フリマアプリの「メルカリ」は、FinTechやスポットワークへと経済圏を拡大し、新たな成長局面を迎えている。Marketplace事業の持続的成長、FinTech事業の債権残高拡大、US事業の黒字化、そして新事業「メルカリ ハロ」の成長という四つの理由から、メルカリを「買い」と判断。

テクノロジーとシナジー効果で、さらなる成長に注目する。


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メルカリを「買い」と判断する四つの理由

 フリマアプリの大手として、日本で確固たる地位を築いている「メルカリ」(4385)は、現在はFinTechからスポットワークまで、その経済圏を拡大しています。新たな成長分野への投資やテクノロジーを活用し、各事業でシナジー効果を発揮することで成長すると考え、メルカリを「買い」と判断します。その主な理由は以下の四つです。


[1]持続的な成長を支えるMarketplace事業
[2]FinTech事業の債権残高拡大
[3]課題だったUS事業の黒字化達成
[4]スポットワーク「メルカリ ハロ」という新たな成長分野


●銘柄情報を見る: 「メルカリ」(4385)

メルカリの沿革

 メルカリは、2013年のサービス開始以来、日本国内フリマアプリ市場において圧倒的なシェアを保持してきました。アクティブユーザーは年々増加していきましたが、株価は2018年の上場後、現在は提供を終了したさまざまなサービスも展開したものの、2019年までは軟調に推移していました。


 2019年にはスマホ決済サービス「メルペイ」を開始。株価は2021年11月に上場来最高値を付けて以降、低迷しています。


 スマートフォン普及とともにCtoC取引が一般化した日本社会において、メルカリは生活に浸透しており、2022年11月にメルカリ独自のAI与信を活用した「メルカード」、2024年3月には空き時間に働ける「メルカリ ハロ」を提供開始して経済圏を拡大しています。


メルカリの上場来株価推移
メルカリを「買い」と判断する四つの理由、成長するモノ・カネ・ヒトのマーケット(茂木春輝)
出所:Market speedIIより楽天証券経済研究所が作成(2025年7月18日時点)

[1]持続的な成長を支えるMarketplace事業

 メルカリの主な収益モデルは、取引手数料収入です。取引の活性化に伴い、取引高(GMV)も右肩上がりで推移。月間アクティブユーザー(MAU)は現在2,200万人超で安定した売上収益を生み出しています。そこから不用品を売った売上金で支払える決済サービス「メルペイ」やポイントプログラムを通じてエコシステムを拡大しています。


Marketplace事業のGMVとMAUの推移
メルカリを「買い」と判断する四つの理由、成長するモノ・カネ・ヒトのマーケット(茂木春輝)
出所:メルカリ決算資料より楽天証券経済研究所が作成

[2]FinTech事業の債権残高拡大

 前述のMarketplaceとのシナジー効果を受け、FinTech事業である「メルペイ」が躍進を続けています。ユーザーが売上金を直接決済に利用できる利便性や加盟店数の増加により、キャッシュレス決済市場においてもプレゼンスを強めています。


 さらに、クレジットカード「メルカード」、少額融資の「メルペイスマートマネー」、分割で払える「定額払い」などにより債権残高を拡大しており、2025年3Q時点で通期目標を達成する成長をしています。

回収率については2024年下期に実施した一部の与信枠変更に伴い直近で低下していますが、影響は限定的と考えています。


債権残高とCreditサービス債権の11カ月回収率
メルカリを「買い」と判断する四つの理由、成長するモノ・カネ・ヒトのマーケット(茂木春輝)
出所:メルカリ決算資料より楽天証券経済研究所が作成

[3]課題だったUS事業は黒字化達成

 苦戦していたUS市場では、調整後コア営業利益で13億円となり、黒字化を達成しました。US市場は依然として成長余地が大きく、国内で培ったノウハウや技術力は今後もUS市場での強みになると考えています。


 還付金の一時要因もありましたが、マーケティング費用の効率化や新手数料モデルが効果的に利益を改善しているため、継続的な成長へとつながると考えます。


セクター別調整後コア営業利益
メルカリを「買い」と判断する四つの理由、成長するモノ・カネ・ヒトのマーケット(茂木春輝)
出所:メルカリ決算資料より楽天証券経済研究所が作成

[4]スポットワーク「メルカリ ハロ」という新たな成長分野

 隙間時間に働けるという「メルカリ ハロ」は、サービス開始から1年以上が経過し、利用店舗・利用者ともに拡大しています。


 サービス開始当初は、求人検索がシンプルな一方、詳細な条件での検索に課題がありましたが、求人表示を現在地から近い順や新着順、おすすめ順に並び替えられる機能、さらに検索画面では除外キーワードを設定できる機能が追加されました。


 サービス改善と順調な成長を背景に、2025年4月からは加盟店手数料の無料キャンペーンを終了し、利用店舗からの手数料徴収を開始しています。今後、長期的な収益源として寄与すると考えています。


まとめ

 前述の4点のようにメルカリは新たな成長分野への投資やテクノロジーの活用を続けており、AIによるユーザー補助機能やマッチング効率向上によって、「必要とするモノ・コトを探しやすい」「すぐにマッチできる」マーケットとして各事業でシナジー効果を働かせています。よって成長を期待できると考えて「買い」と判断します。


(茂木 春輝)

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