ファンダメンタル分析を行い、今後も好調な業績が見込まれる銘柄を選んで投資したにもかかわらず株価が下がってしまう…。こんなときは、業績だけでなくその「変化率」にも注目してみよう。
長い目で見れば株価は業績に連動するが…
皆さんは普段、どのような基準で投資する銘柄を選んでいますか? 株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)、配当利回りなどの指標を使って、できるだけ割安な銘柄を探している方も多いかもしれません。
ただ、長い目で見れば、やはり株価は業績に連動します。業績を言い換えれば「企業価値」です。企業価値をさらに言い換えれば将来その会社が得られるであろうキャッシュ・フローの現在価値です。
そんなに難しいことを考えなくても、業績が伸びている銘柄の過去の株価の推移を見ると、その多くは株価が右肩上がりに上昇していることが多いことが分かります。ですから、どのように銘柄を選べばよいか分からない、という方は、まず業績が伸びている銘柄を探すのが第一歩です。
業績は伸びる予想なのに株価が上がらないこともよくある
ところが、業績が年々伸びていて、今後も伸びる予想となっている銘柄を見つけて投資したにもかかわらず、株価が上がらないどころか下がってしまう…ということがあります。
このとき、「いやいや、業績は今後も伸びる予想なのだから、株価が下がるのはおかしい」と我慢して持ち続けてしまった結果、株価がさらに下がってしまったり、下がらないまでも全然上がらなかったり…という状況になることがよくあるのです。
ここでぜひ考えていただきたいのが、「株価が上がらないのはおかしい」と思うのではなく、「株価が上がらない何かしらの理由がある」と考えるべきだ、ということなのです。
なぜなら、好業績にもかかわらず株価が下がるというのは、誰かがその株を売っているわけで、そこには何かしらの理由があるはずだからです。
よくあるケースとしては、会社側が出している業績予想に比べて、実際はそこまでの業績の伸びは難しいだろう、とプロ投資家が考えている場合です。ただ、今回のコラムでお伝えしたいのは、業績予想に近い業績が実際にも達成されるという前提で、それでも株価が下がってしまうというケースについてです。
業績が伸びているのに、なぜ株価は上がらないのか?
筆者が長年株式投資を行ってきて、業績が伸びているのに株価が上昇しない理由の一つとしてよく感じるのが、「増収増益の変化率が鈍化している」という点です。
例えば、次のような業績推移をたどっている銘柄を例に考えてみます。

売上高 当期純利益 2022年3月期 100,000 10,000 2023年3月期 120,000 12,000 2024年3月期 260,000 50,000 2025年3月期 290,000 60,000 2026年3月期(予) 330,000 65,000
このようなケースでは、2023年に株価が大きく上昇(1年で5倍とか10倍という可能性も)しますが、それ以降は株価の上昇が鈍化するか、ピークアウトして値下がりに転じたり、横ばいが長期間続いたりします。
2023年3月期から2024年3月期の業績の変化率が極めて大きいので、株価は短期間に大きく上昇します。この好業績がしばらく続くもの、と株価が織り込んでいくことが多いため、行き過ぎた上昇になることが多々あるのです。
しかし、2025年3月期以降の業績も伸びているものの、2024年3月期ほどではないことが判明した時点で、株価上昇のスピードが鈍化します。それまでの株価上昇が行き過ぎていた場合は、株価の水準訂正が生じ、大きめの下落になることもあるのです。
個人投資家として注意すべき点とは
では、個人投資家として、どのように対処すればよいのでしょうか?
まず、「業績が年々伸びているからといって、無条件に株価が上がり続けるわけではない」ことを頭に入れておくようにしてください。
そして、増収増益が続いているものの、過年度の増収増益率が極めて大きく、現在はそれに比べれば増収増益率がかなり小さくなっている場合は、株価はピークアウトして下落したり、横ばいに転じたりすることが多くなる点も、知っておきましょう。
株価のピークは、利益の額のピークにつけるのではなく、増益率のピークにつけることが多いです。増収増益の銘柄を探して投資することには、筆者ももちろん賛成ですが、それ以外にも注意する点があるということを理解し、増収増益が続いていても株価が下落を続けている場合には安易に手を出さないことをお勧めします。
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(足立 武志)