイスラエルとイランとの間で紛争があり、これは戦争と呼んでもおかしくない状態となっています。特にイスラエル・イラン間の武力衝突については、米国も加わったことで世界の不安定さが一層増しているように思えます。
こうした時期は株価も為替も急変動をします。不安が高まれば、株価が下がり円高に振れ、不安が後退すれば、株価が回復し円安に戻ったりします。数日の変動幅が、平時の数カ月から半年くらいの変動幅を超えるようなこともあり、投資家においては悩ましい時期となります。
また同時に、自身の投資が、紛争や戦争に加担しているのではないかという懸念が生じることもあります。ほとんどの人は戦争に協力をしたいとは考えませんし、戦争でもうけたいとも考えないでしょう。
個人投資家として、「なんとなく」という状態から脱却するために、こうした紛争、戦争の状態をどう考えていくべきなのでしょうか。
基本的に下落しても投資で手を引かないことが望ましい
基本的なスタンスとしては、短期的な急落があっても値下がり時に投資から焦って手を引かないことです。紛争はいつかはひとつの終わりを迎えます。時間がかかることもありますが、一時的な不安定さが招いた株価の下落は回復に転じます。
「早めに売り抜けておこう」や「下げ相場が終わりに向かったところで買いに転じよう」と考えるのも投資スタイルのひとつではありますが、長期的なスタンスで投資を考えている人、特にNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で売買頻度を抑えた投資でいきたい人は無理に売買をする必要はありません。
一時的な世界の不安定さにおびえて、あなたが損失を被るのはもったいないことです。投資資金の使途が直前に迫っているのでなければ、持ち続けることをおすすめします。
「戦争でもうけるのか」という感情とどう向き合うか
一方で、難しいテーマとして「自分の投資は紛争に加担していないだろうか」「紛争から利益を得てはいないだろうか」というものがあります。
個別企業に投資をする場合、それは銘柄選択の一要素ともなります。これからの銘柄選択においては、その点を考慮に加えるのも良いでしょう。
難しいのは、インデックス運用では個別企業の投資回避が難しいことです。例えばS&P500種指数のように、インデックス採用企業の一部に軍需産業に関わる企業が含まれていることがあります。
また、直接的ではないものの、IT系企業や部品・素材を提供する企業なども、紛争によって利益を得る可能性があり、その点をどう評価するかも難しい問題です。
過去をさかのぼると、日本の高度経済成長の一因として、朝鮮戦争が無視できないほどの役割を果たしたとされます。他国の紛争は経済成長の力となる要素もあります。これまた複雑で、投資判断として難しいところです。
とはいえ、大多数の投資先の企業や国は、軍事的な圧力や破壊に賛同しているわけでも、投資資金が戦争のために用いられているわけでもありません。
一部のESG投資、サステナブル投資、SRI投資などを掲げるテーマ型投資信託は、軍需産業、タバコ・ギャンブルなどに深く関わる企業を投資対象から除外することがあります。
「インデックス対象銘柄に含まれたらその全てを保有する」というスタンスで投資を行う場合、ごく一部にそうした企業が含まれることは受け入れ、その上で、いくらかは寄付するなど、あなた自身の中でバランスを取ることをおすすめします。
投資のあり方について考えること、疑問を持ち続けることは大切
投資と紛争・戦争との関係を考えたとき「紛争でもうける」というアプローチもありえます。それもまた投資のスタイルのひとつでしょう。
今回はそれ以外で、中長期投資を行う個人投資家がどう考えるべきかを少しまとめてみました。あえて難しい話題を取り上げていますが、この問題に完全な解決策は存在しません。
一方で、投資家がまったく無関心でいいのかというと、そうでもないでしょう。例えば、数十年前は「企業年金や公的年金が他社の株主になったとしても、議決権行使にはノータッチでいるべき」というようなスタンスが一般的でしたが、今では議決権行使について機関投資家全体として考えるようになりました。投資家は投資資金のあり方を考えていく必要があります。
国際分散投資といっても、ウクライナ紛争がスタートした以降、多くの投資信託がロシアを投資対象から除外しています(もともと多くはなかったが、インデックスそのものが対象から除外した影響を受けている)。これも社会変化が投資に及ぼした影響のひとつです。
私たちは世界ができるだけ平和であることを祈っています。
(山崎 俊輔)