日経平均株価は先週末、一時4万0,852円まで上昇しましたが、参議院選挙の結果などを見極めたいとするムードも強まり、いったん上げ一服となりそうな状況です。「夏枯れ相場」入りとなった場合の物色の矛先は、どこに向かうでしょうか? 8月に配当金や優待の権利が確定する銘柄に注目してみます。


夏枯れ相場、8月権利確定(配当金・優待)銘柄に注目!イオン、...の画像はこちら >>

日経平均4万円台を回復。外国人投資家の動きは?

 日経平均株価は、外国人投資家によるポジション調整的な日本株買いが続いたことによって、4万円台を回復。 東京エレクトロン(8035) や アドバンテスト(6857) など値がさ半導体株の上昇がけん引役となり、6月30日には一時4万0,852円をつけるなど年初来高値を更新する強い展開が見られました。


 6月月間のプライム市場の平均売買代金は4兆2,000億円ほどですが、20日以降は4兆9,000億円と大幅に増加しました。3万8,000円水準が上値抵抗として意識されていたことで出来高は低迷していましたが、ついに出来高を伴い、この水準を更新したことで勢いがつき日経平均は4万円台を回復しました。


 この上昇の背景には、オプション取引と先物取引が大きな影響をしていたとみられます。


 4万円や4万1,000円まで上がらないと想定し、コールオプション(買っていれば指数が上昇した際に利益が出るが、売っていれば上昇した際に損失が出る権利)を売っていた投資家が、想定外の上昇に伴い、その損失を限定するため、日経平均株価指数先物などを買う「デルタ・ヘッジ」といわれる動きが入ったとの観測です。


 ちょうど1年前の日経平均も6月後半から上昇基調を強め、1カ月弱で4,000円以上上昇し、7月11日、史上最高値まで一気に駆け上りました。この時は、信用取引で売りを入れていた投資家の損失確定の買い戻し(踏み上げ)が大幅高を演出しました。


 その後は、需給要因が剝落したことから、相場は一気に崩れ、7月30日には3万8,525円。そして、8月5日は歴史的な急落となり3万1,458円まで急落しました。


日経平均はいったん調整。
今後2カ月弱は「夏枯れ相場」入り

 今年も1年前と同じ轍(てつ)を踏むとは言いませんが、需給主導の相場は、需給要因が剥落した後はいったん下落する傾向が多いです。


 今後、7月20日には参議院選挙の投開票を控えていますし、8月にかけては機関投資家の多くが夏休み休暇に入ることで、日経平均の方向感は乏しくなるでしょう。いわゆる「夏枯れ相場」です。6月30日の取引時間中の高値4万0,852円をピークにいったんは2カ月弱の調整を迎えると考えます。


8月に配当金、優待の権利が確定する銘柄5選

 一方、S&P500種指数やナスダック総合指数が史上最高値を更新するなど米国株が強い動きを続けている限り、日本株が大きく崩れることはないでしょう。夏入り後の東京市場は、上げが目立っていた半導体株や防衛株、電線株などは上げ一服となるも、下値は限定的の相場展開を想定します。


 物色の矛先は、前回ご紹介したサマーストックや、8月の権利取り銘柄に向かい幕あいつなぎ的な相場展開となるでしょう。


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 今回は8月に配当金の権利が確定する銘柄を先んじてご紹介します。8月は8月決算企業だけではなく2月決算企業の中間配当の権利取りも含まれますので、小売など多くの銘柄が該当します。なお、今回ご紹介の5銘柄はいずれも8月27日(水)が権利取り最終日を迎えますが、8月権利取り銘柄の中には、20日前後に権利取り最終日を迎える銘柄もありますのでご注意ください。


銘柄名 証券コード 株価(円)
(7月8日終値) 特色 ビックカメラ 3048 1,705 インバウンド需要一服もAIパソコンが下支えに 良品計画 7453 7,238 堅調な業績がけん引役で上場来高値更新中 イオン 8267 4,555 イオン経済圏で長期投資家を取り込む U-NEXT HD 9418 2,270 積極的な株主還元策を打ち出せば次のステージへ 吉野家HD 9861 3,063 優待銘柄として根強い人気を誇る

ビックカメラ<3048>

 首都圏を中心に家電量販店「ビックカメラ」を展開し、子会社に郊外型の家電量販店の「コジマ」を保有しています。インバウンド需要の取り込み強化が奏功したほか、AI搭載パソコンなど高単価電子機器の売上増を受けて、上半期は好調に推移。足元の好業績を材料に、2025年8月期の業績予想を上方修正しました。


 インバウンド需要はそろそろ一巡を迎えそうですが、AIの発展に伴う高単価電子機器の売上増は今後も期待できると考えます。

株価は6月からじりじりと上昇し、2024年の高値1,800円水準に迫っています。この水準を上抜けると、いよいよ2018年の上場来高値1,942円がターゲットとなるでしょう。


良品計画<7453>

 高品質の小売チェーン店「無印良品」を展開しています。衣服や雑貨では機能性インナーや夏物衣服がけん引したほか、生活雑貨の売上も引き続き好調で、今年に入っての月次国内既存店売上は前年同月比で大幅なプラスが続いています。


 株価は上場来高値を更新しており、戻り待ちの売り圧力が気にならない需給面はポジティブです。さすがに高値圏で推移しているため利益確定売りは入りやすいですが、堅調な業績が下支えとなり右肩上がりの展開は続くと考えます。


イオン<8267>

 全国で総合スーパーの「イオン」を展開しているほか、コンビニの ミニストップ(9946) 、食品スーパーの ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(3222) 、金融事業の イオンフィナンシャルサービス(8570) 、100円ショップの キャンドゥ(2698) など多くの上場企業を保有しています。


 東京証券取引所による「親子上場に関する考え方・今後の方針」を受けて、今後、子会社をTOBするなど構造改革を実行する可能性もあります。


 イオンを頻繁に利用するユーザーには、優待狙いで同社株を保有している人が多く、イオン経済圏の拡大が同社の基盤と言えます。2026年2月期の業績は過去最高が見込まれており、6月に株価は上場来高値を更新しました。今後、賃金上昇などを材料に個人消費の回復が明確となった場合は同社の追い風となるでしょう。


U-NEXT HD<9418>

 音楽・映像配信サービスを展開するほか、店舗・施設向けサービスも行っており、旧名称はUSEN-NEXT HOLDINGSです。経営資源でもある音楽・映像コンテンツをベースに2025年8月期の売上高予想は増収、各利益も増益を見込んでいます。株価も上場来高値を更新しており強い動きが続いています。


 なお、現時点での予想配当利回りは1%に満たない状況ですので、今後、積極的な株主還元策を打ち出すなど路線転換を発表した場合、新たな投資家が参加することで次のステージに入るかもしれません。


吉野家HD<9861>

 牛丼チェーン店「吉野家」と、セルフ式讃岐うどんチェーン店「はなまるうどん」を展開しており、優待銘柄としても人気です。米や牛肉の価格や人件費などの上昇の影響が業績の重しとなっていましたが、4月10日に吉野家の牛丼大盛などの価格を引き上げたことで改善。2026年2月期は増収・営業利益の増益を見込んでいます。


 優待狙いの長期保有投資家が多いことなどから、株価はさほど大きく上下しません。株価が2~3倍になる展開は期待できないかもしれませんが、2023年の上場来高値3,585円を意識した展開は期待したいところです。


(田代 昌之)

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